2012 Fiscal Year Annual Research Report
老化と病態によるリンパ器官の撹乱と免疫応答性の変容
Project Area | Analysis and synthesis of multi-dimensional immune organ network |
Project/Area Number |
24111008
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
湊 長博 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (40137716)
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Project Period (FY) |
2012-06-28 – 2017-03-31
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Keywords | 免疫老化 / 細胞老化 / T細胞老化 / 濾胞T細胞 / 全身性エリテマトーデス / 慢性炎症 / 糖尿病 |
Research Abstract |
本研究は加齢に伴う免疫系恒常性と応答性の変容を、免疫系機能の中枢にあるT細胞系に焦点を当てて解析し、免疫老化が個体の恒常性維持と病態発生に与える影響を明らかにすることを目的とする。 本年度は、私達は発見報告した加齢に伴い発生し増加するユニークなT細胞集団 (Senescence-associated T cells, SA-T)について、その発生機構・細胞学的特性と機能について解析を進めた。SA-T細胞は老齢マウス二次リンパ組織の濾胞(B細胞)領域とくに自発性胚中心に局在する濾胞性T細胞であり、その加齢依存性増加はB細胞の存在に依存した。細胞学的にSA-T細胞は、増殖性の著明な低下、特徴的な遺伝子発現変化(ガン抑制遺伝子発現亢進、Senescence-associated secretory phenotype; SASP関連の多彩な遺伝子発現)、アポトーシス抵抗性など、細胞老化(Cellular senescence)に特徴的な性質を示した。機能的には、抗原特異的応答の低下とオステオポンチンに代表される炎症性サイトカインの過剰産生を示すことが明らかになった。 代表的な全身性自己免疫病であるループス(Systemic lupus erythematodes, SLE)では強い自発性濾胞胚中心反応が認められ、SLE発症の重要な要因であることがわかっている。同反応にかかわるT細胞は、外来抗原特異的濾胞T細胞とは異なり、自己B細胞反応生のSA-T細胞に外ならないことが明らかになった。また共同研究により、SA-T細胞は加齢に伴う内臓脂肪組織炎症とインスリン抵抗性を誘導し、II型糖尿病の発症に関与することも示された。 これらの結果は、T細胞老化に伴う機能変容が個体老化に関連する全身恒常性維持破綻の重要な背景要因となっていることを強く示唆するものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
免疫老化に起因すると想定されている主要な素因は、獲得免疫機能の低下、炎症性素因の増大、自己免疫リスクの増加であり、本研究の目的はこれらのメカニズムを解明してその制御に資することにある。 本年度の研究では、まず私達が同定報告したSA-T細胞が、細胞増殖性の喪失、SASPに代表される特徴的な遺伝子発現の変化、アポトーシス抵抗性という、細胞老化の特性を全て示し、典型的な「老化」T細胞であることが明らかになった。これは、細胞レベルでの老化特性を示す免疫系細胞の初めての例である。さらにSA-T細胞は、自己濾胞B細胞に反応または依存して発生する濾胞性T細胞であり、通常の外来抗原免疫に伴って生成する濾胞性T細胞とは全く異なった性状を有する新しいタイプの濾胞性T細胞であることが示された。これらの結果は、すでに報告されている結果と異なり、自発性の濾胞胚中心反応は外来抗原免疫に伴う古典的胚中心反応と全く異なる濾胞性T細胞の関与によることを強く示唆している。 さらに自然発症ループスモデルマウスや加齢マウスの病態代謝解析から、全身性自己免疫病や加齢・高カロリー食にともなう糖尿病の発症において、SA-T細胞の増加が重要な役割を果たすことが強く示唆された。これらの病態発生にはSA-T細胞が過剰に産生する炎症性サイトカインやケモカインが関与していることが示唆されており、病態制御のための重要な標的となりうる。 全体として本年度は、冒頭に述べたT細胞老化の加齢関連事象、とくに自己免疫病と慢性炎症性代謝疾患への関与を明らかにするという目的に向けて、十分な成果を達成し得たものと考える。これらの結果については、逐次公表の準備も順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの成果を受けて、今後主に以下の3点に研究の焦点をおいて推進する予定である。 1.SA-T細胞の発生増加のメカニズム;個体老化に伴う最も劇的な変化は早期の胸腺退縮とT細胞生成の減少・消失であり、その後のT細胞集団の維持は末梢T細胞の恒常性増殖によって担保される。従って、加齢に伴うSA-T細胞の発生増加はT細胞の恒常性増殖に起因すると考えるのが妥当である。これを直接検証する目的で、人為的なT細胞減少状態(若齢マウスの胸腺摘出、遺伝的T細胞欠失モデル、放射線照射)におけるSA-T細胞の発生を解析する。すでに予備的結果として胸腺摘出後早期にSA-T細胞が発生することが確認されているので、これが恒常性増殖に起因することを、BrdU標識などの手法により検証を進める。 2.T細胞老化の分子機構;T細胞の抗原によるクローン増殖と多クローン性の恒常性増殖におけるT細胞受容体のシグナル経路を比較検討し、後者において細胞老化が選択的に亢進する分子機構を明らかにする。とくに、老化T細胞ではいくつかのmicroRNAが顕著に発現低下する所見がえられているので、これらの標的遺伝子を同定し、細胞老化関連遺伝子(Cdkn2b, Cebpbなど)との関係を明らかにする。 3.SA-T細胞による病態発生のメカニズム;SA-T細胞の自己B細胞あるいは脂肪細胞による活性化の機構を解析し、自己反応性B細胞の活性化あるいは脂肪織炎誘導をもたらすエフェクター分子を同定する。 これらは、T細胞老化が個体全体の恒常性維持に与える効果の解明と老化関連病態の制御に向けて必須の課題であり、平成26〜27年度内での解明をめざして研究を推進する。
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Research Products
(31 results)
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[Journal Article] Nuclear SIPA1 activates integrin β1 promoter and promotes invasion of breast cancer cells.2015
Author(s)
Zhang, Y, Gong, Y, Hu, D, Zhu, P, Wang, N, Zhang, Q, Wang, M, Aldeewan, A, Xia, H, Qu, X, Ring, B.Z, Minato, N, and Su, L.
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Journal Title
Oncogene
Volume: 34
Pages: 1451-1462
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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[Journal Article] E2A and CBP/p300 act in synergy to promote chromatin accessibility of the immunoglobulin κ locus.2012
Author(s)
Sakamoto S, Wakae K, Anzai Y, Murai K, Tamaki N, Miyazaki M, Miyazaki K, Romanow WJ, Ikawa T, Kitamura D, Yanagihara I, Minato N, Murre C, Agata Y.
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Journal Title
J Immunol.
Volume: 188(11):
Pages: 5547-60.
DOI
Peer Reviewed
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