2015 Fiscal Year Annual Research Report
スパースモデリングを用いた超巨大ブラックホールの直接撮像
Project Area | Initiative for High-Dimensional Data-Driven Science through Deepening of Sparse Modeling |
Project/Area Number |
25120007
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Research Institution | National Astronomical Observatory of Japan |
Principal Investigator |
本間 希樹 国立天文台, 水沢VLBI観測所, 教授 (20332166)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
加藤 太一 京都大学, 理学研究科, 助教 (20283591)
植村 誠 広島大学, 宇宙科学センター, 准教授 (50403514)
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Project Period (FY) |
2013-06-28 – 2018-03-31
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Keywords | ブラックホール / 電波天文学 / 干渉計 / イメージング / 疎性モデリング / サブミリ波 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、スパースモデリングの手法を電波干渉計のイメージング解析に適用して超解像技法を実現し、それを基にブラックホールの直接撮像を実現することを目指している。第三年次にあたる本年度は、これまで主に調査を進めてきたM87に加えて、もう一つの最重要天体であるSgr A*について具体的な検討を進めた。特に、Sgr A*の場合はM87と異なり星間散乱の影響が大きいので、これの扱いについて検討した。その結果、現在知られている星間散乱のカーネルを用いて補正を行うことで、LASSOの手法と合わせてブラックホールシャドウの観測が可能なことが示された。また、スパースモデリング手法をさらに向上させるため、closure位相を観測量とする非線形な問題に適用可能なイメージングコード完成させ、その一部を論文として投稿した。 また、ミリ波VLBIによるブラックホール直接撮像に向けた準備研究として、Sgr A*の1.3mmのVLBI観測により初めてブラックホール近傍の磁場構造の検出に成功し、国際的な共同研究成果として発表した。また、M87についても3mm帯のVLBI観測結果について成果を出版するなど、巨大ブラックホールの観測的研究に関する成果を出版した。 また、京都大、広島大の研究者が中心となって、スパースモデリングのより広範囲な天文学分野への応用も並行して進めた。京都大においては天体の光度曲線観測に関する研究を継続し、特に2015年6月に26年ぶりにアウトバーストを示したブラックホール連星V404 Cygにおいて、大振幅かつ短時間の可視光変動の検出に成功した。また、広島大においては、連星系スペクトルの輝線プロファイルを用いて連星系降着円盤の2次元マップを再構成する「ドップラートモグラフィー」の手法を開発して成果を出版するとともに、Ia型超新星の極大等級を決める変数について、LASSOを用いたデータ駆動科学的手法で変数選択が可能であることを実証した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画で設定した3課題について達成度を見ると、1つ目の課題であるスパースモデリングによるイメージング技法については、closure位相を用いた非線形手法が完成したことにより、当初の課題が十二分に達成されている。また、2つ目の課題であるミリ波VLBIによるブラックホール観測の推進については、3局による試験観測データが進められるとともに、これまで国際協力で進めてきたALMAを含むVLBIの2017年の観測開始が決定するなど、実観測へ向けた準備が順調に進んでいる。また、3つ目の課題であるブラックホール研究ついても、Sgr A*のブラックホール近傍で磁場構造を検出した他、巨大ブラックホール以外でも連星ブラックホールに関する研究で大きな成果があがっている。また、今年度から4つ目の課題として、ブラックホール以外に天文学全般にスパースモデリングを適用する、「スパースモデリング天文学の開拓」を設定しており、これに関しても、超新星や連星系降着円場の研究で興味深い成果が出ている。これらの状況から現在の達成度について、「(2)おおむね順調に進展している」と判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
2017年春にいよいよALMAを含むミリ波VLBIが観測を開始するため、次の一年の間に、スパースモデリングによるイメージングがパイプライン処理できる体制を整える必要がある。このため次年度中に、実データとスパースモデリング処理のインターフェースを完成させ、データが手に入り次第迅速に成果が出せる体制を構築する。このため、本年度は特に研究グループ内の打合せと進捗管理を綿密に行う予定である。 また、スパースモデリングのより広範な天文学分野へ応用する活動も継続し、京都大、広島大の研究者を中心に関連する研究をさらに進める。また、日本天文学会でスパースモデリングに関する企画セッションを開催し、より多くの研究者を巻き込んだ研究展開も目指す。
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Research Products
(17 results)