2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project Area | Evolution of molecules in space: from interstellar clouds to proto-planetary nebulae |
Project/Area Number |
25108005
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山本 智 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (80182624)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
坂井 南美 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (70533553)
渡邉 祥正 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (20586929)
酒井 剛 電気通信大学, 情報理工学(系)研究科, 助教 (20469604)
高野 秀路 国立天文台, 野辺山宇宙電波観測所, 助教 (00222084)
廣田 朋也 国立天文台, 水沢VLBI観測所, 助教 (10325764)
前澤 裕之 大阪府立大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (00377780)
小嶋 崇文 国立天文台, 先端技術センター, 助教 (00617417)
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Project Period (FY) |
2013-06-28 – 2018-03-31
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Keywords | 星形成 / 惑星系形成 / 星間物質 / 電波天文学 / 星間化学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目標は、太陽型原始星天体の化学組成の多様性と起源を探求し、その化学的多様性が原始惑星系円盤へ伝播されるかどうかを検証することにある。野辺山45 m電波望遠鏡やIRAM 30 m電波望遠鏡を用いた観測では、、炭素鎖分子が豊富な原始星天体(Warm Carbon Chain Chemistry天体:WCCC天体)であるL1527について、1 mm, 2 mm, 3mm帯のスペクトル線サーベイを行った。c-C3H2の2種の13C同位体種の存在量が元素の同位体存在量に比べて著しく低いことを見出した。また、2種の13C同位体種間でも存在量が大きく異なった。この同位体異常はこれまでにも炭素鎖分子で見られていたが、今回の検出により重要性が改めて確認された。この同位体比異常は、太陽系で見られる同位体異常と関係している可能性があり、今後、高空間分解能観測で原始星円盤形成領域の同位体比を調べることが緊急の課題として浮かびあがった。また、今年度から、一つの分子雲複合体(ペルセウス座分子雲)に含まれる原始星の化学組成の統計的研究をIRAM 30 m望遠鏡および野辺山45 m望遠鏡を用いてスタートさせた。30個を超える太陽型原始星天体の化学組成を無バイアス観測することで、化学的多様性を支配する物理的要因の解明を目指しており、初期成果が得られつつある。一方、併行して進めている国際共同電波干渉計ALMA による観測では、WCCC天体であるL1527で回転落下エンベロープの遠心力バリアの位置で化学組成が大きく変化していることを定量的に示した。遠心力バリアの内側では原始星円盤が形成されるので、エンベロープから原始星円盤に至る化学進化の理解に貢献した。また、ASTE 10 m望遠鏡に搭載する受信機の整備を進め、現在、テストジュワーで評価試験を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
IRAM 30 m電波望遠鏡による観測では、原始星天体の化学組成を系統的に調べる大型観測プログラムASAI (Astrochemical Survey at IRAM)をフランスチームと共同して立ち上げ、WCCC天体であるL1527のラインサーベイを推進した。その結果、成果の概要で述べたような13C同位体種の異常をc-C3H2分子について見出すなどの成果を挙げた。この異常についての論文をとりまとめ、Astrophysical Journalに投稿中である。ALMAによる観測においては、L1527で検出した遠心力バリア近傍の温度、密度を推定するために、分子の統計平衡励起計算を行い、エンベロープおよび遠心力バリアの物理状態を明らかにした。その結果を用いて、CCH, c-C3H2, SO, CS, H2CO, CH3OHについて、遠心力バリアの内外での存在量を求め、分子ごとに分布が異なることを定量的に示した。炭素鎖分子関連(CCH, c-C3H2)と CSは遠心力バリアの外側の回転落下エンベロープに存在し、SO, CH3OHは遠心力バリア付近に局在している。一方、H2COは全体に分布していた。このことは、遠心力バリアでの劇的化学変化の起源の理解に向けて重要な基礎を築いた。この成果については論文としてとりまとめ、Astrophysical Journal Lettersに出版した。また、受信機開発についても平成27年度の搭載を目指して順調に準備が進んでいる。このように、研究は概ね当初計画通りに進行しつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、太陽型原始星の形成と進化、およびそこでの化学進化について、新しい知見が続々と得られつつある。また、平成27年度の搭載に向けて、超伝導受信機の開発が着々と進行している。これらのペースを維持し、インパクトの高い成果を創出し続けていきたいと考えている。これまでの成果を背景に、ALMAに強力な観測提案をするとともに、フランスやドイツなどのチームとともに国際共同研究を展開する。特にIRAM 30 m望遠鏡での観測では、そのような協力が不可欠である。幸い、フランスチームから若手博士研究員を1名雇用することができたので、そのメリットを生かし、より強固な国際共同研究体制を構築していきたい。平成27年度後半には、これまで開発してきた超伝導受信機のASTE 10 m望遠鏡への搭載を控えている。これを成功させ、これまでよりも広い周波数範囲で太陽型原始星天体の化学組成を観測する手段を確立したい。これらを通して、原始星から原始惑星系円盤に至る化学進化の道筋を描き出したいと考えている。
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