2016 Fiscal Year Annual Research Report
Physiological and pathophysiological roles for autophagy and its molecular basis
Project Area | Multidisciplinary research on autophagy: from molecular mechanisms to disease states |
Project/Area Number |
25111005
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
水島 昇 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 教授 (10353434)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
塚本 智史 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 放射線医学総合研究所 技術安全部, 主任研究員(定常) (80510693)
|
Project Period (FY) |
2013-06-28 – 2018-03-31
|
Keywords | オートファジー / 細胞内分解 / リソソーム / 神経変性疾患 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、モデル動物を用いたオートファジーの生理学的解析と、その基盤となる分子機構の解析を行っている。平成28年度は、次の3点の研究を中心に行った。 1.哺乳類細胞におけるオートファゴソームの成熟過程を解析し、オートファゴソームとリソソームの融合とそれに引き続くオートファゴソームの内膜の分解を初めて生細胞でとらえることに成功した。さらに、オートファゴソームのSNAREタンパク質であるSyntaxin17をマーカーとして用いることで、ATG結合系はオートファゴソームの閉鎖に必要であり、それによる外膜と内膜の切り離しがオートファゴソーム内膜の効率的分解に必要であることを示唆した。 2.オートファジー活性(フラックス)を簡便かつ定量的に測定できる新規プローブGFP-LC3-RFP-LC3ΔGを開発した。本プローブを用いることで、培養細胞だけでなく動物個体内でもオートファジー活性を測定しえた。その結果、マウスやゼブラフィッシュの受精卵、水晶体などで高いオートファジー活性を認めた。さらに既承認薬ライブラリーから新規オートファジー誘導薬・阻害薬を同定しえた。今後、本プローブの利用によってオートファジーの基礎研究や疾患研究が進展することが期待される。本法は特許を出願した。 3.オートファジー遺伝子Atg5欠損マウスは生後1日で死亡するが、神経細胞にのみAtg5遺伝子を再導入したマウスを作製したところ成獣まで生存できるようになった。よって、Atg5欠損マウスの新生仔期における死因は神経異常にあったことがわかった。さらにこのマウスは鉄吸収不全による貧血や性ホルモン低下を伴う性腺委縮を呈することから、オートファジーの新しい生理機能が示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
オートファジー定量系の構築、脳特異的Atg5レスキューマウスの解析、オートファゴソームの成熟機構の解析については、順調に進み、いずれも国際一流紙に論文発表することができた。その他、オートファゴソーム形成、オートファゴソームとリソソームの融合機構、新規レポーターを用いた制御因子探索も順調に進んでいる。ゼブラフィッシュをモデルとした典型的オートファジーや水晶体小器官分解の遺伝学的解析も軌道に乗った。なお、新規オートファジーレポーターを発現するマウスを作製したところ、発現分布が著しく偏り、骨格筋でのみ解析が可能であった。そこで、遺伝子重複を避けたコンストラクトを再作製してRosa遺伝子へのノックイン法へと切り替えた。そのため実験が約9ヶ月延長したが、経費の一部を繰り越したことにより、より偏りの無い発現マウスの解析が可能となっている。合計して、原著論文5編、英文総説3編、和文総説9編を発表した。大学院生・学部学生などの若手の参画も多く、研究者育成も順調に進んでいる。
|
Strategy for Future Research Activity |
メカニズムの研究としては、オートファゴソーム関連構造体に集積する脂質合成酵素やその生成物を特定し、オートファゴソーム形成における機能を解析する。さらにオートファゴソーム形成の中期過程やオートファゴソーム閉鎖に関わる因子としてATG2の分子機能解析を行う。リソソームとの融合機構については、オートファゴソームSNAREであるSTX17の膜挿入機構、およびSTX17に依存しない融合における新規因子の同定を行う。また、すでに開発したオートファジー活性プローブを用いた新規オートファジー制御因子スクリーニングを行う。 個体レベルのオートファジーの機能については、まず個体レベルのオートファジー活性評価のために、新規プローブを導入したトランスジェニックマウスの解析を行う。各種ATGノックアウトゼブラフィッシュを樹立・解析し、未発表のATG101ノックアウトマウスの解析と合わせて全身・種横断的な生理機能解析を行う。病理モデルとしては、引き続きヒト神経変性疾患SENDAの原因遺伝子であるWIPI4を欠損したマウスとゼブラフィッシュの表現型解析を行い、SENDA病態の理解を目指す。選択的オートファジーの意義については、ATG欠損マウスのプロテオーム解析などから選択的基質を同定し、既知の選択的基質とともに、それらの分解の意義について分解不全型ノックインマウスを作製して解析する。一方、水晶体細胞での小器官分解に関わる新規オートファジーの責任候補遺伝子のノックアウトマウスおよびゼブラフィッシュを解析し、水晶体の小器官分解過程のメカニズムを明らかにする。 ATG遺伝子にはオートファジー非依存的な機能があることも判明しており、その一例としてマラリア原虫におけるオートファジー非依存的なATGの機能を解析し、ATGの普遍的分子機能と原虫に特化した機能の解明を目指す。
|