2015 Fiscal Year Annual Research Report
スパースモデリングが拓く太陽系博物学:ハヤブサ後の小惑星探査戦略の創出
Project Area | Initiative for High-Dimensional Data-Driven Science through Deepening of Sparse Modeling |
Project/Area Number |
25120006
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
宮本 英昭 東京大学, 総合研究博物館, 准教授 (00312992)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
杉田 精司 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (80313203)
栗谷 豪 北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (80397900)
|
Project Period (FY) |
2013-06-28 – 2018-03-31
|
Keywords | 隕石 / 小惑星 / 探査 / スパースモデリング / 反射スペクトル / 全岩組成 / データベース |
Outline of Annual Research Achievements |
当初計画通り、課題(1)元素組成データベースの構築、課題(2)隕石・小惑星のスペクトル・データベース構築、課題(3)データベース間の比較、に関する研究を行った。 (1)に関して、クラスター解析により、従来の岩石学・鉱物学による分類と調和的なクラスター化が可能であることを明らかにし、主成分分析の負荷行列から本質的な元素の抽出を行い、主成分の意味についても隕石学的な解釈を与えた。この成果を国内外の学会で発表し、代表的な国際誌の論文1本も受理された。またハンドヘルドXRFによる隕石の全岩組成の測定を行い、データベースの充実を図っており、こちらについても学会発表を行った。 (2)に関して、小惑星、隕石、造岩鉱物の0.4~2.5 μmの波長帯における反射スペクトルデータベースを構築した。小惑星や隕石の主要構成鉱物である輝石の反射スペクトル分解に交換モンテカルロ法を用い、局所解に陥ることなく分解できることを示した。これによって、従来の反射スペクトル分解に潜在していた、解析結果の恣意性を大幅に減少することに成功した。さらに吸収中心と鉱物に含まれる元素組成の相関を見出した。このことを学会発表し、また国際誌にも論文が1本受理された。 (3)に関して、小惑星と隕石の反射スペクトルをそれぞれ主成分分析し、主成分空間上で比較することで、対応する小惑星と隕石の組の抽出を行った。この解析の予備的な結果を学会発表した。またアルベド(反射能)を追加することで、アルベドと反射スペクトルの間に相関性があることを見出した。これによってスペクトルによる分類精度の改善、さらに反射スペクトルに潜在する物理変数の抽出を行える可能性を示した。このことを国際学会で発表した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究は(1)隕石の元素組成データベースの構築、(2)反射スペクトル・データベースの構築、(3)それらのスパースモデリングによる対比、という3つの課題を掲げている。 (1)については既に構築は修了しており、分析数5,000以上、試料数2,000以上を含む世界最大のデータベースとなった。この中で信頼度の高い値について主成分分析とクラスター解析を通じた検討を行い、過去の知見に基づく分類をうまく数理的・客観的に再現できるを確かめ、国際誌に公表した。(2)についても小惑星のスペクトル約400個、隕石約300個をデータベース化している。さらに特に単斜輝石を対象に交換モンテカルロ法を用いて反射スペクトルの自動分解が可能であることを示し、国際誌に公表した。(3)についても初期的な検討を進めており、特に隕石スペクトルの主成分分析とクラスター解析から、分化隕石と始原的隕石とで明瞭に分別できることがわかった。 こうしたことから、3課題ともに当初の計画以上のペースで進展していると言える。
|
Strategy for Future Research Activity |
課題(1)の主要部分は既にほぼ終了しているが、本研究で開発した手法を計測誤差のあるラボ間バイアスを超えて適用できるかは、まだ未確認の部分がある。そこで不確定性を含むデータベースの統計的取り扱い方を検討するとともに、ハンドヘルドXRFを用いた迅速かつ網羅的な計測を行うことで、データベースの拡充も検討する。 課題(2)について、反射スペクトルデータベースの構築はほぼ終了しており、惑星科学的に最も重要な0.4~2.5μmの波長帯における主要な反射スペクトルの取得は完了している。一方、2.5~3 μmの波長帯には含水鉱物の吸収があるため、今後C型(炭素質)小惑星の解析を行う際には、3 μmまで波長域を伸ばしたデータベースの構築を検討する。また交換モンテカルロ法をさらに様々な造岩鉱物に適用することを検討する。 課題(3)について、小惑星と隕石の反射スペクトルの主成分空間における対応関係を調べることで、主成分に隕石学的な解釈を与えることを目指す。また小惑星と隕石の対応する組、対応しない組を明らかにすることで、従来の反射スペクトルに依存する分類法の適用限界を調べる。その上で、反射スペクトルとアルベドを組み合わせた分類法を検討する。一方、情報科学グループ(C01)と協力して、隕石の反射スペクトルと元素組成のマッチングを検討する。
|
Research Products
(17 results)
-
-
-
[Journal Article] Preflight calibration test results for optical navigation camera telescope (ONC-T) onboard the Hayabusa2 spacecraft2016
Author(s)
[2]Kameda, S., H. Suzuki, T. Takamatsu, Y. Cho, T. Yasuda, M. Yamada, H. Sawada, R. Honda, T. Morota, C. Honda, M. Sato, K. Shibasaki, S. Ikezawa, S. Sugita
-
Journal Title
Space Sci. Rev
Volume: in press
Pages: in press
DOI
Peer Reviewed
-
[Journal Article] High-precision potassium measurements using laser-induced breakdown spectroscopy under high vacuum conditions for in situ K-Ar dating of planetary surfaces2015
Author(s)
[1]Cho, Y., S. Sugita, S. Kameda, Y. N. Miura, K. Ishibashi, S. Ohno, S. Kamata, T. Arai, T. Morota, N. Namiki and T. Matsui
-
Journal Title
Spectrochimica Acta PartB
Volume: 106
Pages: 28-35
DOI
Peer Reviewed
-
[Journal Article] Detectability of hydrous minerals using ONC-T camera onboard the Hayabusa-2 spacecraft.2015
Author(s)
[3]Kameda, S., H. Suzuki, Y. Cho, S. Koga, M. Yamada, T. Nakamura, T. Hiroi, H. Sawada, R. Honda, T. Morota, C. Honda, A. Takei, K. Takamatsu, Y. Okumura, M. Sato, T. Yasuda, K. Shibasaki, S. Ikezawa, S. Sugita
-
Journal Title
Adv. Space Res.
Volume: 56
Pages: 1519-1524
DOI
Peer Reviewed
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
[Presentation] 月惑星探査における年代その場計測を目指した開発2015
Author(s)
[1]長 勇一郎, 芝崎 和夫, 梅山 未紗子, 大石 峻裕, 亀田 真吾, 三浦 弥生, 吉岡 和夫, 齋藤 義文, 横田 勝一郎, 笠原 慧, 吉光 徹雄, 岡崎 隆司, 大竹 真紀子, 諸田 智克, 古賀 すみれ, 杉田 精司,
Organizer
日本地球惑星科学連合2015年大会
Place of Presentation
幕張メッセ(千葉県千葉市)
Year and Date
2015-05-24 – 2015-05-28