2015 Fiscal Year Annual Research Report
精子幹細胞のエピゲノム安定性と発がんとの関係の解析
Project Area | Analyses and regulation of germline epigenome |
Project/Area Number |
25112003
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
篠原 隆司 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (30322770)
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Project Period (FY) |
2013-06-28 – 2018-03-31
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Keywords | 精子幹細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでに我々はGS細胞でDmrt1とp53遺伝子を同時に抑制することで多能性細胞であるmultipotent GS細胞を樹立することができることを報告した。本年度においては、この手法が胎児期の生殖細胞および生後の精巣由来の生殖細胞においての役割について検討を行った。GS細胞と同じプロトコールで精巣細胞において遺伝子抑制を行ったところ、mGS細胞の出現は認めることができなかった。一方で胎児期のprimordial germ cell(PGC)に対してDmrt1とp53の遺伝子抑制を行った場合には、mGS細胞を得ることができた。この結果は胎児期の細胞の方がより多能性細胞へと変化しやすいことを示す。さらに、Dmrt1もしくはp53遺伝子のみについてPGCを用いて遺伝子抑制を行ったところ、Dmrt1を抑制した場合には細胞死が起こりmGS細胞を得ることができなかったが、p53のみの遺伝子抑制でもmGS細胞を得ることができた。したがって、PGCにおいてはp53遺伝子の方がDmrt1遺伝子よりも多能性遺伝子の発現制御により重要な役割を果たしていることが明らかとなった。
本年度はp53と並びがん抑制遺伝子として知られるRb遺伝子についてもGS細胞の多能性制御における役割についての解析を行った。p53遺伝子を欠損した場合と異なり、Rb遺伝子を破壊した場合にはGS細胞の精子幹細胞活性が顕著に低下し、その増殖も停止することが明らかとなった。p53遺伝子の抑制により若干の改善は見られるものの、レスキュー効果を得るまでには至らなかった。Rb欠損GS細胞を解析したところ、E2F1がその下流として働いており、DNAダメージが生じることが明らかとなった。このことから、Rb遺伝子はGS細胞の多能性制御にはRbは関与しおらず、ゲノム安定性において重要な役割を担うことがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
GS細胞の多能性制御因子の機能を胎児期にまでさかのぼることで生殖細胞の異なるステージにおいては多能性遺伝子の制御方法が異なることを明らかにすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、GS細胞の多能性制御に関わる分子をさらにスクリーニングすると共にDmrt1の下流分子として知られるSox2がどのようにしてGS細胞の多能性制御に関わるのかを調べる。特にSox2と協調して働く分子を同定することを目標とする。
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Research Products
(6 results)