2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project Area | Empathic system |
Project/Area Number |
25118007
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Research Institution | Azabu University |
Principal Investigator |
菊水 健史 麻布大学, 獣医学部, 教授 (90302596)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
茂木 一孝 麻布大学, 獣医学部, 准教授 (50347308)
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Project Period (FY) |
2013-06-28 – 2018-03-31
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Keywords | 情動伝染 / オキシトシン / 共感 / 絆 / 帯状回 |
Outline of Annual Research Achievements |
1)情動伝染神経回路と分子の同定:平成26年度は、情動伝染に関わる社会因子同定を目指した。電撃ショックを受けたケージメートを観察すると、観察個体でもすくみ行動を発現するようになった。この際、微細行動解析を実施したところ、すくみ行動がすくみ行動と同調して発現しないこと、個体間の空気流を制限すると情動伝染が減弱すること、から視覚的に情動伝染する可能性が低いことを見出した(駒井班、渡辺班と連携)。さらに視覚情報と聴覚情報を同時提示してもすくみ行動が発現しないことから、嗅覚を介した情動伝染の存在が強く示唆された。
2)発達期オキシトシンの情動伝染機能に及ぼす影響の解析:母子間がオキシトシン分泌に及ぼす影響と、オキシトシンの作用する脳部位の同定を目指した。仔マウス帯状回におけるオキシトシン分泌は母親マウスとの接触頻度と高い相関性を示し、母親からうける皮膚接触が重要であることを見出した。さらにこの時期、帯状回と扁桃体中心核では成獣に比べて高いオキシトシン受容体を発現することを見出した。これらの結果は情動伝染時の脳内活性化部位と一致した。また発達期に帯状回でオキシトシン作用が障害されたマウスでは社会的探索行動の減少、養育行動の減弱が見出された。
3)オキシトシンの共感性に果たす役割の系統発生的役割の解明:ヒトとイヌの絆の関係性がオキシトシンに依存するかを調べた。その結果、オキシトシンと視線を主としたアタッチメント行動とのポジティブ・ループによって促進されるものであることが明らかとなった。このポジティブ・ループはオオカミとでは認められなかったことから、進化の過程でイヌが特異的に獲得したものであることも明らかとなった。このようなヒトとイヌの異種間における生理学的な絆形成の存在は、イヌの優れた社会的能力や共感性を示すものである。本成果はScience誌に掲載され、表紙にも採用された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では3つの課題を設定し、研究を開始した。概ね予定通りの成果を得ることができた。 1)に関しては情動伝染を引き起こす社会刺激の同定を進め、嗅覚系の役割を見出した。平成25年度に見出したマウス情動伝染の回路と刺激処理回路を繋ぐことで、情動伝染を司る神経細胞の同定と、その細胞で機能する分子同定につながると期待される。 2)に関しては、発達期マウスのオキシトシン分泌機構を明らかにした。共感性の評価が遅れているものの、次年度以降には、見出した回路において、オキシトシンによる分子調節機構を明らかにしたい。 3)に関しては、オキシトシンの進化的役割を明らかにする目的で、ヒトーイヌの絆形成を実証した。Science誌に掲載されるなど、予想以上の成果を上げている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では次年度以降、以下3つの課題における下記の目標を設定した。 1)に関しては活性化した神経細胞の可視化マウスを用いた回路を見出し、さらに情動伝染を引き起こす社会刺激の同定に成功してきた。この2つの成果をつなぎ、マウスにおける情動伝染の鍵となる神経細胞の同定、さらにはその神経細胞の分子特性の解明を急ぐ。 2)に関しては、オキシトシンの障害マウスにおける共感性の評価を実施する。さらに1)で明らかにした情動伝染回路における遺伝子発現の変化を網羅的に解析し、発達期の帯状回オキシトシン障害によって生じる脳内分子同定にチャレンジする。 3)に関しては、オキシトシンの進化的役割を明らかにする目的で、オキシトシン遺伝子、オキシトシン受容体遺伝子の多型解析、さらには絆形成や視線行動との関連解析を実施する。
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[Journal Article] IL1RAPL1 knockout mice show spine density decrease, learning deficiency, hyperactivity and reduced anxiety-like behaviours2014
Author(s)
Misato Yasumura, Tomoyuki Yoshida, Maya Yamazaki, Manabu Abe, Rie Natsume, Kouta Kanno, Takeshi Uemura, Keizo Takao, Kenji Sakimura, Takefumi Kikusui, Tsuyoshi Miyakawa & Masayoshi Mishina
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Journal Title
Scientific Reports
Volume: 4
Pages: 6613
DOI
Peer Reviewed
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