2014 Fiscal Year Annual Research Report
こころの時間長・同期・クロックを作り出す認知メカニズムの解明
Project Area | The Science of Mental Time: investigation into the past, present, and future |
Project/Area Number |
25119003
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
村上 郁也 東京大学, 人文社会系研究科, 准教授 (60396166)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
四本 裕子 東京大学, 総合文化研究科, 准教授 (80580927)
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Project Period (FY) |
2013-06-28 – 2018-03-31
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Keywords | 実験系心理学 / 認知科学 |
Outline of Annual Research Achievements |
視覚系において光信号の短時間解析が必須であるような課題遂行の特性が明らかになった。フリッカー視覚刺激の知覚的持続時間が、特定の周波数帯域が含まれる際に伸長することを見出し、うなり周波数モデルに神経回路の引き込み現象を追加したモデルで説明できることをシミュレーションで立証した (Hashimoto & Yotsumoto, 2015)。追跡眼球運動をしながら、眼球運動と同一方向と反対方向の刺激を網膜上で同じ速さになるように加算して同時呈示すると、反対方向の刺激の検出が相対的に促進されることを見出した (Terao, Murakami & Nishida, 2015, J. Vis.)。検出すべき刺激の方位と同方位の刺激が同一線上に同時に並ぶことで促進されるコントラスト検出が、周辺刺激を同心円にして方位を不可視にしたり、マスキングして周辺刺激自体を不可視にしたりしてもなお促進効果をもつことがわかった (Hayashi & Murakami, 2015, J. Vis.)。盲点内部に光を呈示しても不可視であるが、盲点外部に呈示した光照射に応じて起こる短潜時の瞳孔対光反射が、盲点内部に光を同時タイミングで呈示した場合に増強することを発見し、何らかの光受容機構が存在することを立証した (Miyamoto & Murakami, 2015, Sci. Rep.)。また、脳回路の時間的変遷に関して成果が得られた。高齢群において視覚の知覚学習に伴い白質に構造的変化が生じることが、脳画像の拡散テンソル解析でわかった (Yotsumoto et al., 2014, Nat. Commun.)。初期視覚領野の面積が加齢に伴い減少し、領野の面積と視覚の知覚学習能力に相関があることがわかった (Chang, Yotsumoto et al., 2015, Neurobiol. Aging)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、交付申請書の研究の目的に記載した目的の達成に向けて、交付申請書の研究実施計画に記載した複数の研究プロジェクト計画を同時並行にて進め、概ね研究実施計画通りに進行させることができ、そのうち多数の研究テーマに関して対外発表に到ることができた。コントラスト検出閾測定、瞳孔計測、眼球運動計測、MRI (磁気共鳴画像法) 、DTI (拡散テンソル画像法)、など、個々の研究者のノウハウを最大限に活用しながら視覚心理物理学と認知神経科学の技術を駆使することで、本計画研究を進めることができた。平成26年度補助事業の結実としての査読有り国際論文は6件で、研究期間の2ヶ年目の研究成果が国際論文の形でこのように成果公開できたことは、一定の達成度が得られたことの証左となる。またその掲載誌として、インパクトファクター11.47である『Nature Communications』(2014年Journal Citation Reports調べ) に1件、インパクトファクター5.578である『Scientific Reports』 (同上) に1件、インパクトファクター5.013である『Neurobiology of Aging』 (同上) に1件、の掲載がかなったこと、を鑑みれば、関連分野への波及効果に関して一定の達成度が見られたというように自己評価できる。学会発表に関しても、国際学会発表6件、国内学会発表3件を行ったこと、また国内外いずれの発表の場も当該専門領域での最高水準・最大規模の学会 (Vision Sciences Society など) であったことは、一定の達成度が得られたことの証左となる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、対外発表という目に見える形で一定の達成が得られた一方で、同時並行して進めている複数研究プロジェクトのうちでは、さらなる発展実験が必要なために、いまだ研究成果の発表に到っていないものもあることが課題である。今後は、本年度の研究内容を総括してあぶり出した課題を克服し発展実験を実施して研究成果につなげるために、本年度の路線を踏襲しながら新たな実験研究を行っていく。視覚的注意において、焦点的注意の滞留時間と位置に影響を受けて、知覚的持続時間が変わる可能性について心理物理学的に調べ、外発的注意と内発的注意の両面に関して、注意位置と非注意位置に対して反応時間がどのように異なるかを検討する。視覚運動のある刺激の知覚的持続時間が伸長する現象について、刺激運動と知覚運動のいずれが決定要因になっているのかを調べる。視覚と聴覚のマルチモーダル実験を知覚的持続時間に関して遂行し、特定の周波数帯域を含むフリッカー刺激等を用いた際の変容に類似点と相違点がどのようであるか、また課題遂行中の脳活動との関係について調べる。時間の把握は秒未満と秒以上で異なる処理機構によって行われる可能性が指摘されているが、知覚的持続時間の錯覚が、異なる時間幅においてどのように生じるかを行動実験で調べていく。機能的脳計測の手法を用いて、知覚的持続時間に関与する脳領域を同定し、時間的文脈への依存性が知覚および脳活動で見られるかを検討する。研究を遂行する上で、本年度と同様に博士研究員の雇用をして研究推進の原動力とするほか、実験参加者への謝金の支出や必要な研究施設の借上げなどをして、安定的な心理物理学実験および認知神経科学実験の環境を維持する。
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[Journal Article] Reduction in the retinotopic early visual cortex with normal aging and magnitude of perceptual learning2015
Author(s)
Chang, L.H., Yotsumoto, Y., Salat, D.H., Andersen, G.J., Watanabe, T., & Sasaki, Y.
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Journal Title
Neurobiology of Aging
Volume: 36
Pages: 315-322
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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[Journal Article] White matter in the older brain is more plastic than the younger brain2014
Author(s)
Yotsumoto, Y., Chang, L.H., Ni, R., Pierce, R., Andersen, G.J., Watanabe, T., & Sasaki, Y.
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Journal Title
Nature Communications
Volume: 5
Pages: 6504,1-8
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research / Acknowledgement Compliant
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