2012 Fiscal Year Annual Research Report
Transformation of the relationship between synaptic supramolecular assemblies and synaptic function in mental disorder
Project Area | Unraveling micro-endophenotypes of psychiatric disorders at the molecular, cellular and circuit levels. |
Project/Area Number |
24116004
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
廣瀬 謙造 東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (00292730)
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Project Period (FY) |
2012-06-28 – 2017-03-31
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Keywords | 統合失調症 / シナプス / 超分子構造 / 超解像イメージング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、シナプス分子のナノレベルでの空間配置(超分子構造)とシナプス機能の関連を調べ、精神疾患においてどのような変容があるのかを解明することを目的としており、本年度には必要となる超解像イメージングシステムの構築を行った。超解像イメージング法として、一分子蛍光の明滅画像を取得するSTORM法と励起範囲自体を光学的に限局させるSTED法の両方の技術を利用する計画であった。STED法を採用した方法については、支援班において導入したハードウェアをベースとしてシナプスでの超分子構造の測定に特化したシステムを構築する計画であったが、本年度においては、non-descanned検出光学系、無収差走査光学系の開発を行い、脳スライス標本や生きたマウスにおける脳でシナプス分子の超解像イメージングを行う環境の整備を行った。STORM法については、光学設計、実装を完了し、超解像イメージングを行うハードウェアを完成させた。また、画像データから分子の存在位置を推定するアルゴリズムとして最尤推定を採用し、GPGPU上に実装することで高速に超解像像を得ることに成功した。また、抗体の蛍光ラベル条件・染色条件・溶液組成・レーザーの強度について至適化し、培養海馬神経細胞のシナプスにおいてMunc13-1、Bassoon、syntaxin1、AMPA受容体などの分子について超解像イメージングを行い、これら分子の詳細な空間配置パターンを明らかにした。さらに、グルタミン酸イメージングを併用することで、特定分子の空間配置パターンがシナプス機能に密接に関連することを見出した。これらの知見は、免疫電子顕微鏡法、電気生理学的方法など従来のアプローチでは明らかにされていなかった新知見であり、シナプスの根本的な動作原理に迫る点でも、精神疾患における変容を解析するための基盤となる点でも重要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的を実現するためには、超解像イメージングによってシナプス分子の超分子レベルでの局在を調べるという技術の成否が重要であるが、そのために必要な基礎的なシステムが初年度内の短期間に概ね完成している。さらに構築したシステムを用いて実際にシナプス分子の超解像イメージを高解像度で得ることに成功している。次年度以降に予定される詳細な解析を行うための見通しが立っている状態であり、研究は順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度に引き続き、次年度もシナプスの超分子構造の可視化技術の開発を進める。特に超分子構造の特徴をより客観的に抽出するには、分子の局在化パターンを統計的に定量評価することが必要であり、RipleyのK 関数法、Pair correlation解析法に基づく分子の空間分布パターン解析を利用したシナプス分子の空間分布評価系を完成させることを目指す。また、異なった種類の分子の空間分布の解析も可能にするため、マルチカラーでの組み合わせが可能な蛍光色素の検索を行うとともに、必要な光学系の最適化を図る。STEDをベースとした超解像法については、生きた細胞、組織で評価可能なようにGFP/YFP融合タンパク質の利用ができるよう光学システムをチューンアップする。以上のようにシナプスの超分子構造の可視化技術を完成させ、正常マウスにおけるシナプス超分子構造の特徴を抽出し、疾患モデル動物評価に必要な評価基準を完成させる。一方、統合失調症モデル動物の評価として、DISC1のin vivoノックダウン系等を利用したマウスの作出を行い、シナプスの超分子構造の変容の検索を開始する。さらに、シナプス機能評価法として、プレシナプス機能についてはグルタミン酸イメージング技術を、ポストシナプス機能についてはグルタミン酸受容体の細胞内ダイナミクスのイメージング技術を採用し、シナプスの機能部位毎に切り分けた解析を実現する。次々年度以降、これらの基盤技術やノウハウを軸に解析対象とする疾患モデルを広げるとともに、ヒト死後脳での所見との対応についての研究へと深めてゆく。
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