2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project Area | Empathic system |
Project/Area Number |
25118003
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
長谷川 壽一 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (30172894)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
橋弥 和秀 九州大学, 大学院人間環境学研究院, 准教授 (20324593)
齋藤 慈子 東京大学, 大学院総合文化研究科, 講師 (00415572)
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Project Period (FY) |
2013-06-28 – 2018-03-31
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Keywords | 共感 / 発達 / 自閉スペクトラム症 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究班の目的は、定型、非定型発達児を対象に、共感性にかかわる諸能力の発達的変化および相互作用を明らかにし、共感性の発達過程を統合的に解明することである。本年度、1つ目の成果は、自閉スペクトラム症児を対象に、昨年度定型発達乳児でおこなった表情伝染の実験を、ワイヤレスEMGを用いて実施したことである。実験の結果、定型発達群も自閉スペクトラム症群も、NeutralからPositiveになる動画をみているときに、NeutralからNegativeになる動画を見ているときよりも口元の筋肉が活動していることがわかった。次に、本研究班が研究の射程の一つにしている「他者理解に基づく認知的共感(同情)」の重要な基盤となる「他者理解」について、新たに案出した「覗き見課題」を実施した。結果、対象児は、見ていることがわかっている条件では利他的にふるまうが、見られていることに気づいていない(対象児は「覗き見」している)条件では利己的にふるまうようなエージェント(パペット)を回避する傾向が明らかになった。 親の養育態度と子どもの共感性の発達の関連について、3-5歳児とその親を対象に調査を行ったところ、権威を示し子どもの行為に対して必要な制限を加えるものの、基本的には子どもの自立を支援するような子育てスタイルである「指導的な子育てスタイル」を取る傾向が強い親の子どもは、社会性の基礎となる能力(他者の視点に立って物事をとらえる力)が高いという結果が得られた。 さらに、渡邊計画班との連携により、以下の研究成果もあげることができた。イヌの祖先種であるオオカミで、霊長類以外の種では観察されていなかった同種他個体からのあくびの伝染を確認することができた。またネコを対象にヒトの視線認知を調べたところ、ネコは自分を見ている人と見ていない人を弁別していることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究班の目的は、定型、非定型発達児を対象に、共感性にかかわる諸能力の発達的変化および相互作用を明らかにし、共感性の発達過程を統合的に解明することであるが、これまで定型発達乳児に加え、自閉スペクトラム症児を対象にした表情伝染、定型発達乳児における他者理解、親の養育態度と共感の発達、イヌ・オオカミおよびネコにおける社会的認知に関する一定の成果を出すことができた。また、次年度の計画における準備状況も下記のとおり順調である。これらの成果より、目的の達成度はおおむね順調と考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度までに得られた研究成果をもとに、ワイヤレスEMGを用いた表情伝染の時間的機序について、自閉スペクトラム症児-定型発達児間の詳細な比較分析を継続して行う。またデータの追加が必要であれば、適宜実験を実施する。表情伝染については、さらに視線・顔向き等を操作した刺激を用いての検討、"neutral→positive" "neutral→negative"のモーフィング画像以外の他の表出刺激(「悲しみ顔」、「無意味な顔面運動」、「身体動作」等)を用いての検討も行う。「誠実性」の認知に関連して、定型発達児を対象に行ってきた「覗き見課題」を、自閉スペクトラム症児を対象に実施する。共感性と表裏一体をなす、他者理解の基盤の一つである、他者意図推論研究について、新たな課題を行う。具体的には、2者インタラクションにおける行為者の意図推論において、参与者間の関係性(仲良し/ケンカ)の情報が考慮されるのか、4-5歳児を対象に実験的に検討する。 研究成果を踏まえ、特に公募班の中尾央先生と協力しつつ、共感性の発達的、および進化的起源について、 "Theory of Mind"や関連性理論等、他者のこころの理解とその起源に関する従来の理論的研究を踏まえながら、共感性研究の軸となるべき理論について体系的に整理する。
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Research Products
(62 results)