2016 Fiscal Year Annual Research Report
再構成ヌクレオソームを用いた動的クロマチン構造の解明
Project Area | Dynamic chromatin structure and function |
Project/Area Number |
25116002
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
胡桃坂 仁志 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (80300870)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
堀 哲也 大阪大学, 生命機能研究科, 准教授 (70550078)
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Project Period (FY) |
2013-06-28 – 2018-03-31
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Keywords | 染色体構築・機能・分配 / 遺伝情報複製・再編 / ゲノム多様性 / ゲノム進化・再編 / ゲノム機能 / 活性発現の分子機構 / 生体高分子構造・機能 / 構造活性相関 |
Outline of Annual Research Achievements |
さまざまな生物種由来のヒストンバリアントや修飾ヒストン、損傷DNA、リンカーヒストンおよびクロマチン結合因子などを含むヌクレオソームの、生化学的、構造生物学的、物理化学的、細胞生物学的解析を行うことにより、それらの機能メカニズムについての新たな知見を多数得た。1) ヌクレオソームが、相同組換え過程における相同鎖検索に及ぼす影響を解析し、減数分裂期特異的相同組換えタンパク質DMC1が、ヌクレオソームの存在しない領域を選択的に標的とする事を明らかにした。2)転写開始点に形成される、H2AとH2A.Zを1分子ずつ含む、ヘテロヌクレオソームの結晶構造を明らかにし、H2A.ZのL1領域がヘテロヌクレオソームに特徴的な構造を形成する事を見出した。3)H2BおよびH4のユビキチン化がヌクレオソームおよびポリヌクレオソームの構造に及ぼす影響を解析し、ユビキチン化によってクロマチンが広がった高次構造を形成する事を明らかにした。4)転写開始点近傍に局在するH3.Yヌクレオソームの生化学的解析、X線結晶構造解析によって、H3.Yヌクレオソームが通常のヌクレオソームよりも安定である一方で、DNAの末端が広がった動的な構造を形成する事を明らかにした。5)分裂酵母のヌクレオソームがヒトのヌクレオソームよりも不安定である事を生化学解析によって明らかにした。6)マウスの精子形成に必須なH3tを含むヌクレオソームの立体構造とその性質を明らかにした。7)塩基除去修復の過程やDNA損傷によって形成される、APサイトを含んだヌクレオソームの立体構造を明らかにし、損傷部位のDNAバックボーンがヌクレオソームから飛び出した“インチワーム構造”形成する事を発見した。さらに分担者の堀は、セントロメア位置の継承基盤について細胞生物学的解析を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度も様々なヌクレオソームを試験管内で再構成し、その立体構造を明らかにしてきた。具体例として、H2AとH2A.Zを1分子ずつ含むヘテロヌクレオソーム、H2BとH4のユビキチン化を含むヌクレオソーム、H3.Yヌクレオソーム、マウスH3tヌクレオソーム、DNA損傷APサイトを含んだヌクレオソームのX線結晶構造解析に成功し、その立体構造を解明し、その成果を論文にて報告した。 これらの構造を明らかにした際に、いくつかの予測外の新発見をした。たとえば、APサイトを含んだヌクレオソーム中では、DNAのリン酸骨格が大きく湾曲した構造が形成されることが明らかになり、この構造を“インチワーム構造”と命名した。これまでのX線結晶構造解析の歴史において、このようにDNAのリン酸骨格が湾曲した構造は例がない。インチワーム構造が損傷DNAの認識にどのような影響を与えるのか、今後の解析が期待される。また、H2AとH2A.Zを1分子ずつ含むヘテロヌクレオソーム構造解析からは、H2A.ZのL1領域がこのヘテロヌクレオソームに特異的な構造を形成する事を発見した。 さらに、クライオ電子顕微鏡解析にも着手して解析手法を確立しており、巨大なクロマチン複合体の立体構造解析する基盤が整った。これらの成果は、当初の計画を大きく上回るものであり、本年度は計画以上に研究が進展したと評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで引き続き、ヒストンバリアントやヒストン翻訳後修飾、ヌクレオソーム結合タンパク質の機能を明らかにするために、試験管内再構成ヌクレオソームの立体構造や物理化学的性質、生化学的機能を解析する。さらに、以下の研究を推進する。 クロマチンやヌクレオソームはヘテロクロマチン形成やクロマチンリモデリングの過程でダイナミックにその構造を変換させる事で、転写制御等の機能を発揮する。来年度以降はヘテロクロマチンの構造を明らかにするために、ヘテロクロマチンタンパク質が結合したヌクレオソームの立体構造や物理化学的性質とその機能を解析する。さらに、クロマチンリモデリングの中間体として形成されるオーバーラッピングダイヌクレオソームについても立体構造や物理化学的性質、生理学的機能を解析する。 さらに、ヌクレオソーム中の配列を転写因子が認識するメカニズムを明らかにするために、転写因子の結合配列を含むヌクレオソームを再構成し、転写因子が結合したヌクレオソーム複合体の立体構造や、認識配列のヌクレオソーム中の位置による転写因子結合の制御について解析する。 また、これまでに我々は、ヒトのヒストンバリアントを中心にヌクレオソームの立体構造や物理化学的性質、生理学的機能を明らかにしてきた。一方で、モデル生物や寄生虫等に関しては、そのヌクレオソーム構造の解明が生物学の進展や医療応用に大きな意味合いを持つにも関わらず、研究がなされていない。本年度までに出芽酵母や分裂酵母、マラリア原虫のなどのヒストンの調製方法を確立しており、今後は、モデル生物や寄生虫等のヌクレオソームの立体構造や物理化学的性質、生理学的機能についても研究を推進する。
