2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project Area | Evolution of molecules in space: from interstellar clouds to proto-planetary nebulae |
Project/Area Number |
25108005
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山本 智 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (80182624)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
坂井 南美 国立研究開発法人理化学研究所, 主任研究員研究室等, 准主任研究員 (70533553)
酒井 剛 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 助教 (20469604)
渡邉 祥正 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 助教 (20586929)
高野 秀路 日本大学, 工学部, 准教授 (00222084)
廣田 朋也 国立天文台, 水沢VLBI観測所, 助教 (10325764)
前澤 裕之 大阪府立大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (00377780)
小嶋 崇文 国立天文台, 先端技術センター, 助教 (00617417)
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Project Period (FY) |
2013-06-28 – 2018-03-31
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Keywords | 星形成 / 惑星系形成 / 星間物質 / 電波天文学 / 星間化学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、星間分子雲から星・惑星系形成に至る過程での化学進化を電波望遠鏡による観測で明らかにし、先太陽系物質との関連性を探求することを目的としている。そのために次の2つの研究を行っている。(1) 220 GHz帯および0.9-1.5 THz帯の受信機を製作し国立天文台ASTE 10 m望遠鏡に搭載して低質量原始星エンベロープの構造と化学組成の観測を行う。(2)国際共同電波干渉計ALMA (Atacama Large Millimeter/submillimeter Array)を用いて様々な進化段階にある原始星を0.5秒角の空間分解能で観測して原始星近傍の分子分布を明らかにする。これまでに、ASTE 10 m望遠鏡による観測では、製作した0.9-1.5 THz帯の受信機を実際に搭載して13CO (J=8-7)のスペクトル線を低質量原始星で検出することに成功した。またALMAによる観測では、いくつかの原始星の分子分布を0.5秒角の高空間分解能で観測した。その結果、原始星エンベロープの化学組成の多様性が、原始星円盤が形成される領域にまで伝達されていることが明らかになった。原始星円盤は、原始惑星系円盤を経て惑星系を作るもとになるものである。天体によって原始星円盤の化学組成が異なることは、それから惑星形成へ向けた化学進化も異なることを意味しており、星形成から惑星系形成に至る化学進化が一筋ではないことを示した点で大きな意義がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、220 GHz帯および0.9-1.5 THz帯の受信機開発とALMAを用いた観測を併行して進めている。220 GHz帯受信機は概ね組み上がっており、最終的な性能評価を行っている。0.9-1.5 THz帯の受信機については、局部発振信号を発生するための周波数逓倍器を受信機の冷却ジュワ―内に設置するように光学系を改良し、望遠鏡搭載時の作業負担を減らすとともに運用時性能の安定化を図った。0.9-1.5 THz帯受信機は国立天文台の協力を得てASTE 10 m望遠鏡に搭載し、観測実験を行った。1.5 THz帯では搭載時の気象条件が悪く観測はできなかったが、0.9 THz では13CO(J=8-7)のスペクトル線をR CrAやIRAS 16293-2422などいくつかの低質量原始星で検出した。スペクトル線の線幅からこれらが原始星近傍に由来する可能性を指摘した。一方、ALMAを用いた観測では、WCCC (Warm Carbon Chain Chemistry)天体として知られるL1527とともに、それとはまったくエンベロープの化学組成が異なるホットコリノ天体IRAS 16293-2422について、原始星近傍50-100 au程度の分子分布を詳細に調べた。その結果、エンベロープの化学組成の違いは原始星近傍の原始星円盤形成領域にまでもたらされていることを突き止めた。原始星円盤は将来、原始惑星系円盤を経て惑星を形成するもとになるので、惑星系の物質的起源は必ずしも一通りではないことを示した点で、大きな学術的意義がある。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も、引き続きASTE望遠鏡を用いた観測を推進するとともに、ALMAでの観測を強化し、様々な原始星天体について、原始星近傍50 au程度の「惑星系形成領域」での化学組成の多様性の概要把握と、その起源の解明を進める。すでに、このテーマでのALMAの観測時間を確保しており、L483, NGC 1333 IRAS4A, B335ではデータも届けられているので、それらの解析を通して、星・惑星系形成の過程における化学進化の描像を描き出したい。
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