2015 Fiscal Year Annual Research Report
シミュレーション計算による動的クロマチンのダイナミクス解析
Project Area | Dynamic chromatin structure and function |
Project/Area Number |
25116003
|
Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
河野 秀俊 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 量子ビーム応用研究センター, 研究主幹 (40291918)
|
Project Period (FY) |
2013-06-28 – 2018-03-31
|
Keywords | ヌクレオソーム / クロマチン / シミュレーション / ヒストン |
Outline of Annual Research Achievements |
真核生物のゲノムDNAは核内にクロマチン構造としてコンパクトに収納されている。しかし、転写、複製、組換えでは、基本構造であるヌクレオソームからDNAが解けたり、ヌクレオソーム自体が一旦破壊され再構築されたりとその構造をダイナミックに変える。生物は、この過程を通して、制御因子などDNA結合タンパク質のアクセスを制御し、DNAの持つ情報を発現している。本計画班では、分子動力学シミュレーションを用い、原子レベルやアミノ酸や塩基をひとかたまりと見た粗視化レベルで、ヌクレオソームやポリヌクレオソームの構造安定性や構造揺らぎなどがクロマチンに及ぼす影響を調べる。これにより、動的なクロマチンと機能発現メカニズムの関係を明らかにする。さらに、計画班の他の実験研究者と共同し、核内でのクロマチン動態とヒストンバリアントや化学修飾の関係を構造安定性や揺らぎなど計算科学的なアプローチにより定量的に明らかにする。 本年度は、H2A, H3 のテールの役割について、全原子分子動力学計算を行い、開発した解析方法(分子本来の揺らぎとアミノ酸の違いから生じる揺らぎの変化を識別する方法)などを用いて、動特性を調べた。結果、H2Aは、他のヒストンと違ってC末にテールを持つが、その役割はよくわかっていない。本シミュレーショから、H2AテールがヌクレオソームのリンカーDNAの開閉に重要な役割を果たしていることが分かった。テールを切断すると、リンカーDNAは開くことが観察されたことなどから、H2AのC末テールがリンカーDNAが閉じた状態を安定化していることが示唆された。また、H3のN末テールのアセチル化は、リンカーDNAを開く傾向にあること、複数のアセチル化はその効果を促進するが、例外的にアセチル化される場所に依存することを見出した。一方、粗視化シミュレーションを行うために、複数のレベルの粗視化モデルを構築し、力場パラメータ決定の計算を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
順調に計算が進んでいる。また、他の計画班との連携も順調である。
|
Strategy for Future Research Activity |
引き続き、モノヌクレオソーム系でのダイナミクス解析、高次クロマチンダイナミクスシミュレーションの実施と解析、シミュレーション計算結果と実験データとの相関解析等を行っていく。特に、博士研究員とともに、ヒストン構成の異なるヌクレオソームがつながったポリヌクレオソームの動態解析を行うため、力場パラメータの妥当性を調べる。また、そのためにFRET実験を行い、種々のヌクレオソームに対してリンカーDNAの動特性を調べる。
|
Research Products
(5 results)