2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project Area | New Ocean Paradigm on Its Biogeochemistry, Ecosystem and Sustainable Use |
Project/Area Number |
24121007
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
千葉 早苗 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 地球環境観測研究開発センター, 主任研究員 (40360755)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
虎谷 充浩 東海大学, 工学部, 教授 (90246075)
小埜 恒夫 国立研究開発法人水産総合研究センター, 中央水産研究所, 研究室長 (40371786)
橋岡 豪人 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 地球環境観測研究開発センター, 研究員 (00463092)
安中 さやか 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 地球環境観測研究開発センター, 研究員 (80620393)
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Project Period (FY) |
2012-06-28 – 2017-03-31
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Keywords | 海洋生態系 / 生元素 / 環境変動 / 太平洋 |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題では,生元素や海洋生物の観測データ及び、衛星観測データを用いて、気候変動に対する応答過程の海域比較や、生態系・物質循環のリンクを明らかにするための研究に取り組んでいる。それらの研究を通じて、海域毎の生物地球化学的、生態学的な特徴を浮き彫りにし、本領域研究課題の目標の一つである、新海洋区系の提案に寄与することを目的とする。2014年度までに、北太平洋をターゲットに、それぞれ異なるアプローチにより、1.生元素の季節変動パターンからみた海洋区系、2.衛星データに基づくクロロフィルの季節変動パターンからみた海洋区系、3.植物プランクトンの多様性と制限栄養塩からみた海洋区系、という3つの海洋区系を提案し、それぞれの境界域の経年変動パターンと北太平洋十年規模変動等との関連を明らかにした。 2015年度は、1.の作成に用いた2000年以降のデータに、新たに60年代以降の観測データを加えて北太平洋表層栄養塩の長期変動特性を調べた。その結果、リン酸塩、ケイ酸塩が減少傾向を示したのに対し、硝酸塩にはトレンドが見られず、大気からのインプットや生態系構造変化の影響など、異なる変動要因があることが示唆された。2.に関して、生元素と生物過程の時空間変動の関連を調べるため、衛星データを用いて新たに基礎生産の季節変動パターンに基づく海洋区を提案した。結果、クロロフィル海洋区と同様、生元素海洋区とは異なる分布となり、両区系における生元素と生物過程の明確なリンクは見出せなかった。3.に関しては、複数モデルを用いて、溶存鉄とアンモニア濃度変化に対する海洋区境界域の感度実験を行い、濃度変化に伴い、区系を特徴づける植物プランクトンの多様性が変動しやすい海域を特定した。この成果は、来年度に海洋区系の将来予測を実施するにあたり、重要な情報となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本課題の計画では、2012-14年度に北太平洋をターゲットに異なるアプローチ/データを用いて複数の海洋区系を提案、その境界域の経年変動パターンを明らかにし、動的な海洋区系を開発することを目指した。その結果、2014年度までに、1.生元素の季節変動パターンからみた海洋区系、2.衛星データに基づくクロロフィルの季節変動パターンからみた海洋区系、3.植物プランクトンの多様性と制限栄養塩からみた海洋区系、という3つの海洋区系を提案、改訂を重ね、それぞれの境界域の経年変動パターンと北太平洋十年規模変動等との関連を明らかにすることができた。 2015年度は当初計画通り、海洋区系の開発に一旦区切りをつけ、本課題のタイトルでもある「生元素循環と生態系の長期変動の解明」に立ち返り、海洋区系を決定する各要素(栄養塩、プランクトン)の長期変動のメカニズム解明に取り組んだ。また、栄養塩とプランクトンの長期データを用いて、生元素循環と生態系変動のリンクについて解析した。また、課題最終年度となる2016年度には、将来の温暖化にともなう海洋区系の変化をモデルにより予測する計画であり、そのための準備として、栄養塩の濃度を変化させた場合に海洋区の境界域がどのように変化するのかについて、モデル感度実験を行った。このように、研究は計画どおり順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
課題最終年度にあたる2016年度は、次の2点に重点を置いて研究をまとめていく:1. 海洋区系の将来予測 2. 物質循環と生態系長期変動のメカニズム 「海洋区系の将来予測」に関しては、今年度終了までに、3.植物プランクトンの多様性と制限栄養塩からみた海洋区を用いて、予備実験として、温暖化による植物プランクトン組成の変化および、栄養塩の変化に伴う海洋区境界域の感度実験を実施している。2016年度には、これらの成果を統合することにより、将来の海洋環境変化に伴い、全球的に栄養塩分布や植物プランクトン組成が変化し、その結果海洋区系がどのように変動し得るのかを明らかにする。「物質循環と生態系長期変動のメカニズム」については、今年度までの主要栄養塩に加え、アンモニア長期データの解析を実施し、プランクトン観測データをアップデートするとともに、両者の変動のリンクについて検討していく。 また、当新学術領域研究「新海洋像」では、海洋生態系サービスのうち水産資源と二酸化炭素吸収の2点に着目し、それらの有効的な維持管理のために、科学的知見に基づき新たな海洋区系を提案することを目標としてきた。目標の達成のためには、自然科学班と社会科学系班の連携研究が、大きな課題の一つである。よって、当研究班では、最終年度にあたり、社会科学班と協力し、モデルを用いた全球基礎生産マップに基づき、これまでに提案した海洋区系の市場性価値評価に取り組む予定である。
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Research Products
(19 results)
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[Journal Article] On the Southern Ocean CO2 uptake and the role of the biological carbon pump in the 21st century2015
Author(s)
HAUCK,J. , VOLKER,C. , WOLF-GLADROW,D. , LAUFKOTTER,C. , VOGT,M. , AUMONT,O. , BOPP,L. , BUITENHUIS,E.T. , DONEY,S.D. , DUNNE,J. , GRUBER,N. , HASHIOKA,T. , JOHN,J. , LE QUERE,C. , LIMA,I.D. , NAKANO,H. , SEFERIAN,R. , TOTTERDELL, I.
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Journal Title
Global Biogeochemical Cycles
Volume: 29
Pages: 1451-1470
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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[Journal Article] Drivers and uncertainties of future global marine primary production in marine ecosystem models2015
Author(s)
LAUFKOTTER,C., VOGT,M., GRUBER, N., AITA-NOGUCHI,M., AUMONT,O., BOPP,L., BUITENHUIS,E., DONEY,S.C., DUNNE,J., HASHIOKA,T., HAUCK,J., HIRATA,T., JOHN,J., LE QUERE, C., LIMA,I.D., NAKANO,H., SEFERIAN,R., TOTTERDELL,I., VICHI,M., VOLKER,C.
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Journal Title
Biogeosciences
Volume: 12
Pages: 6955-6984
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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[Journal Article] Typhoon-induced response of phytoplankton and bacteria in temperate coastal waters.2015
Author(s)
TSUCHIYA, K., V. S. KUWAHARA, K. HAMASAKI, Y. TADA, T. ICHIKAWA, T. YOSHIKI, R. NAKAJIMA, A. IMAI, S. SHIMODE and T. TODA.
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Journal Title
Estuarine, Coastal and Shelf Science
Volume: 167
Pages: 458-465
DOI
Peer Reviewed
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