2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project Area | Molecular Architectonics: Orchestration of Single Molecules for Novel Function |
Project/Area Number |
25110006
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
石田 浩 日本大学, 文理学部, 教授 (60184537)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐甲 徳栄 日本大学, 理工学部, 准教授 (60361565)
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Project Period (FY) |
2013-06-28 – 2018-03-31
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Keywords | 表面界面系 / ナノ材料 / 物性理論 / 密度汎関数法 / 第一原理計算 / 光と物質の相互作用 / FDTD法 |
Research Abstract |
本研究では、複合界面系の設計指針を物性理論の立場から与えるべく、本領域内の他の実験・理論グループと連携して、基板となる固体表面および吸着ナノ分子系の安定原子構造、熱平衡状態での詳細な電子構造、さらに光や電場など外場に対する電子・スピンの応答を理論計算により解明することを目的とする。 石田は、平成25年度に、エムベッディッドGreen関数(EGF)法に基づく半無限表面・界面の電子構造計算プログラムを改良して、スピン軌道相互作用が取り扱えるようにした。このプログラムを用いて、Au、Biなど半無限結晶表面の表面局在バンドのRashba効果を調べた。更に、連携研究者の阪大・森川教授、また領域内の東大・高木グループとの共同研究により、Ag(111)面上のシリセン吸着層の電子構造を計算した。これまでの薄膜モデルの計算では、吸着シリセン層の2次元バンドの詳細を調べることが難しかった。本研究ではEGF法を用いて半無限表面の計算を行うことにより、シリセン2次元バンドとAg下地バンドの混成によって生じる表面共鳴状態の、エネルギー幅やエネルギー分散関係の詳細を明らかにした。 佐甲は、外部電磁場に対する吸着分子の応答を明らかにすることを目的として、研究の初年度である平成25年度は、マクスウェル方程式とシュレーディンガー方程式に基づく混合数値解析コードの作成を主テーマとして取り組んだ。電磁・磁場および電子波動関数を、それぞれ座標空間グリッド上の関数として表現し、それらをFDTD法に基づいて微小時間間隔で積分する計算コードの開発を行った。時間依存波動関数を用いて速度演算子の期待値を計算することによって分極電流密度を求め、それをマクスウェル方程式に返すことにより、電子系の変化による電磁場の再定義を可能にした。これにより、電磁場と電子系の協奏的な物理現象を扱うことが可能となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
石田に関しては、エムベッディングGreen関数(EGF)法の計算プログラムにスピン軌道相互作用項を取り入れる作業を完了して、Rashba効果など、表面電子のスピン状態を調べることができるようになった。また研究計画に従って、本学術領域の他のグループ(高木グループ)と共同研究を実施して、2次元ディラック電子が存在するかどうかで現在注目を集めているシリセン吸着層の電子構造の詳細を、半無限計算により明らかにすることができたため。 佐甲に関しては、本研究で提案している「吸着系の外部電磁場への応答」を調べるためには、電磁場を記述するマクスウェル方程式と電子系を記述するシュレーディンガー方程式に基づく時間依存シミュレーションコードの作成が不可欠である。平成25年度は、当初の計画通り、これらのプログラムを作成し、購入した計算サーバー(Dell社 PowerEdgeR910)へのインストールを行ったため、研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
石田は、平成25年度に引き続き、連携研究者の大阪大学・森川教授のグループと共同して、基板表面および吸着分子の電子構造を第一原理から計算する。この際、原子構造最適化に関しては、密度汎関数理論と、ウルトラソフト擬ポテンシャル+平面波基底、またはProjector Augmented Wave(PAW)法に基づく3 次元周期系に対する計算プログラムを用いる。更に表面局在状態、表面共鳴凖位などの詳細な情報を得るため、エムベッディッドGreen関数(EGF)法を用いて、半無限表面・界面の電子構造を計算する。平成25年度は、Ag上のシリセン吸着層の電子構造を計算して、EGF法でも60原子以上の大規模計算が可能であることを示した。平成26年度は、この経験を生かして、ポルフィリンやフタロシアニンなど有機分子吸着系の電子構造計算を開始したい。 佐甲は、超短パルスレーザー照射下における吸着分子の過渡的な電気伝導を明らかにするために、まず電子の閉じ込めポテンシャルが解析関数でモデル化できる「人工原子」に着目し人工原子が結合した「人工分子」における電気伝導を量子波束の時間依存シミュレーションを通して明らかにする。人工分子の閉じ込めポテンシャルを擬1次元ガウスポテンシャルの線形結合で表現し、このポテンシャルに拘束された電子系に超短光パルスが照射された場合の電子波束の時間発展を計算する。計算は、昨年導入した高速ストレージディスクを内蔵した計算サーバー上で行い、光パルスの中心周波数、パルス波形と電気伝導との相関を調べる。また、石田らのDFTによる基板表面の計算結果に基いて、吸着分子の有効閉じ込めポテンシャルの検討を行い、電磁場照射下における吸着分子の電気伝導を計算するためのの理論整備を行う。
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Research Products
(8 results)