2013 Fiscal Year Annual Research Report
高度化した一分子蛍光計測によるタンパク質の構造形成運動の解明
Project Area | Science on Function of Soft Molecular Systems by Cooperation of Theory and Experiment |
Project/Area Number |
25104007
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
高橋 聡 東北大学, 多元物質科学研究所, 教授 (30283641)
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Project Period (FY) |
2013-06-28 – 2018-03-31
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Keywords | 一分子蛍光観察 / ファージ・ディスプレイ法 / タンパク質フォールディング / 一分子選別装置 |
Research Abstract |
1)タンパク質のフォールディング過程の解明:数十マイクロ秒の時間分解能で、一分子の蛍光強度変化を連続追跡する装置を開発し、タンパク質の高速度ダイナミクスを追跡する研究を展開した。プロテインAのBドメイン(BdpA)を取り上げ、Alexa488と633にてラベルしたBdpAについて平衡変性過程を一分子観察し、得られた結果からタンパク質の運動性に関する解析を行った。変性したBdpAがサブミリ秒の時間領域で揺らぎ運動を行うことを見いだした。 次に、ユビキチンを取り上げた。ユビキチンの2番目と65番目の残基にシステインを導入しAtto532とAlexa647にてラベル化した。高速一分子蛍光計測を行ったところ、複数の中間状態が存在し、変性剤濃度により敏感に分布を変化させることが示唆された。また、溶液混合セルを用いて天然状態にあるユビキチンを高濃度の変性剤と混合し、混合後の運動を一分子観察する実験を可能にした。 2)タンパク質デザインを目指した一分子ソーターの開発:ファージ・ディスプレイ法と蛍光観察装置を組み合わせることで、さまざまな配列を持つライブラリーから、目的の構造や特性を持つタンパク質を一分子レベルで選択を行う実験手法の確立を目指した。焦点深度を大きく設定した光学系を開発した。また、さや流セルを開発し、選別する試料が流路の中心部のみを流すことに成功した。また、ソレノイドバルブを用いることで、1秒間に数分子を選別することを可能にした。 M13ファージのg3pタンパク質表面に、緑色蛍光タンパク質(GFP)のC末端断片を発現させた。このファージに別に精製したGFPのN末側断片を混ぜるとGFPが再構成され、GFP蛍光が観察されることを確認した。さらに、GFPを再構成したファージを一個体ごとに観察できることを確認した。このファージを用いた選別実験を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の計画として,以下の三つの項目を提出した。第一は、タンパク質のフォールディング運動を、マイクロ秒から数十秒の時間スケールにおける「一分子動画」の観察技術を用いて解明する。観察対象として、プロテインAのBドメイン、ユビキチンを試料とした高速フォールディング運動と、マルトース結合タンパク質が分子シャペロンであるGroELと相互作用しながらフォールディングする運動を取り上げる。第二は、STMとラマン散乱法を組み合わせた探針増強ラマン分光法を用いて、生体膜表面においてタンパク質が線維状に凝集する過程を観察する。リゾチームが凝集した線維の形態をSTMにより観察し、線維の中における分子構造をラマン散乱により推定し両者の相関を見いだす。第三は、一分子ソーターとファージディスプレイ法を組み合わせ、タンパク質に他の分子を結合させる機能を付与する手法の開発を試みる。この手法の現実性を示すことを目標とする。 以上の計画のなかで、第一の項目であるプロテインAのBドメイン、および、ユビキチンを用いた観測は順調に進み、数ヶ月以内の論文化を目指している。また、GroELとの相互作用を調べる研究では、基質タンパク質をマルトース結合タンパク質から青色発光タンパク質に変更し、実験系の構築に努力を続けている。また、第三の項目についても、一分子選別装置の高感度化と高速度化に成功し、さらに、緑色蛍光タンパク質をファージ表面に発現することに成功した。以上の項目については、計画時に期待した以上の成果が得られている。 一方で、STMとラマン散乱法を組み合わせた先端増強ラマン法については、十分な進展を得られなかった。以上を勘案し、概ね順調に進展していると自己評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
H26年度は、H25年度に大きな進展が見られた高速一分子蛍光測定と一分子選択実験に集中する予定である。特に、1)タンパク質の非平衡運動を観察するための溶液混合装置と2)新規高感度光検出器HPDを使った高速一分子蛍光観察装置の性能の向上などの装置開発を行う。1)は、二つの溶液を100マイクロ秒以内に混合し、混合後の分子運動を一分子観察するための装置であり、H25年度に予備的な装置開発を開始したものである。すでに、ユビキチンを用いた運動観察に装置を応用したデータを得ている。2)は、高速一分子蛍光測定の検出器に、これまでのEM-CCDではなく、単一光子の到達時間を計測できるHPDを用いるものである。これについても、予備実験を開始しており、20マイクロ秒の時間分解能で5ミリ秒以上の長時間にわたって、単一分子の蛍光時系列データを得られることを示している。以上の装置開発により、一分子蛍光観察の可能性を大きく広げることを目標とする。 以上の装置開発とあわせて、一分子選別装置を用いたタンパク質デザインについて、研究努力を集中する。H26年度は、選別したファージの回収を確認し、複数のファージを選別回収することが可能であることを示すことで、論文としてまとめる予定である。その上で、実際にライブラリーを構築し、選別する実験を実施する予定である。
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[Journal Article] Tip-enhanced Raman spectroscopy of 4,4′-bipyridine and 4,4′-bipyridine N,N'-dioxide adsorbed on gold thin films2013
Author(s)
I.I. Rzeznicka, H.Horino, N. Kikkawa, S. Sakaguchi, A.Morita, S. Takahashi, T. Komeda, H. Fukumura, T. Yamada, M. Kawai
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Journal Title
Surface Science
Volume: 617
Pages: 1-9
DOI
Peer Reviewed
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