2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project Area | Comparative Studies of Ancient American Civilizations |
Project/Area Number |
26101004
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
坂井 正人 山形大学, 人文学部, 教授 (50292397)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡辺 洋一 山形大学, 人文学部, 教授 (10137490)
伊藤 晶文 山形大学, 人文学部, 准教授 (40381149)
瀧上 舞 山形大学, 人文学部, 学術研究員 (50720942)
松井 敏也 筑波大学, 芸術系, 准教授 (60306074)
江田 真毅 北海道大学, 学内共同利用施設等, 講師 (60452546)
千葉 清史 山形大学, 人文学部, 准教授 (60646090)
本多 薫 山形大学, 人文学部, 教授 (90312719)
松本 雄一 山形大学, 人文学部, 准教授 (90644550)
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Project Period (FY) |
2014-06-27 – 2019-03-31
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Keywords | 世界遺産 / ペルー / 地上絵 / 村落遺跡 / 社会動態 / 学際的研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
「村落遺跡に関する総合的研究」地上絵が集中的に描かれたナスカ台地のすぐ北に広がるインヘニオ谷中・上流域において踏査を行った。その結果、54の遺跡を登録するとともに、平成27年以降に実施する発掘調査に適した遺跡として、ベンティーヤ遺跡を選定した。この遺跡には、地上絵が集中的に描かれたナスカ前期(前100~後500年)だけでなく、その前後の時期の考古遺物と遺構を確認することができた。また、ナスカ台地付近の墓の分布を把握するとともに、墓の屋根材である木材サンプルを日本に輸出した。 「ナスカの地上絵の学際的研究」 ラクダ科動物の地上絵(17点)に関する認知心理学的な研究を行った。これらの地上絵は近距離から人が対面してわかるという特徴を備えている上、それぞれに対応したもっともふさわしい観察場所が個別に複数ある点が判明した。さらに村落遺跡から、これらの観察地点へのアクセスは特に制限されていないので、多くの人々が自由に地上絵に近づいて観察することができたと考えられる。パラカス期は神官たちが社会の中心を占めていたと考えられてきたが、地上絵へのアクセスに関しては神官たちによる直接的なコントロールが及ばなかったと考えられる。 また直線の地上絵を、情報科学におけるネットワーク構造の観点から分析したところ、歩行路である可能性が極めて高い地上絵を同定することができた。共伴する土器の分析から、これらの地上絵は主に10~16世紀に利用されたことが判明した。さらに、視覚情報処理の視点から歩行実験を行ったところ、直線の地上絵は歩行する際のガイドとして機能したという見通しが得られた。 保存科学・環境地理学の視点から地上絵を保護するために、現地調査を実施した。また倫理的な側面から地上絵の保護について検討をはじめた。そして、ペルー文化省から依頼された「地上絵の保護計画」を策定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書に記載した「研究実施計画(平成26年度)」では、「村落遺跡に関する総合的研究」と「ナスカの地上絵の学際的研究」という2つの研究課題を挙げた。前者では(1)ナスカ台地付近の村落遺跡の分布と変遷の把握、(2)平成27年度以降に発掘する村落遺跡の選定、(3)墓地の表面調査の実施、という3つの課題があった。一方、後者では学際的な研究によって、(1)地上絵が、当時のイデオロギーや権力関係とどのような関係にあったのかについて解明するとともに、(2)地上絵の保存活動を推進するという2つの課題があった。 「村落遺跡に関する総合的研究」については、(1)ナスカ台地付近で54の遺跡(分布と時期)を新たに登録し、(2)来年度以降の発掘地としてベンティーヤ遺跡を選定し、(3)墓地の屋根材である木材サンプルを日本に輸出したことから、おおむね予定通りに進んだことがわかる。一方、「ナスカの地上絵の学際的研究」についても、(1)パラカス期は神官たちが社会の中心を占めていたと考えられてきたが、地上絵へのアクセスに関しては神官たちによる直接的なコントロールが及ばなかったことが地上絵に関する学際的な研究によって明らかとなった。また、(2)保存科学・環境地理学・哲学の専門家による、地上絵の保護のための調査・研究を開始するとともに、ペルー文化省から依頼された地上絵の保護計画を策定したことは、地上絵の保存活動の推進に寄与したと言えよう。
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Strategy for Future Research Activity |
「村落遺跡に関する総合的研究」 昨年度の調査によって発掘地として選定した村落遺跡ベンティーヤにおいて、発掘を含む考古学的調査を実施する。この遺跡の空間利用と時期の関係について検討するために、地表に分布する土器を採取・分析する。また層位発掘によって、居住用遺構、基壇状建築物と考えられる建築物の時期と機能を検討することによって、この村落遺跡の性格を考察する。またベンティーヤ遺跡が位置するインヘニオ谷において、今年度はこの谷の下流部における村落遺跡の分布調査を実施する。 「ナスカの地上絵の学際的研究」 祭祀空間としての地上絵の動態を把握するために、昨年度に引き続き、考古学、認知心理学、情報科学による学際的な研究を実施する。また、地上絵の保存活動や社会貢献のために、保存科学、環境地理学、哲学との学際的な研究を継続する。こうした成果を社会に還元するために、地上絵の保護活動を推進するための体制を、ペルー文化省と協力して確立する。
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Research Products
(19 results)