2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project Area | Synergy of Fluctuation and Structure:Foundation of Universal Laws in Nonequilibrium Systems |
Project/Area Number |
25103012
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
吉川 研一 同志社大学, 生命医科学部, 教授 (80110823)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鶴山 竜昭 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (00303842)
市川 正敏 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 講師 (40403919)
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Project Period (FY) |
2013-06-28 – 2018-03-31
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Keywords | 生命物理学 / 非平衡開放系 / 時空間秩序 / ソフトマター / 非線形ダイナミクス / 非平衡ゆらぎ / ゲノムDNA / 病態の物理 |
Outline of Annual Research Achievements |
非平衡開放系の特質である時空間秩序の自発的生成について、生命現象の本質的理解に重点を置きながら、本新学術研究の支援のもと研究を推進させて来ている。生命現象の階層に対応して、1)分子レベル(ゲノムDNA)、2)細胞レベル、3)組織や個体レベル、各々に分けて今年度の研究成果の概略を説明したい。 1)DNAに代表されるようなhelicalな高分子は、巻つき形の構造変化をするとき、一方向のchiral selectionを一般的に行うことを、理論的に示した。核内に存在するDNAの高次構造と機能発現の解明に向けて着実に前進している。また、シリカのナノ粒子とDNAの混合溶液を固体基盤上で蒸発乾固することで、ナノ粒子とDNAが特徴的なミクロ相分離を引き起こし、これまでにないような空間パターンが発生することなども明らかにしてきている。 2) 細胞レベルでは、実空間上にモデル小胞系を構築する。これまでに、細胞内の混雑状態を実空間上で再現することのできるモデル系の確立に向けて着実な成果をあげてきている。閉鎖空間内で、大小の粒子が混在する系に、揺らぎを与えると、空間内の内部と境界とで、粒子の相分離が生じることを理論計算により明らかにしてきている。 3)多細胞系では、組織形成における時空間秩序形成のモデル実験に取り組む。すでに、液滴系で一次元のpearlingから始まり、hexagonal packing 至る動的現象を確立することに成功し、その理論的な解析を進めた。さらに、等温下での「化学→運動エネルギー変換」のメカニズムを解明することを目指した研究も進展させた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画は各課題とも順調に進展してきている。さらに、予想外の重要な発見や、理論の構築も行われており、当初の計画を上回る成果が得られてきている。 例えば、細胞内にあり、遺伝情報を担っているゲノムDNAは、ヒストン蛋白やポリアミンなどの陽イオン性の化学種と相互作用して、凝縮状態をとっているとすることが、これまでの生命科学分野での常識であった。それに対して、負に帯電したnanoparticleによる混雑環境下で、DNAに折り畳み転移が生じていることを発見し、理論的な解析にも成功している。研究費の繰り越しの課題である、水性二層分配系の細胞モデルの研究も大きく前進してきており、DNAのみならずActinなどのたんぱく質も特徴的な局在化をすることを明らかにすることなどができてきている。
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Strategy for Future Research Activity |
生命現象に関して実験・理論両面から研究をすすめる。特に、実空間上の人工モデル構築の実験を重視する。分子、細胞、細胞集団の各3階層に次の2つの課題軸:A)開放系でのゆらぎの不安定化とモード分岐、B)対称性の破れがひきおこす時空間秩序、を設定し、実空間モデル系の構築実験と数理物理的手法の統合で、“生命とは何か”に迫る。非平衡の中で見せるゆらぎと構造が「生物らしい」機能として具現化されるモデル実験系を実空間で創り出し、物理学の対象として生命現象解明の為の研究を推進する。また、生物工学的な生体分子操作と組み合わせ、階層的実空間モデリングを実現し、医学・医療への応用展開も指向する。具体的には、DNA構造転移に関連した、マイクロサテライト不安定誘導及びウイルスゲノムの組み込みによる突然変異による発癌・エイズ発症の病理過程、発生過程にある細胞集団からの組織形成などに取り組む。
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Research Products
(13 results)