2015 Fiscal Year Annual Research Report
ニューロン・ミクログリア相関による機能的神経回路形成の分子基盤の解明
Project Area | Glial assembly: a new regulatory machinery of brain function and disorders |
Project/Area Number |
25117009
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Research Institution | National Center of Neurology and Psychiatry |
Principal Investigator |
高坂 新一 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 神経研究所, 名誉所長 (50112686)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
一戸 紀孝 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 神経研究所, 部長 (00250598)
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Project Period (FY) |
2013-06-28 – 2018-03-31
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Keywords | ミクログリア / スパイン / マーモセット / ニューロン / 脳発達 / 神経科学 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒトを含む霊長類では、新生児期からシナプスの急速な増大が生じ小児期にピークに達する。その後成人となる過程で神経活動依存的なシナプスの成熟に伴い必要なシナプスだけが残される“シナプス刈り込み”が起こり、成熟脳へと発達する。近年シナプスの形成・成熟にミクログリアが関与していることが示唆されているが、その詳細な機序は明らかにされていない。そこで本研究では明確な刈り込みが観察されるマーモセットを用いて、機能的な神経回路成熟に対するミクログリアの機能とその調節分子の解明を目指している。 我々はこれまでに正常発達マーモセットの発達過程におけるミクログリアの挙動を解析した。抗Iba1抗体を用いた免疫組織化学的解析により、前頭前皮質12野において生後2-3ヶ月齢でミクログリア密度がピークになることを示した。また、細胞内色素注入法によるニューロンの可視化技術と抗Iba1抗体を用いた免疫組織化学的解析との組み合わせにより、ニューロンとミクログリアの形態学的相互作用について詳細に観察を行なった。生後2-3ヶ月齢ではスパイン数もピークになることが示された。生後3ヶ月齢ではブートン状構造のミクログリア突起が多く観察され、ブートン状構造ミクログリア突起と接するスパイン数は生後3ヶ月齢で最大になることを見出した。一方スティック状構造のミクログリア突起と接するスパイン数は生後6ヶ月齢で最大であった。以上の結果から、生後3ヶ月齢と6ヶ月齢ではミクログリアが異なる機能を発揮している可能性が考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
近年注目されているシナプスの形成・成熟へのミクログリアの関与の可能性を、霊長類であるマーモセットを用いて示すことができた。生後発達過程においてマーモセットはヒトと同じシナプス数変動パターンを示すため、マーモセットで得られた知見は機能的神経回路形成を理解する上で極めて重要である。我々はこれまでに、マーモセットは生後3ヶ月齢でスパイン数がピークとなり生後6ヶ月齢では減少することを報告しているが、ミクログリア密度の変化がスパイン数の変化とパラレルであること、生後3ヶ月齢と6ヶ月齢でミクログリアの機能が異なる可能性が示されたことは、神経回路形成のメカニズムを解明する上で大きな進展である。
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Strategy for Future Research Activity |
生後3ヶ月齢と6ヶ月齢のマーモセットではミクログリアが異なる機能を発揮している可能性が示されたため、今後はこれまでに得られているマイクロアレイによる網羅的遺伝子発現解析結果を精査し、ミクログリアの機能・形態の差異やスパインの機能的変化を引き起こす分子を明らかにすることで、ミクログリアによるスパイン刈り込みの分子基盤を明らかにしていく。 また、バルプロ酸暴露による自閉症様モデルマーモセットを用いて、ニューロンやミクログリアの挙動、ニューロン・ミクログリア形態学的相互作用、遺伝子発現変化などの解析を行い、これまでに得られた正常発達マーモセットの結果と比較検討する。
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