2016 Fiscal Year Annual Research Report
新規ナノカーボン材料の表面/界面修飾による特性制御とデバイス応用
Project Area | Molecular Architectonics: Orchestration of Single Molecules for Novel Function |
Project/Area Number |
25110007
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
松本 和彦 大阪大学, 産業科学研究所, 教授 (80344232)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
前橋 兼三 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (40229323)
井上 恒一 大阪大学, 産業科学研究所, 准教授 (50159977)
大野 恭秀 徳島大学, 大学院理工学研究部, 准教授 (90362623)
金井 康 大阪大学, 産業科学研究所, 助教 (30721310)
小野 尭生 大阪大学, 産業科学研究所, 助教 (00752875)
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Project Period (FY) |
2013-06-28 – 2018-03-31
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Keywords | グラフェン / 直接成長 / 電界効果トランジスタ / 両極特性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究領域の「分子アーキテクト」の土台となるグラフェンの実用化技術を提供し、グラフェンを電極とした分子デバイスの作製と評価を目的とする。一般的に化学気相成長法によって高品質なグラフェンが合成できることが知られているが、合成されるグラフェンは多結晶であり触媒全面にグラフェンが合成されるため、必要ない部分のグラフェンは除去する必要がある。そこで、本研究では触媒をパターニングすることによって、化学気相成長法によって、合成されるグラフェンの位置の制御を行った。また、パターンの大きさを制御することで、グラフェンの結晶数が制御可能であることがわかった。その結果、パターンの大きさが75μm四方のときにグラフェンの結晶数がほぼ1になり、単結晶のグラフェンが合成されることがわかった。以上から大きさ60μm程度の単結晶のグラフェンを任意の位置に合成することが可能となった。グラフェン表面を糖鎖で修飾を行い、糖鎖を修飾したグラフェンにウイルスたんぱく質などの吸着することによるグラフェンの電気抵抗の変化を調べた。その結果高感度なウイルスセンサとして有用であることがわかった。また、AFMにより、糖鎖やたんぱく質の吸着される様子を観測した。グラフェン上でウイルスたんぱく質の糖鎖への脱離がその阻害剤によって、阻害される様子を電気的に測定することに成功した。電子線描画によって30 nm程度のグラフェンナノギャップ電極を作製し、長さ100nm程度のポリチオフェン分子をグラフェンナノギャップ電極間に架橋させて、その電気特性を調べた。その温度依存性がsmall polaronモデルとよく一致した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度ではレーザー照射によって、グラフェンを合成することに取り組み、任意の位置に容易にグラフェンを合成することができたが、合成されるグラフェンの層数は制御できず、欠陥も多かった。そこで、今年度では高品質なグラフェンが合成可能な化学気相成長法によりグラフェンを合成し、その合成される位置を制御することに取り組んだ。触媒となる銅箔を酸化し、部分的に酸化層をエッチングすることによって、グラフェンを合成する位置の制御に成功した。さらに合成されるグラフェンの結晶数が触媒のパターンサイズに依存することがわかり、高品質な単結晶のグラフェンを任意の位置の合成することが可能となった。糖鎖修飾によるグラフェンの機能化とウイルスセンサ応用に関しては、ウイルスが持つたんぱく質であるノイラミニターゼの影響が阻害剤によって阻害される様子をグラフェンの抵抗変化から電気的に測定することに成功した。また、ウイルスを取り扱うことが可能な実験室の設備を整えたためウイルスを取り扱った電気測定が可能となった。グラフェン電極を有した長鎖分子トランジスタの開発に関しては、前年度に測定は行っていたが、温度依存性が説明できなかった。今年度では、温度依存性の結果がsmall polaronモデルとよく一致することがわかり、ホッピング距離が1.9 nmと算出された。
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Strategy for Future Research Activity |
有機分子トランジスタでは、ポリチオフェン分子の伝導機構の解明を行った。しかしながら、単分子測定ではない可能性が高い。長い有機分子は凝集しやすいことから、得られた結果が単分子の結果であるかどうかの判断が難しい。そこで、ロタキサン等で分子鎖を保護することや短い分子等の凝集しにくい有機分子の測定を行うことを考えている。短い分子を架橋するためには、より狭いギャップのグラフェン電極を作成する必要がある。グラフェンを機能化してバイオセンサ等に応用することに関しては、実際にウイルスを使用することを考えている。将来的にはウイルスを使った薬剤評価など様々な展開を行う予定である。
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