2016 Fiscal Year Annual Research Report
生命分子システムの有機化学的拡張による動的秩序の創出
Project Area | Dynamical ordering of biomolecular systems for creation of integrated functions |
Project/Area Number |
25102006
|
Research Institution | Japan Advanced Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
芳坂 貴弘 北陸先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 教授 (30263619)
|
Project Period (FY) |
2013-06-28 – 2018-03-31
|
Keywords | タンパク質 / 非天然アミノ酸 / 光架橋 / 抗体 / 蛍光 |
Outline of Annual Research Achievements |
光機能性分子や蛍光標識分子などの人工機能分子を側鎖に有する非天然アミノ酸のタンパク質への導入は、タンパク質の動的秩序の制御や検出において有用である。特に、光架橋分子を有する非天然アミノ酸を導入することで、タンパク質複合体を光架橋することが可能となる。今年度は、非天然アミノ酸に対するアミノアシルtRNA合成酵素変異体を用いた大腸菌発現系により、光架橋アミノ酸を導入したタンパク質の発現を行い、実際に一本鎖抗体と抗原の効率的な光架橋が起こることを確認した。またその際にタンパク質の分子内光架橋も起こりうる点に着目して、タンパク質のコンフォメーション変化を分子内光架橋の変化として捉えることのできる新規原理を見いだした。マルトース結合タンパク質をモデルとして選択して、種々の部位に光架橋アミノ酸を導入して基質の有無による分子内光架橋の変化を調べたところ、特定の部位に導入した場合に、基質結合に伴うコンフォメーション変化により、電気泳動で区別可能な異なる分子内光架橋体が得られることがわかった。また、光架橋アミノ酸を導入したタンパク質を細胞内で発現させて光架橋を行った場合にも、同様の結果が得られており、細胞内でのタンパク質コンフォメーション変化も検出可能であった。 一方、これまでに開発したアルデヒド誘導体を用いたIgG抗体のN末端特異的修飾法を用いて、抗原抗体複合体の光架橋も試みた。光架橋分子のアルデヒド誘導体を合成して、弱酸性溶液中で還元的アルキル化反応を行うことで、IgG抗体のN末端に光架橋分子を付加した。抗原存在下で光照射を行うことで、抗原との複合体を光架橋できることを確認した。また、タンパク質タグ(SNAPタグ)を用いた光架橋分子の導入とタンパク質間相互作用の光架橋も試みたが、現在までのところ達成には至っていない。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
光架橋分子を有する非天然アミノ酸を導入したタンパク質の無細胞系および細胞内での発現法に関して、従来の分子間光架橋を発展させて、分子内光架橋によりタンパク質のコンフォメーション変化を検出できることを新たに見いだした。この手法は、細胞内でのタンパク質およびタンパク質複合体の動的秩序研究に有用となる。また、非天然分子をタンパク質へ導入する手法に関して、N末端アミノ基をアルデヒド誘導体を用いて修飾する手法を発展させて、抗体-抗原結合の蛍光検出だけでなく分子間光架橋に応用できることを確認した。以上の点から、概ね順調に進展していると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
細胞内での非天然アミノ酸導入タンパク質の発現系については、今後はさらに細胞内でのタンパク質の分子内および分子間光架橋など、細胞内発現法のメリットを生かした応用を推進する。また、領域内での共同研究により時間分解測定等によるタンパク質の動的秩序形成過程の計測や機能制御を引き続き進める。 さらに、これまでに確立したタンパク質への非天然分子の導入技術と、タンパク質複合体の光架橋技術と組み合わせることで、新たな人工タンパク質複合体の合成法につなげる。抗体と抗体結合タンパク質をモデル系として用いて、部位特異的に光架橋非天然アミノ酸を導入した抗体結合タンパク質と抗体との光架橋を調べ、効率的な光架橋が可能な導入部位を特定する。続いてその抗体結合タンパク質に部位特異的化学修飾により非天然分子を付加しておくことで、抗体と非天然分子の共有結合複合体の形成が可能になるか検証するとともに、バイオ医薬への応用についても検討する。
|
Research Products
(13 results)