2012 Fiscal Year Annual Research Report
Cytokine-Induced Neuropathologic Endophenotypes of Psychiatric Diseases
Project Area | Unraveling micro-endophenotypes of psychiatric disorders at the molecular, cellular and circuit levels. |
Project/Area Number |
24116010
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
那波 宏之 新潟大学, 脳研究所, 教授 (50183083)
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Project Period (FY) |
2012-06-28 – 2017-03-31
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Keywords | サイトカイン / 統合失調症 / モデル動物 / 上皮成長因子 / 精神疾患 / 認知行動異常 / 依存薬物 / 中脳ドパミン神経 |
Outline of Annual Research Achievements |
サイトカインは、精神病態をヒトで惹起し、動物では認知行動異常を誘発する活性を有する分子であるが、その細胞・分子レベルでの脳内機能はほとんど分かっていない。このようにサイトカインと精神疾患は、密接に関連しているが、回路、細胞レベルでのサイトカインによるマイクロエンドフェノタイプには、不明の部分が多く、この現象を解明することは、精神疾患を理解する上で必須である。本研究では、モデル動物と患者サンプル(死後脳、血液)の両者を比較、対照することで、その本質に迫りたい。初年度においては、統合失調症モデル動物における中脳ドパミン神経のマイクロエンドフェノタイプに着目して、以下の研究を行った。 ①EGFトランスジェニックマウスの解析;本モデル動物は、PPIや社会行動、コカイン感受性に異常を呈し、統合失調症のモデル動物として活用できることが判明した。本マウスは脳内のドパミン含量が上昇を示し、合成酵素と代謝酵素の発現変化も観察された。 ②EGF投与ラット・マウスの解析;本統合失調症のモデルにおける中脳ドパミン神経活動を麻酔下のユニット記録で評価した。ラットではVTAのドパミン神経は有意な活動性の上昇を呈し、当該マウスでは、バースト性の上昇が見られた。中脳スライス標本では、モデル動物群で中脳ドパミン神経活動のNMDA感受性が亢進していた。前頭葉でのダイアリシスでは、恒常的なドパミン放出上昇とその社会刺激依存性の反応低下が見られた。 ③EGF阻害剤の効果;EGF受容体阻害剤を脳内投与して、中脳ドパミン神経活動への影響を評価した。EGF投与ラットで上昇していたドパミン神経の発火バースト性がEGF阻害剤で低下した。 上記の実験結果はEGFシグナルは中脳ドパミン神経のマイクロエンドフェノタイプを変換し、認知行動異常を誘発している可能性を示唆するものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
EGF投与モデル動物については、これまでの長年にわたる行動データの蓄積もあり、中脳ドパミン神経のマイクロエンドフェノタイプを、in vivoユニット記録、スライス解析、in vivoダイアリシスを実施するにあたり、大きな問題は無かった。しかし今後、遺伝子改変マウス等で同様の実験を実施する場合、動物の大きさが小さいことからの侵害性、十分数の動物の調達など、課題を抱えている。
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Strategy for Future Research Activity |
つねにヒトの精神疾患の解明を念頭におく必要性から、上記データと統合失調症患者の中脳ドパミン神経のマイクロエンドフェノタイプとの対比をなんだかの形で行いたい。取り敢えずは遺伝子とタンパクレベルでヒト・ドパミン神経の分子プロファイルを得ることを計画したい。本研究が、単なる「マウス精神病態学」にならないよう鋭意努力してゆきたい。、、
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Research Products
(5 results)