2013 Fiscal Year Annual Research Report
単一分子集積ネットワークによる情報処理機能実装と信頼性向上
Project Area | Molecular Architectonics: Orchestration of Single Molecules for Novel Function |
Project/Area Number |
25110013
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
葛西 誠也 北海道大学, 情報科学研究科, 准教授 (30312383)
|
Project Period (FY) |
2013-06-28 – 2018-03-31
|
Keywords | 単一分子デバイス / 確率共鳴 / ネットワーク / 情報処理 |
Research Abstract |
単一分子エレクトロニクスは究極の微細電子システムを実現すると期待されている。日本の優れた単一分子技術を情報処理へ展開するにあたっての課題は、単一分子の機能とサイズを活かしつつ著しいゆらぎを克服する論理表現と演算手法を見出すことである。本研究の目的は、単一分子系に相応しいブール論理演算手法と技術の開拓、および、確率共鳴現象にもとづく単一分子デバイス動作信頼性向上である。平成25年度においては以下の研究成果を得た。 (1)基本しきい値論理回路をナノワイヤFETネットワークで実装した。関数変更のためのしきい値変更手法を誘電体の電子捕獲放出を利用し実現できることを示した。 (2)化合物半導体ナノワイヤ電界効果トランジスタ(FET)をもちいて分子材料であるポルフィリンの離散的電荷充放電プロセスを電気的に計測することに成功した。サイズが大きいFETで限定された分子の離散的現象を捉えるメカニズムを検討した。 (3)単純なグラフェンのナノサイズ3分岐接合(グラフェンTBJ)によりNOTゲート動作を実現した。グラフェンTBJはANDやORゲートとして動作可能であることから、本成果によりグラフェンTBJのみでブール代数の完全系を構成することが可能になった。 (4)粘菌アメーバに倣った最適化問題解探索アルゴリズムを容量と非線形素子ネットワークによって電子的に実装することに成功した。またシステムの構成素子にゆらぎを与えることにより解空間探索が可能であることを示した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
1.化合物半導体ナノワイヤFETで単一分子の電子的挙動をセンシングする可能性を実験的に見出した。これは単一分子ダイナミクス計測や、分子と半導体素子のインターフェースにつながる成果である。また、確率共鳴に基づく分子の充放電制御情報伝送・処理の基礎となる成果でもある。 2.しきい値論理回路は脳型情報処理のもっとも基本的な構成である。ナノワイヤFETネットワークで実装する方法を明らかにしたことで、分子ネットワークでの情報処理回路の端緒がつかめた。 3.究極的に単純な3端子構造であるナノ3分岐接合によってNOTゲート動作を実現できることを示したことあから、トランジスタと比較して大幅に簡略化されたデバイスとプロセスで論理回路が構成可能となった。分子での回路構成に有意な成果である。 4.アメーバ型解探索アルゴリズムの電子的実装に成功し、ゆらぎを積極的に利用するあらたな計算システムの方向性を切り開くことができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
(1)化合物半導体ナノワイヤFETのナノワイヤ幅縮小により単一分子の電子ダイナミクスを観測可能にする。このために現在開発中の高精度デジタルウエットエッチング装置を完成させる。時間領域波形より充放電時定数を評価し、その解析から分子の電子状態の情報をひきだす。単一分子のゆらぎの性質と起源について評価検討する。さらに、ゲート電位によって分子の電荷充放電時定数を制御できることを示し、分子に情報を担わせる技術を開拓する。 (2)金属/グラフェン界面形成プロセス精度と再現性を向上させる。ポイントはプロセス中に混入する原子レベルの不純物を除去することである。高精度プロセスを用いてグラフェンTBJを作製し、キャリアタイプのゲート制御によるANDとORゲート演算機能のスイッチングを実現する。 (3)単一分子物性を利用したアメーバ型解探索アルゴリズムの実装方法、物理構成法を検討する。分子間での酸化還元反応にともなう電荷移動と、分子ゆらぎを利用した解空間探索機能の創発が実装におけるポイントとなる。
|
Research Products
(30 results)