2016 Fiscal Year Annual Research Report
精密分子設計による光応答を指向した超分子材料の開拓
Project Area | Science on Function of Soft Molecular Systems by Cooperation of Theory and Experiment |
Project/Area Number |
25104011
|
Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
中西 尚志 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点, グループリーダー (40391221)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉沢 道人 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 准教授 (70372399)
|
Project Period (FY) |
2013-06-28 – 2018-03-31
|
Keywords | 超分子 / 分子間相互作用制御 / 光機能 / 常温分子液体 / 分子カプセル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究提案では、超分子化学・分子材料化学に軸足を置き、理論、計測の要求を満たすことのできる分子系の構築を目指している。ナノサイズの閉じた分子系からバルクサイズの超分子構造体までを研究対象と設定し、分子・材料の光機能をプローブとして、その複雑な形成・機能のメカニズム解明を目指す。具体的には、分子組織化過程の理論計算、光励起状態構造・ダイナミクスの研究対象となりうる「常温分子液体」やキャビティーを有する「分子カプセル」に関する研究に取り組んでいる。以下本年度の具体的な研究実績内容を記載する。 (1)アルキル化ピレン液体色素の発光特性をプローブとし、発光特性と分子構造ならびに液体物性の相関を解明した。導入する分岐アルキル鎖の置換配置により、モノマー/エキシマー間の発光制御が可能となり、領域内協同研究による励起状態ダイナミクス計測、分子構造計算、固体NMR構造解析も同時に行い、深い理解に繋げた。 (2)界面活性剤のオイル相に液状アルキル化ピレン分子を導入し、oil-in waterマイクロエマルションを作成した。導入するピレンの分子数に依存したモノマー/エキシマー発光の違いを利用した分光学的解析ならびに中性子散乱構造解析により、マイクロエマルション構造、機能の詳細を明らかにした。 (3)アントラセン環を含むカプセル状集合体にマンガンポルフィリン錯体を内包して、水中・室温でスチレンのエポキシ化反応を検討した。その結果、軸配位子のイミダゾールを必要とせずに、触媒反応が高効率(1350 触媒回転数, 1時間)で進行することを明らかにした。 (4)複数のラジカル種で囲まれたナノ空間の構築は困難である。今回、ジヒドロフェナジン環を有する金属架橋カプセルの合成に成功した。それが電気化学的酸化および試薬酸化により可逆的にポリラジカル空間を生成することを見出した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
π共役系分子に特有な発光機能を有効に活用することで、これまでに明らかとされてこなかったバルク液体物質中における分子会合度合いの評価やカプセル分子形成のダイナミクス等が明らかとなった。特に有限カプセル系の実験では、他を圧倒する触媒反応効率を達成できた。また、有機ラジカル密度の高いカプセル分子の創成など、これまでに類例のない新機能の創出に迫る結果を得るに至った。一方、液状発光体はその疎水的な性質をそのまま機能性オイルと見立てて、水中でエマルション化することが分かり、今後生体応用などの水中における安定化された色素分子の活躍の場の広がりに期待したい。 また、参画する新学術領域のミッションでもあり、計測、理論の研究者らとの協同研究も順調に進んでいる。例えば、液体ピレンの励起ダイナミクスの高速分光解析と共にMDシミュレーションによるピレン会合状態分布の計算など、同一の分子系を多角的に評価する体制が構築できた。
|
Strategy for Future Research Activity |
H29年度は新学術領域研究の最終年度となるため、これまでの取組を成果としてまとめることが最も重要となる。アルキル-π液状分子群に関しては、環状π共役構造が導入する側鎖の嵩高さの増大に伴い歪みを生じている可能性があり、共鳴ラマンやMCDスペクトルなどの分光解析に加え、理論計算からのアプローチにより、極めて稀な分子歪挙動を解明する。また、ベンゼンユニットのオリゴマー程度の分子を対象として進めて来たバルク液体に関する研究を、溶融ポリマーへと発展させ、分子機能からポリマーの発光・電子機能を導き出す材料設計指針を提案したい。 一方、π共役系分子を成分とする有限カプセル系では、様々な刺激に可逆に応答する系の構築や、動的なカプセル形成メカニズムのより精密な理解を目指し、高速分光計測ならびにMD計算等の理論との共同研究の充実を図る。 最終的には分子のサイズ、組織構造のサイズを軸とする評価と同時に、分子運動、発光現象、カプセル化等に関わる時間軸に沿った比較解析を行うことで、分子構造、自己組織化メカニズムと発光等の機能相関をより明確にする。究極には、そこから逆問題として、目標性能を定めた分子群を理論・計算主導でアプローチできると、高効率的な材料創成に繋がると期待する。
|
Research Products
(36 results)