2013 Fiscal Year Annual Research Report
計算・情報科学による転写サイクルにおける情報変換機構の解明
Project Area | Integral understanding of the mechanism of transcription cycle through quantitative, high-resolution approaches |
Project/Area Number |
24118008
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
中村 春木 大阪大学, たんぱく質研究所, 教授 (80134485)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤井 聡 九州工業大学, 大学院情報工学研究科, 助教 (40452825)
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Project Period (FY) |
2012-06-28 – 2017-03-31
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Keywords | 遺伝子 / 分子動力学計算 / 転写因子 / 生体生命情報学 / 生物物理 / 生体分子 / 蛋白質 / ヌクレオソーム |
Outline of Annual Research Achievements |
新たなアルゴリズム(Zero-dipole summation法)が電荷に富むDNA二重鎖単体に対する分子動力学計算で有効であることを示すとともに、Ets1-DNA複合体、Ets1-Ets1-DNA複合体(3者複合体)、Ets1-Runx1-CBFβ-DNA複合体(4者複合体)の3種の複合体に対して、それぞれ80 ns程度の分子動力学計算を実施した。その結果、蛋白質とDNAそれぞれのダイナミクスを観測し、3者複合体の方が4者複合体よりもDNAの揺らぎが大きいことが見出され、また4者複合体においてはEts1とRunx1・CBFβの動きに負の相関があり、互いにDNAを挟み込む動きが観測された。一方、多数のGPUを並列化することにより、マイクロ秒程度の分子動力学計算を実現できる新規ソフトウェア開発を行った。さらに、拡張アンサンブル法であるマルチカノニカル分子動力学法(McMD)により、転写因子Ets1におけるETSドメイン上流のリン酸化が与える転写制御への影響を調べ、天然変性領域におけるSer282とSer285のリン酸化により、自由エネルギー地形の解析からそれらリン酸化セリンがDNA結合領域をマスクすることを突き止めた。情報解析では、DNA配列認識の分子機構の解析、巨核球の分化にかかわる転写因子のChIP-chip/遺伝子発現データの解析、遺伝子制御ネットワークの解析などを行った。一方、メチル化がDNA二重鎖の物性に与える影響を調べるため、mCG を真ん中に配置した10種類の4塩基対DNA(NmCGN, NはA,T,G,Cのいずれか)の構造及び揺らぎを分子動力学計算によって解析した。その結果、メチル化のあるなしで揺らぎはほとんど変化しなかったが、メチル化によってらせん軸に対する曲がりが大きくなることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度中に計画した分子動力学計算結果の新規な解析法(mDCC)の有効性を確立し論文として発表した。また、班員である緒方グループとの共同研究により転写因子Ets1を含む種々のエンハンソソームにの複合体に対する原子の動きのトラジェクトリから、mDCC法を用いて転写制御因子間のDNAを介した動的構造変化とEts1のアロステリックな制御のメカニズムが解析できた。さらに、Ets1のN末部位のリン酸化がDNAとの相互作用に与える影響について、リン酸化された構造の拡張アンサンブル法による計算を行い、常温において自由エネルギー的に安定な構造アンサンブルを得ることができた。 一方、情報科学的なアプローチでは、他のウェットの班員から産出されたゲノムワイドな実験データに対して、新たな解析方法を開発している。現在までに、shRNA-Seqスクリーニングに関しての解析法を開発し、現在最終的な検証を行っている段階である。また、転写サイクルにおける転写開始、転写伸長のシグナルとなるヒストン修飾や、転写装置であるRNA PolymeraseIIのChIP-Seqデータを解析し、局在状態と遺伝子発現量の相関を解析する方法を検討している。現状は、局在状態を遺伝子毎にまとめるという解析の基盤となる開発・検討がほぼ確立できており、解析対象・解析目的の違いよる解析のカスタマイズを行い、局在状態と遺伝子発現量の相関解析も様々検討している段階である。
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Strategy for Future Research Activity |
転写因子Ets1の制御エレメント認識機構に関する検討を引き続き行う。特に、Ets1のN末部位のリン酸化された構造の拡張アンサンブル法による計算結果を基に、リン酸化によるDNAとの相互作用の変化を通した転写制御のメカニズムの詳細をまとめる。また、愛媛大学平田章博士との共同研究によるアーキアRNAポリメラーゼ11量体形成機構を検討するため、D/L二量体状態と11量体状態のシミュレーション結果を比較することで、D/L二量体の役割を明らかにする。一方、情報解析からのアプローチとしては、引き続きゲノムワイドにおける転写関連因子の局在状態の解析、それらと遺伝子発現量の相関の解析に関する解析手法の検討を行っていく。ウェットのグループからも更なるデータを提供頂いているので、それらも合わせて複数の局在状態を統合的に解析し、協同的な転写制御を解析する手法を開発していく。問題点は特に無い。
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[Presentation] Transcriptome Analysis of Red Seabream (Pagrus major) Embryos Treated with 2,3,7,8-Tetrachlorodibenzo-p-Dioxin (TCDD)2014
Author(s)
M. Iida, S. Fujii, M. Uchida, H. Nakamura, Y. Kagami, S.M. Bak, E.Y. Kim, Y. Shima, H. Iwata
Organizer
Society of Toxicology
Place of Presentation
Phoenix Convention Center, Arizona, USA
Year and Date
2014-03-23 – 2014-03-27
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[Presentation] Gene Expression Changes Exposed to 2,3,7,8-Tetrachlorodibenzo-p-dioxin (TCDD) in Early Developmental Stage Embryos of Red Seabream (Pagrus major)2013
Author(s)
M. Iida, Y. Murakami, Y. Shima, H. Nakamura, Y. Kagami, S. Fujii, A. Srai, H. Iwata
Organizer
転写サイクル合同班会議
Place of Presentation
ホテルおかだ(箱根湯本温泉)
Year and Date
2013-08-05 – 2013-08-07
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