2016 Fiscal Year Annual Research Report
Project Area | The Science of Mental Time: investigation into the past, present, and future |
Project/Area Number |
25119008
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
平田 聡 京都大学, 野生動物研究センター, 教授 (80396225)
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Project Period (FY) |
2013-06-28 – 2018-03-31
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Keywords | 認知科学 / 実験心理学 / 進化 |
Outline of Annual Research Achievements |
われわれ人間は、はるか昔のことに思いをはせ、遠い将来のことを想像することができる。心の中で、過去から未来まで時間を移動しているのである。近年、こうしたことについて、「心的時間旅行(Mental Time Travel)」という造語のもと盛んに議論がなされるようになってきた。一部の研究者は、過去を想起したり未来を計画したりする心的時間旅行の能力はヒトに特有であり、ヒト以外の動物には備わっていないと主張する。しかし、ヒト以外の動物が本当に心的時間旅行をおこなわないのか、実証的なデータは乏しく、主張は推測の域を出ない。そこで、ヒトに近年なチンパンジーとボノボを対象として、かれらの時間感覚と心的時間旅行について調べる実験的研究を実施した。前年度までに準備した課題設定をもとに、チンパンジーの時間割引の特性を調べる課題をタッチパネルを用いた認知課題としておこなった。心的な時間割引率に関する定量的なデータがヒト以外の霊長類で本研究で初めて得られようとしているところである。また、自己認識に与える遅延時間の影響を調べて研究について、得られた結果を解析して論文にまとめて投稿した。1秒から4秒の範囲で遅延した自己の映像や、録画した2週間以上前の自己の映像、および他者の映像を見た際のチンパンジーの反応を探る研究であり、条件間でのチンパンジーの反応の違いを検証した結果、チンパンジーもヒト4歳児と同等に最大4秒の遅延時間を挟んだ自己像を正しく自己と認識していることが示唆された。チンパンジーも、ヒトの健常者と同様に、過去・現在・未来を通した自己概念の萌芽を持つことが示唆される結果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
時間割引はヒトの心理学・経済学等で重要な概念であり、ヒトのこころの時間が持つ大きな特徴のひとつである。ヒト以外の動物における時間割引についてはラットを対象とした実験心理学的な研究がおこなわれてきたが、ヒト以外の霊長類で同様の研究はこれまでおこなわれてこなかった。本研究により、チンパンジーを対象にした時間割引をタッチパネル課題によって厳密に検討するパラダイムを構築することができたことは大きな進歩であると判断できる。また、自己認識においても、過去・現在・未来を通した自己の認識についてはヒトに特有のものであると従来考えられてきたが、そうした解釈の再考を迫る実験結果を本課題におけるチンパンジーを対象とした研究において提示することができた。その他の記憶課題や未来計画に関する研究も順調に推移している。これらのことから、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に成果を上げたエピソード様記憶に関する更に進展させるとともに、本年度に成果の土台ができた時間割引に関する研究、自己認識と時間に関する研究等を粛々と計画通りに実施する。研究計画の大きな変更が必要となる事態は生じておらず、また、研究を遂行する上での問題点もこれまでのところは存在しない。概ね当初の予定通り推進する方策である。
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Research Products
(10 results)