2014 Fiscal Year Annual Research Report
新興国における経済社会変動と政治体制変動の相互作用の研究
Project Area | Studying Interactions between Politics and Economic Development in Emerging Countries |
Project/Area Number |
25101006
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Research Institution | National Graduate Institute for Policy Studies |
Principal Investigator |
恒川 惠市 政策研究大学院大学, 政策研究科, 教授 (80134401)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 百合 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所, その他部局等, 研究員 (00450453)
本名 純 立命館大学, 国際関係学部, 教授 (10330010)
クー ブー・テック 政策研究大学院大学, 政策研究科, 教授 (10599385)
熊谷 聡 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所, その他部局等, 研究員 (20450504)
峯 陽一 同志社大学, その他の研究科, 教授 (30257589)
磯崎 典世 学習院大学, 法学部, 教授 (30272470)
末廣 昭 東京大学, 社会科学研究所, 教授 (60196681)
玉田 芳史 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 教授 (90197567)
川村 晃一 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所, その他部局等, 研究員 (90450501)
インタラカムナード ピー 政策研究大学院大学, 政策研究科, 教授 (70639913)
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Project Period (FY) |
2013-06-28 – 2018-03-31
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Keywords | 新興国 / ポリティカル・エコノミー / 中所得国の罠 / 都市農村格差 / 民主化 / 中国 / インド / ブラジル |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は各自現地調査も含めて本格的な研究を進め、同時に比較研究のための研究集会を7回開催した。そこから本計画研究の目的の第一である「途上国の中で特定の国々が成長著しい『新興国』になってきたのはなぜか」について、①ほとんどの国では軍政や一党支配のような権威主義体制によって秩序が維持されたが、同時にアフリカで見られるような「略奪国家」にはならず、成長の成果を国民に配分することで社会的・政治的安定を維持したことが、経済活動の予測可能性を高めた、②華人やインド系の人的つながりや政治的なコネが、経済活動の予測可能性を高めるのに貢献した、③輸出市場のディシプリンが働いたおかげで、予測可能性の高さが効率低下に結びつくのを防いだ――という知見が得られた。第二の課題である「新興国が先進国の地位を獲得する上で直面する課題は何か」について、①「中所得国の罠」論の言う経済成長の鈍化現象を克服するために、技術人材の育成、技術者・管理者・労働者の協働、川上部門と川下部門の調整などの努力が政府によって試みられてはいるが、市場プレーヤー間の利害の調整が困難であるため、地場の有力企業は独自の拡大を目指して、得意分野に特化したり周辺国に投資したりする傾向が強まっている、②社会的異議申し立ての増加と政治的民主化圧力の下で、賃金や社会支出をめぐる利害調整が困難となり、政治が不安定化して、経済活動にも支障をきたす国も出ている――ことなどがわかってきている。こうした研究の過程で、新興国特有の問題領域があること、それは経済発展上の問題と社会的・政治的要因の複合によってなりたっていることが明らかになりつつある。なお、本計画研究参加者11名が平成26年度に本事業に関連して出した業績は、論文14本、学会等での報告・講演が10件、書籍(分担執筆を含む)が4冊である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本計画研究のテーマの一つである「中所得国の罠」の分析に欠かせない技術イノベーション政策の専門家を研究分担者に加えた。公募研究に採用された東南アジア諸国のゴム産業の研究者と、東欧バルト海諸国のポリティカル・エコノミーの研究者を、研究チームに統合した。さらに経済指標と政治・行政との関係を数量的に分析する能力を持つ研究員を雇用した。こうした措置によって強化した研究体制の下で、各自現地調査を含む研究を進めると同時に、比較研究のための研究集会を7回開催した。この研究集会で研究分担者10名を含む14名のうち8名が研究の途中経過について発表した。また、これらの研究集会には、本計画研究の研究チームではカバーできない分野の専門家(計5名、うち1名は外国人研究者)を招いて、その意見を聴取した。さらに本計画研究のメンバーは、時間の許す限り、本「新学術領域研究」の総括班や他の研究班が組織する研究集会に参加した。これらは、当初計画で平成26年度に行うことを予定した研究活動である。また「研究実績の概要」で述べたように、本計画研究が目的に掲げた2大テーマについて、重要な知見を得てきている。
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Strategy for Future Research Activity |
①27年度の早い時期の研究集会において、研究分担者の間で、これまでに達成された点と、さらなる研究の深化が必要な部分を確認し、共有する。また本計画研究の目的が、国別研究にとどまらず、様々な国の経験を比較することによって「新興国研究」という新分野を開拓することであることを再確認する。 ②当初から計画していた通り、これまでの研究を中間点でまとめるためのワークショップを27年度に開く。このワークショップには新興国の研究者も招き、本計画研究について意見を聴取するとともに、新興国についての彼らの知見を吸収する。このワークショップの結果は、中間報告書にまとめる。 ③研究分担者は、①で確認したことを念頭において、各自の分担テーマについての研究を進めるとともに、1~2ヵ月に1回開催する研究集会において、各自の研究結果を報告し、同時に新興国研究として、自分の研究がどこに位置するかを確認する。また研究分担者によってはカバーできない国・地域やテーマについては内外の専門家を招いた研究集会を開き、その知見を吸収する。
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Research Products
(28 results)