2016 Fiscal Year Annual Research Report
Chemical Diversity of Protoplanetary Systems and its Evolution
Project Area | Evolution of molecules in space: from interstellar clouds to proto-planetary nebulae |
Project/Area Number |
25108005
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山本 智 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (80182624)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
坂井 南美 国立研究開発法人理化学研究所, 主任研究員研究室等, 主任研究員 (70533553)
酒井 剛 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 准教授 (20469604)
渡邉 祥正 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 助教 (20586929)
高野 秀路 日本大学, 工学部, 教授 (00222084)
廣田 朋也 国立天文台, 水沢VLBI観測所, 助教 (10325764)
前澤 裕之 大阪府立大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (00377780)
小嶋 崇文 国立天文台, 先端技術センター, 助教 (00617417)
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Project Period (FY) |
2013-06-28 – 2018-03-31
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Keywords | 星形成 / 惑星系形成 / 星間物質 / 電波天文学 / 星間化学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度も昨年度に引き続き、国際共同大型電波干渉計ALMAによる観測データを解析して、原始星円盤形成過程における物理進化と化学進化の研究を進めた。特筆すべき第一の成果としては、大型有機分子(アルコールやエステルなど)に恵まれる原始星天体(ホットコリノ天体)IRAS 16293-2422 Source Aの構造解明が挙げられる。この天体の原始星近傍のエンベロープ・円盤構造を調べたところ、物理構造は昨年度までに観測されていた炭素鎖分子に恵まれる原始星(WCCC)天体と同じであったが、エンベロープ、円盤、そしてその間の遷移領域(エンベロープの遠心力バリア)をトレースする分子が全く異なっていた。すなわち、数1000天文単位スケールで見られた化学的多様性が原始星近傍の円盤形成領域(数10天文単位)までもたらされていることがわかった。第二の成果としては、WCCC天体と考えられてきたL483という原始星天体を100 天文単位を切る解像度で調べたところ、内側にホットコリノに特徴的な大型有機分子を見出した。このようにWCCC天体とホットコリノ天体の両方の性質を持つ天体の発見は初めてであり、化学組成の多様性の理解において重要な意義を持つ。第三は、孤立した星形成領域B335がホットコリノ天体であることを発見した点である。この天体は、星形成の理論において標準天体と考えられており、星・惑星形成の化学過程を理解する上でも標準となり得る。この結果は、その理解の第一歩として重要な結果である。 これらと併行して、ASTE望遠鏡に搭載する受信機を開発して、実際に2016年10月に実際の搭載実験を行った。いくつかの低質量原始星天体について、13CO(J=8-7)のスペクトル線の観測に成功した。引き続き、受信機の心臓部であるホットエレクトロン・ボロメータ・ミクサ素子とミクサマウントの改良を進め、性能向上を図った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
国際共同大型電波干渉計ALMAを用いた原始星円盤形成領域の観測は順調に進行している。数1000 天文単位で認識されていた原始星天体の化学的多様性が、数10天文単位の原始星円盤形成領域まで伝播していることがわかり、化学的多様性の進化の理解を大きく進めた。また、その過程で、ホットコリノ天体とWCCC天体の両方の性質を持つ天体を見出したことも大きな成果で、この点については、期待以上の成果であった。 一方、ASTE望遠鏡による原始星天体の観測についても、0.9-1.5 THz帯の超伝導受信機の開発に成功し、テスト観測に成功した。その際、ミクサマウントのホーン部分の形状に問題があることがわかり、それを修正したマウントでビームパターンの測定を行ったところ、問題点が克服されていることが確認された。
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Strategy for Future Research Activity |
国際共同大型電波干渉計ALMAを用いた観測については、これまでの成果を踏まえ、より多くの天体について観測を展開し、本研究課題の目的を達成したい。すでに採択されているALMA観測提案のデータが届られ次第、その解析を速やかに行うとともに、新しい観測提案を重ねながら、原始星天体の化学的多様性の全貌とその進化を明らかにする。その目的の1つとして、フランス、イタリア、ドイツ、イギリスのグループを含む約40名のチームで、13個程度の原始星天体の化学組成を50天文単位の高解像度で総合的に観測する大型プログラムを提案している。これにより観測研究を大きく進めたい。 一方、ASTEによる観測については、望遠鏡の鏡面精度がテラヘルツ帯の観測には不十分であることが判明したので、観測研究よりもむしろテラヘルツ帯の基礎観測技術の確立に専念し、ホットエレクトロン・ボロメータ・ミクサの動作原理の確立と受信機雑音性能の向上を図る。
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