2015 Fiscal Year Annual Research Report
べん毛超分子モーターの運動エネルギー変換メカニズム
Project Area | Harmonized supramolecular machinery for motility and its diversity |
Project/Area Number |
24117004
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
本間 道夫 名古屋大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (50209342)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
南野 徹 大阪大学, 生命機能研究科, 准教授 (20402993)
加藤 貴之 大阪大学, 生命機能研究科, 助教 (20423155)
|
Project Period (FY) |
2012-06-28 – 2017-03-31
|
Keywords | 生体エネルギー変換 / べん毛 / モーター / 超好熱菌 / 運動 |
Outline of Annual Research Achievements |
Aquifex属は真性細菌の進化系統樹上、非常に初期の段階で分岐したと考えられている超好熱性のバクテリアである。85°Cでの運動能を観察したところ、約90μm/secという速い遊泳能を示した。この遊泳速度は温度を低下させると遅くなり、室温(23°C)では全く遊泳しなかった。よってA. aeolicusは熱に対して構造的・機能的に安定なべん毛を持ち、それを使って遊泳することが示された。驚くべきことに、A. aeolicusのMotA/Bを大腸菌motAB欠失株で発現させた時に、ナトリウム駆動型べん毛モーターとして機能した。A. aeolicusのMotAは、系統的に離れてはいるものの大腸菌のモーターと相互作用して回転力を生み出す能力があることから、両者が機能的な相関関係を維持していることが示された。A. aeolicusのMotAを大腸菌で発現・精製したところ、MotB非存在下であるにもかかわらず、ゲル濾過クロマトグラフィーにより、約210 kDaの分子量位置に溶出された。架橋剤をつかった実験から、2量体、3量体、4量体と推測されるバンドがSDS-PAGEによって検出された。単量体は約30kDaであることから多量体構造をとっていることが判明した。精製MotAを電子顕微鏡で観察し単粒子解析したところ、4量体と思われる構造を持つことが分かった。MotAはMotB非存在下でも4量体構造を形成すると推測された。好アルカリ菌由来の固定子MotPS複合体の精製にも成功した。そして、高速AFMによりMotPのペリプラズミクドメインが伸縮運動することを観察した。回転子であるMSリングの構造を電子顕微鏡により、7.4オングストローム分解能で解析することに成功した。さらに、べん毛モーター機能を調べ、その回転ステップ速度は予想以上に大きく揺らぐことを明らかにした。FliGのCWバイアス変異体では、FliGサブユニット間の相互作用形式が大きく変化するとともに、FliGのFliMに対する結合親和性が著しく低下することが判明した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
べん毛モーターは固定子と回転子という二つの部位から構成されている。回転力産生において重要な回転子構成タンパク質として、FliG, FliM, FliNが挙げられる。一方、固定子は、4回膜貫通型タンパク質MotAと1回膜貫通型タンパク質MotBから構成されており、MotA4MotB2ヘテロ6量体を形成し、固定子へのイオンの流入と共役して、MotAの細胞質側領域とFliGのC末端ドメインが相互作用し、回転力が発生すると考えられている。超好熱菌由来のMotAタンパク質を4量体として精製に成功したことから、構造解析に大きな進展が期待される。現在、モーター部分の構造のクライオトモグラフィーによる構造解析も行っている。多くの困難があったが、界面活性剤の変更により、モータータンパク質精製に大きな進展が見られた。さらに、界面活性剤が内状況での可溶化にナノディスクを用いて成功している。NMRを用いた測定が可能となると思われる。
|
Strategy for Future Research Activity |
最終年度で、A. aeolicusのMotAおよビブリオ菌由来のPomAB固定子複合体の構造を結晶化して、原子レベルで調べることを成功させたい。分解能は低いが、結晶が生成していることから、条件を検討すれば、高い分解能の結晶が得られると期待される。さらに、電子顕微鏡による単粒子解析を行っていることから、モーター機能を担うダイナミックな構造変化を捉えたい。NMRによる固定子タンパク質の構造情報を統合して、詳細な回転スピードや揺らぎの解析することにより、構造と機能とを結びつける研究に発展させたい。
|