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Research Products
(30 results)
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[Journal Article] Xeroderma pigmentosum group C protein interacts with histones: regulation by acetylated states of histone H3.2017
Author(s)
Kakumu E, Nakanishi S, Shiratori HM, Kato A, Kobayashi W, Machida S, Yasuda T, Adachi N, Saito N, Ikura T, Kurumizaka H, Kimura H, Yokoi M, Sakai W, Sugasawa K.
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Journal Title
Genes Cells.
Volume: 3
Pages: 310-327
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Acknowledgement Compliant
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[Journal Article] Testis-Specific Histone Variant H3t Gene Is Essential for Entry into Spermatogenesis2017
Author(s)
Ueda J, Harada A, Urahama T, Machida S, Maehara K, Hada M, Makino Y, Nogami J, Horikoshi N, Osakabe A, Taguchi H, Tanaka H, Tachiwana H, Yao T, Yamada M, Iwamoto T, Isotani A, Ikawa M, Tachibana T, Okada Y, Kimura H, Ohkawa Y, Kurumizaka H, Yamagata K.
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Journal Title
Cell Rep.
Volume: 18
Pages: 593-600
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Acknowledgement Compliant
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[Journal Article] Genetically Encoded Probe for Live-Cell Imaging of H4K20 Monomethylation2016
Author(s)
Sato Y, Kujirai T, Arai R, Asakawa H, Ohtsuki C, Horikoshi N, Yamagata K, Ueda J, Nagase T, Haraguchi T, Hiraoka Y, Kimura A, Kurumizaka H, Kimura H.
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Journal Title
J Mol Biol.
Volume: 428
Pages: 3885-3902
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Acknowledgement Compliant
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[Journal Article] The Flexible Ends of CENP-A Nucleosome Are Required for Mitotic Fidelity2016
Author(s)
Roulland Y, Ouararhni K, Naidenov M, Ramos L, Shuaib M, Syed SH, Lone IN, Boopathi R, Fontaine E, Papai G, Tachiwana H, Gautier T, Skoufias D, Padmanabhan K, Bednar J, Kurumizaka H, Schultz P, Angelov D, Hamiche A, Dimitrov S.
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Journal Title
Mol Cell.
Volume: 63
Pages: 674-685
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research / Acknowledgement Compliant
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[Presentation] 染色体の構造基盤2017
Author(s)
胡桃坂 仁志
Organizer
ワークショップ染色体研究の最前線
Place of Presentation
大阪
Year and Date
2017-01-16 – 2017-01-17
Invited
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