2012 Fiscal Year Annual Research Report
New Ocean Provinces from the Geography of Biogenic Elements
Project Area | New Ocean Paradigm on Its Biogeochemistry, Ecosystem and Sustainable Use |
Project/Area Number |
24121003
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Research Institution | Fisheries Research Agency |
Principal Investigator |
齊藤 宏明 独立行政法人水産総合研究センター, 東北区水産研究所, グループ長 (30371793)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山下 洋平 北海道大学, 地球環境科学研究科(研究院), 准教授 (50432224)
石井 雅男 気象庁気象研究所, 地球化学研究部, 室長 (70354553)
橋濱 史典 東京海洋大学, 海洋科学技術研究科, 助教 (80535807)
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Project Period (FY) |
2012-06-28 – 2017-03-31
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Keywords | 生元素 / 生物地球化学 / 海洋生態系 / 太平洋 / 地理学 / 窒素 / リン / 炭酸系 |
Outline of Annual Research Achievements |
生物生産に不可欠な炭素、窒素、リン等生元素の分布様式は、生態系サービスの量と機能を決定する主要素であり海洋区系の基盤となる。この生元素の分布様式の高感度・高解像度把握を基盤とした新たな海洋区系を確立することを目的とし、研究を行った。 新たに開発した高感度分析法を応用してリン酸塩とLDOP(易分解性溶存有機リン)の海盆スケール分布を調査した結果、西部北太平洋ではリン酸塩の枯渇に併せてLDOPも枯渇していた。このことから、リン酸塩枯渇海域ではLDOPが有機物生産におけるリン源として重要な役割を果たしていることが示唆された。また、上述のリン酸塩および窒素栄養塩枯渇海域のメソ動物プランクトン窒素量を測定すると、窒素栄養塩より1オーダー高い濃度で存在することが明らかになった。今後、各海洋区系の生産性を評価する際には、栄養塩濃度に加え、易分解性溶存有機物や動物プランクトン態窒素・リンを合わせて検討する必要がある。 溶存有機物の質的パラメータの高解像度分布から新海洋像を導くため、ハイスループットな手法である紫外可視分光光度法から得られるS275-295の決定要因を評価した。S275-295の時空間分布および太陽光照射に伴うS275-295の変化から、S275-295は溶存有機物の光学的分解履歴の指標として有用である事が明らかとなった。 炭酸系データベース解析により、太平洋の広域で塩分規格化した全アルカリ度と13カ月移動平均した海面高度の間に良い相関があることを見出し、全アルカリ度マッピングの性能向上に道筋をつけることができた。また、高速応答センサーによる高精度観測を実用化し、春から秋に亜熱帯域の亜表層に出現する酸素極大層の鉛直構造を、高い鉛直密度で把握した。また、キャビティリングダウン分光法による大気・海水CO2・CH4高精度観測装置の試料処理装置を製作し性能試験を開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
設備備品として大気海洋二酸化炭素メタン観測装置、長光路吸光分析システムおよびオートサンプラーを整備するなどして、生元素の高感度・高解像度分析の基盤を整えると共に、新たな手法の確立や従来法の改良により、栄養塩態の窒素・リン・ケイ素、有色溶存有機物、易分解性溶存有機物、粒状ケイ素、酸素の高解像度・高精度観測が可能となった。この手法を、西部北太平洋を縦断する調査航海において応用し、生元素分布のマッピングを開始した。航海によって得られたデータは従来よりも高精度でかつ解像度も高く、太平洋亜熱帯域での粒状ケイ素分布等、世界で初の情報も得られた。また、炭酸系データベースの解析も計画に沿って順調に進んでいる。これらのことから、研究は順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度に確立した手法を用い、調査船白鳳丸南太平洋縦断観測およびその他の各種調査航海で、栄養塩態窒素、リン、ケイ素、溶存有機リン、粒状ケイ素、リン、有色溶存有機物、酸素、炭酸系のマッピングを継続して行う。従来法を用いた、粒状炭素・窒素の分析も併せて行う。さらにデータベースを用いた炭酸系および酸素の分布特性の解析を継続する。得られたデータを用い、海洋物理及び生物地理の成果を併せて生元素地理に基づく海洋区系の区分を開始する。また、成果を学会発表および論文発表することにより、学会での議論、論文レビュープロセスを活用し、その成果の検討を行う。
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