2014 Fiscal Year Annual Research Report
原子解像度で探る巨大分子・分子集合体の柔らかさと機能の関係
Project Area | Science on Function of Soft Molecular Systems by Cooperation of Theory and Experiment |
Project/Area Number |
25104002
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
北尾 彰朗 東京大学, 分子細胞生物学研究所, 准教授 (30252422)
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Project Period (FY) |
2013-06-28 – 2018-03-31
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Keywords | 柔らかさ / ダイナミクス / 巨大分子 / 分子集合体 / 機能 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、柔らかさの特徴を織り込んだ理論開発と柔らかさと機能の関係解明を進めている。平成26年度は、非標的カスケード並列選択型分子動力学法の開発、時間依存線型応答理論によるリガンドに誘起されるタンパク質応答の研究、リン脂質によるTRPV4イオンチャネルの制御、および実験と連携したタンパク質の機能研究およびデザインに進展があった。 平成25年度に開発した構造遷移パスウェイを効率的に探索するParallel Cascade Selection Molecular Dynamics (PaCS-MD)を更に改良し、標的を設定することなくより柔らかい方向を探査するnon-targetedのPaCS-MDを開発した。前回と同様にタンパク質のフォールディングやドメイン運動を効率的に観察できることが示せ、現在論文投稿の準備を進めている。 時間依存の線型応答理論を定式化し、リガンド結合によるタンパク質応答のダイナミクス研究を可能にした。CO結合時のミオグロビンの立体構造変化を調べることで、2段階の緩和があることが観察できた。摂動に速くレスポンスするアミノ酸残基保存性も明らかにした。 イオンチャネルTRPV4のアンキリンリピートドメイン(ARD)と脂質膜の結合をドッキング計算や分子動力学計算から、脂質膜に安定に結合することを示した。また、TRPV1の4量体の分子動力学計算からは、TRPV1と脂質膜はある程度の柔軟性を有し、ARDは脂質膜中のPI(4,5)P2と十分に相互作用し得ることを示した。 ドッキング計算を用いた研究では、タンパク質SIRT2と化合物の結合部位を予測することで化合物の更なる展開に貢献した。また、神取グループと協力して、DNA光修復酵素の結合・反応メカニズムの解明とデザインを進めている。また、高橋グループと協力して、がん抑制因子p53のDNAスキャニングメカニズムの研究を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
目的の(1)柔らかさの特徴を織り込んだ理論開発と柔らかさと機能の関係解明のために、構造遷移パスウェイを効率的に探索するParallel Cascade Selection Molecular Dynamics (PaCS-MD)を更に改良し、標的を設定することなくより柔らかい方向を探査するnon-targetedのPaCS-MDを開発することができたのは予想以上の大きな達成度であった。このような分散型シミュレーション法は計算機の並列度が増していく情勢の中で重要な寄与であると考えている。 目的の(2)理論と実験の比較に基づく理論計算の改良と柔らかさの統合的な理解で、時間依存の線型応答理論を定式化し、リガンド結合によるタンパク質応答のダイナミクス研究を可能にしたことは、期待通りの達成度であった。また、実験研究者と協力してイオンチャネルTRPV4のアンキリンリピートドメイン(ARD)と脂質膜の結合をドッキング計算や分子動力学計算から、脂質膜に安定に結合することを示し、TRPV1の4量体の分子動力学計算からは、ARDは脂質膜中のPI(4,5)P2と十分に相互作用し得ることを示したことは、予想以上の成果であった。 目的(3)柔らかさを考慮した立体構造・分子機能の予測と設計では、まずドッキング計算を用いた研究で、神取グループと協力して進めている、DNA光修復酵素の結合・反応メカニズムの解明とデザインは順調に研究が進んでいる。また、高橋グループと協力して行っている、がん抑制因子p53のDNAスキャニングメカニズムの研究は、まだ初期段階だがほぼ予定通りの進行状況である。 以上を総合して、当初の計画以上に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)柔らかさの特徴を織り込んだ理論開発と柔らかさと機能の関係解明のために、これまで同様にシミュレーション法の応用・改良を進める。継続して進めてきたPaCS-MD (Parallel Cascade Selection Molecular Dynamics)法の改良では、昨年開始した自由エネルギーを計算する手法としての確立を引き続き目指していく。また、PaCS-MDで特定のターゲットを設定せず、なるべく広い構造空間をサンプリングする方法への改良も進める。更に、巨大分子のシミュレーションをより効率的に行うための粗視化モデルの開発も開始する。 (2)理論と実験の比較に基づく理論計算の改良と柔らかさの統合的な理解では、下記の研究をおこなう。DNAとタンパク質の相互作用と実験と連携して研究するため、PaCS-MD等を用いてよりタンパク質がDNA上をスキャンする過程や結合する過程を研究し、実験データとの対応を検討する。またタンパク質への変性剤の効果をシミュレーションから計算し、実験データと比較する。更に、気相中のペプチドの構造状態をシミュレーションから予測し、実験で得られるスペクトルとの対応をチェックし、計算モデルの妥当性を検証する。 (3)柔らかさを考慮した立体構造・分子機能の予測と設計では、昨年度開始したDNA光修復酵素を主なターゲットとした研究を更に進め、柔らかさが分子機能に密接に関係したタンパク質の改変による機能変化の予測をおこなう。また、量子化学計算によってその化学反応メカニズムを明らかにする。
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Research Products
(12 results)
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[Journal Article] Design, synthesis and structure-activity relationship studies of novel sirtuin 2 (SIRT2) inhibitors with a benzamide skeleton2015
Author(s)
Taki Sakai, Yotaro Matsumoto, Minoru Ishikawa, Kazuyuki Sugita, Yuichi Hashimoto, Nobuhiko Wakai, Akio Kitao, Era Morishita, Chikashi Toyoshima, Tomoatsu Hayashi and Tetsu Akiyama
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Journal Title
Bioorganic & Medicinal Chemistry
Volume: 23
Pages: 328-339
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] TRPV4 channel activity is modulated by direct interaction of the ankyrin domain to PI(4,5)P22014
Author(s)
Nobuaki Takahashi, Sayaka Hamada-Nakahara, Yuzuru Itoh, Kazuhiro Takemura, Atsushi Shimada,Yoshifumi Ueda, Manabu Kitamata, Rei Matsuoka, Kyoko Hanawa-Suetsugu, Yosuke Senju, Masayuki X. Mori, Shigeki Kiyonaka, Daisuke Kohda, Akio Kitao, Yasuo Mori and Shiro Suetsugu
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Journal Title
Nature Communications
Volume: 5
Pages: 4994(1-15)
DOI
Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
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