2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project Area | Evolution of molecules in space: from interstellar clouds to proto-planetary nebulae |
Project/Area Number |
25108005
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山本 智 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (80182624)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
坂井 南美 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (70533553)
渡邉 祥正 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (20586929)
酒井 剛 電気通信大学, 情報理工学(系)研究科, 助教 (20469604)
高野 秀路 国立天文台, 野辺山宇宙電波観測所, 助教 (00222084)
廣田 朋也 国立天文台, 水沢VLBI観測所, 助教 (10325764)
鵜澤 佳徳 国立天文台, 先端技術センター, 准教授 (00359093)
前澤 裕之 大阪府立大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (00377780)
|
Project Period (FY) |
2013-06-28 – 2018-03-31
|
Keywords | 星形成 / 惑星系形成 / 星間物質 / 電波天文学 / 星間化学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目標は、太陽型原始星天体の化学組成の多様性と起源を探求し、その化学的多様性が原始惑星系円盤へ伝播されるかどうかを検証することにある。この目標のために、野辺山45 m電波望遠鏡やIRAM 30 m電波望遠鏡を用いたスペクトル線サーベイ観測、および、ALMAを用いた太陽型原始星天体の高解像度観測を展開した。スペクトル線サーベイ観測においては、炭素鎖分子が豊富な原始星天体(Warm Carbon Chain Chemistry天体:WCCC天体)であるL1527について、1 mm, 2 mm, 3mm帯のスペクトル線サーベイを完了した。数多くの炭素鎖分子が検出されたが、その中で、c-C3H2の2種の13C同位体種、および、c-C3Dを検出することに成功した。後者については星間空間で初めての検出である。一方、ALMAによる観測も大きく進展した。WCCC天体の代表であるL1527についての観測では、c-C3H2,SOについて0.5”~0.8”の分解能で分布が明らかになった。c-C3H2の分布とドップラーシフトを解析したところ、それらは回転落下エンベロープのモデルでよく説明され、遠心力バリアの位置を決定することができた。遠心力バリアが観測的に同定されたのは初めてであり、星形成研究に大きなインパクトを与えた。また、遠心力バリア付近でSOが増えるなど、劇的な化学組成の変化が起こっていることもわかった。この結果は、原始惑星系円盤の化学組成の初期条件を考える上で、非常に重要な知見である。これらの結果をとりまとめ論文として出版した。さらに、上記の研究を発展させるためにASTE望遠鏡に搭載する超伝導受信機の開発も進めた。ジュワーの設計製作に時間を要したため経費を繰り越したが、その後順調に立ち上がっており、望遠鏡での試験観測に向けた準備が進行中である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
IRAM 30 m望遠鏡および野辺山45 m望遠鏡を用いたスペクトル線サーベイ観測は順調に進行し、膨大なスペクトル線データが取得されている。この観測プロジェクトはフランスのGrenobleのチームとの共同研究として進めており、現在詳細な解析を行っているところである。現在までにも、c-C3Dの初検出や、c-C3H2における12C/13C同位体比異常という非常に興味ある結果が得られており、すでに後者については論文を投稿している。一方、ALMAによる原始星天体の高解像度観測においては、非常に大きな成果が見られた。ALMAの非常に高い感度のおかげで、原始星天体L1527において、炭素鎖分子の関連分子であるc-C3H2の分布を100 AUスケールの分解能で明らかにすることができた。その結果、原始星まわりの回転落下エンベロープを明瞭に捉えることができ、c-C3H2の分布が原始星から100 AUの位置よりも内側で消失していることがわかった。c-C3H2の分布と運動を物理モデルと対応させることにより、この100 AUの位置が遠心力バリアの位置であることがわかった。観測的に遠心力バリアが捉えられたのは初めてであり、星形成研究に大きなインパクトを与えた。しかも、遠心力バリアの位置SO分子がリング状に存在することも明らかとなり、劇的な化学組成の変化が起こっていることが示された。この遠心力バリアの発見は予想を超えた成果であり、Nature誌に発表した。スペクトル線サーベイ観測のための装置開発については、冷却ジュワーの設計と製作に時間を要したが、現在は順調に立ち上がっている。
|
Strategy for Future Research Activity |
野辺山45 m望遠鏡およびIRAM 30 m望遠鏡を用いて行ってきたWCCC天体L1527におけるスペクトル線サーベイの取り纏めを急ぐ。炭素鎖分子の存在量を決定し、それを星なしコアであるTMC-1と比較することにより、原始星まわりのWCCC現象と、低温の星なしコアで起こっている炭素鎖分子生成過程との違いを明らかにするとともに、その原因の探求を進める。ALMAによる観測では、L1527における一層の高分解能観測を行い、遠心力バリアの物理構造の解明、アウトフローとの関係の検証、および、そこでの劇的な化学変化の全貌の把握を進める。また、L1527以外の天体について遠心力バリアの普遍性の検証を進めるとともに、遠心力バリアの存在が、原始星円盤形成の物理過程やそこでの化学進化にどのような役割を果たしているかを解明する。この研究は、化学的視点をもとに原始星進化と原始星円盤形成を探るという点で独創的であるとともに、原始惑星系円盤に至る化学進化に初めて観測的に切り込む研究として、重要な学術的意義があると考えている。
|
Research Products
(9 results)