2013 Fiscal Year Annual Research Report
ハイブリット型生物モーターのイオン選択透過分子機構の解明
Project Area | Harmonized supramolecular machinery for motility and its diversity |
Project/Area Number |
24117005
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
伊藤 政博 東洋大学, 生命科学部, 教授 (80297738)
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Project Period (FY) |
2012-06-28 – 2017-03-31
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Keywords | べん毛モーター / 好アルカリ性細菌 / イオンチャンネル / ハイブリッドモーター / 枯草菌 / 固定子 / プロトン駆動力 / ナトリウム駆動力 |
Research Abstract |
我々の研究グループにより外環境に応答してH+とNa+の二種類の共役イオンを使い分ける新奇なハイブリッド型べん毛モーターが好アルカリ性Bacillus属細菌から発見されて以来、この分野は新たな時代に入ったといえる。本研究は、伊藤がエネルギー変換ユニットであるべん毛モーター固定子タンパク質のイオン選択に関与すると推定される固定子複合体のアミノ酸残基を選定して、変異導入実験を行うことでイオン選択に重要な領域を同定することと、連携研究者の今田と協力し、Bacillus alcalophilusのNa+/K+駆動型べん毛モーター固定子MotPSのX線結晶構造解析を行うことでイオン選択透過分子機構の解明を目指す。平成25年度は、平成24年度に引き続き下記の2つのテーマについて研究を推進した。テーマ1では、Bacillus属べん毛モーター固定子のイオン選択透過に重要なアミノ酸残基の実験による同定と新規なべん毛固定子の探索を行った。イオン選択透過に重要なアミノ酸残基としてB. alcalophilus 由来のNa+/K+駆動型固定子サブユニットMotSの膜貫通領域に変異を導入することでイオン選択性が変化した。現在、この詳細を検討している。また、新規に2価カチオンを利用してべん毛を駆動させる菌体を自然界から分離した。この菌の固定子の塩基配列の同定に成功し、現在、遺伝子工学的手法が容易な枯草菌の系でこの固定子遺伝子の詳細な機能を検討している。テーマ2では、B. alcalophilusのNa+/K+駆動型固定子MotPSの大腸菌での大量発現系の確立を目的とした。結晶化対象としてMotSのN末を3段階に欠失させた変異体、運動性を示さないMotSの点変異体の3種で試みた。複数の高発現ベクターに目的遺伝子をクローニングし発現量の検討を行った。さらに膜画分を可溶化し、Hisカラムによる精製を試みている。また、部位特異的変異導入法によりMotSを段階的に欠失させてMotSの運動性に関与する最小機能領域を解析中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記の研究実績の概要に記したテーマ1に関しては、概ね順調と考えている。また、新規なべん毛モーターを有する菌株の分離及びその固定子遺伝子の同定、および遺伝子工学的手法の容易な枯草菌の系を用いた実験を行い、あと数か月で成果がまとまるところまで来ている。テーマ2に関しては、固定子タンパク質の大量精製系の確立および精製を鋭意行っている。膜タンパク質の結晶化は、なかなか困難が伴うが、この他に固定子MotPSの最少機能領域を同定したり、MotSの親水性領域を先に精製することなど膜タンパク質を結晶化するためにに考えられる手法はすべて同時進行で進めている。このことを考慮すればテーマ2に関しても研究は概ね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度も前年度に引き続き、下記の3つのテーマの研究を推進する。 Bacillus属細菌由来のべん毛固定子複合体Motタンパク質のイオン選択透過には、MotB型サブユニットの膜貫通領域が重要である。そこで、テーマ1では、共役イオン選択に関与すると推定されるアミノ酸残基に部位特異的変異を導入した変異体の解析を行う。また、新規な特徴のある固定子候補株を分離したのでこの固定子のイオン選択性の特性を解明する。 テーマ2では、B. alcalophilus 由来のハイブリッド型固定子遺伝子Ba-motPSが大腸菌のmotAB遺伝子欠損株の運動性欠損を相補した。そこで、この株を用いて測定条件を変えて、モーター一分子特性を高速度顕微鏡とビーズアッセイ法で計測する。また、Ba-motPS中に変異が入ってイオン選択性が変化した遺伝子を同様の方法で発現させ、それらのモーター特性も解析する。これにより異なる共役イオンとモータートルクの関係を解明する。 テーマ3では、B. alcalophilusのNa+/K+駆動型べん毛モーター固定子MotPSの大腸菌での大量発現系の確立を行う。現在、様々な高発現ベクターにBa-motPSをクローニングし、膜タンパク質の発現に適した大腸菌C43株を用いた大量発現系の検討している。現在までに、大量発現系の確立で良好な結果が得られていないが、年度の早い時期にこの問題を解決し、目的タンパク質の精製方法までを確立する。発現・精製の検討には、野生型だけでなく変異体についても検討し複合体を安定に形成し単分散となる試料を得る条件を探索する予定である。また、Ba-MotPSの最小機能領域を決定し、機能的な構造をもつ親水性領域をまず先に結晶化することも試みる。さらに、名古屋工業大学神取研究室の協力を得て精製MotPSにK+とNa+が結合することを全反射型赤外分光法により明らかにする。コントロールとして共役イオンにNa+を用いるBacillus pseudofirmusのMotPSを用いて解析を行う。
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Research Products
(17 results)