2013 Fiscal Year Annual Research Report
| Project Area | New Ocean Paradigm on Its Biogeochemistry, Ecosystem and Sustainable Use |
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| Project/Area Number |
24121008
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| Research Institution | Fisheries Research Agency |
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Principal Investigator |
清田 雅史 独立行政法人水産総合研究センター, 国際水産資源研究所, グループ長 (10371931)
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| Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
米崎 史郎 独立行政法人水産総合研究センター, 国際水産資源研究所, 主任研究員 (30463102)
酒井 光夫 独立行政法人水産総合研究センター, 東北区水産研究所, グループ長 (70371937)
上野 洋路 北海道大学, 水産科学研究科(研究院), 准教授 (90421875)
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| Project Period (FY) |
2012-06-28 – 2017-03-31
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| Keywords | 高次捕食者 / 群集構造 / 食物網 / 生態系 |
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| Research Abstract |
本研究課題は北西太平洋の高次捕食者群集を対象とし、長期的な調査データ、漁業データの解析と、生物試料の分析、生態系モデル解析を組み合わせ、高次捕食者からみた海洋区系を提案し、生態系の構造と機能の時空間変動を明らかにする。平成25年度の主要な研究成果としては：
1) 2011年の流し網調査データを用いて、群集非類似度を尺度とした群集境界検出法を開発した。その結果、東経175度ラインと東経155度ラインは北緯41度以北、東経145度ラインは北緯38度以北で別グループに分かれる境界が検出され、東経155度と145度ラインの北側群集の類似度が高かった。これら群集境界は、50m以浅の表層水温と関連性が認められた。2) 各群集の主要種やサイズ組成を分析したところ、全体として表層性サメ類が頂点となり、中深層性マイクロネクトンが支える食物網構造であった。沖合域より沿岸域の方が種間相互作用は複雑であり、海域によって種・サイズ組成に違いが認められた。
3) アカイカの雌雄別サイズ別安定同位体比から、冬春生まれ群（小型の未成熟サイズ）では窒素安定同位体比に雌雄差は無く、 成長とともに窒素安定同位体比は増加することが示されたが、外套長300mm以上の成熟個体では雌雄差が認められた。窒素安定同位体比の違いは、成長と南北回遊に伴うアカイカの食地位の変化を表わすものと考えられる。
4) サケ類の安定同位体分析から沖合での分布や競合関係を推定し、海洋生態系モデルの出力値から成長因子として餌密度依存関数を計算し、サケの生息環境としての海洋の区分と評価を試みた。餌密度依存関数の空間関数は、中緯度中央～東部で正、アラスカ湾・黒潮続流域などで負を示し、時間関数は、1970年代後半に負から正へ転換していた。正の空間関数値を示す海域が、サケにとって好適な回遊経路や生育場を提供し，餌環境の経年変動がサケの資源量や体サイズ変動に影響を及ぼすことが考えられる。
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| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度は、高次捕食者群集およびアカイカに関して2011年生物試料の集中的な分析を行ない、高次捕食者から見た海洋区分法を開発し、各海洋区の生物群集の特性を明らかにすることで、マスバランス型生態系モデルを海洋区別に構築するための基礎情報を整備した。さらに鍵種であるアカイカの安定同位体分析から、海洋区利用の系群差、雌雄差に関して重要な手がかりが得られた。またサケに関しては、安定同位体分析によって野生魚と孵化場魚の回遊パターンと栄養段階を推定するとともに、生態系モデルを利用し、サケの成長の場として海洋環境の時空間変動を評価する手法を開発できた。このように海洋区の海洋環境、低次生産と高次捕食者との関係を結びつける成果が得られ、海洋区の生態系の構造と機能の解明に向けて研究が前進した。各研究者は，班内および他班と連携を取りながら研究を進めている。
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| Strategy for Future Research Activity |
次年度以降は以下の項目に着目して、より発展的な研究を行う予定である。
群集構造に関しては、群集境界検出法の統計的側面を検証し改良した上で、経年変化や海洋環境変動との関係の解析に取り組む。さらに、公募課題「外洋性広域回遊生物のサイズ構造における時空間変動の解明」と研究協力を図り、高次捕食者群集のサイズ構造の海域差について検討する。さらに、各海区ごとにマスバランス型の生態系モデルを構築し、各海洋区の食物網の構造と機能の特性解明を目指す。そのために、モデル構築において栄養段階のバリデーションに用いる構成種組織標本の安定同位体比分析を進める。また公募課題「外洋性広域回遊生物のサイズ構造における時空間変動の解明」と連携し、流し網による採集効率を考慮した構成種の現存量を推定し、代表的な海洋区の生態系モデルを作成する。
アカイカについては非回遊性生物の安定同位体分析と照らし合わせて、安定同位体の海域特性について検証を行いつつ、炭素安定同位体比の結果についても比較を行う。さらに個体の摂餌履歴が残る硬組織の安定同位体分析や、アミノ酸同位体分析を用いた栄養段階の直接推定を試みる。サケでは、餌環境の時空間変動に関する詳細な解析に加えて、水温データの解析を行うことにより、サケの成長に影響を与える因子の長期変動という観点から、新しい海洋区系を検討する計画である。これら成果を統合することにより、海洋区ごとの食物網の構造と機能の把握や、移動性の高次捕食者と各海洋区の物質循環との関係性の解明に向けて着実な前進が得られることが期待される。
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