2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project Area | pi-System Figuration: Control of Electron and Structural Dynamism for Innovative Functions |
Project/Area Number |
26102002
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
櫻井 英博 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (00262147)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
東林 修平 分子科学研究所, 協奏分子システム研究センター, 助教 (30338264)
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Project Period (FY) |
2014-06-27 – 2019-03-31
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Keywords | バッキーボウル / スマネン / 触媒反応 / カラム状積層構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、フラーレン部分骨格であるお椀型π分子「バッキーボウル」の独特な特徴である、(1)お椀構造に由来するカラム状積層構造を容易に形成し、電気伝導性などの物性を発現する、(2)おわん反転などの動的挙動により、π系の3次元構造や双極子モーメントなどの物性のダイナミックな変化を誘起する、(3)フラーレンなどの同様のπ曲面との間に構造特異的な相互作用や超低摩擦特性が観測される、などの現象を活用し、バッキーボウルの自在合成法の開発を通じて、歪みπ分子造形イノベーションを目指すものである。今年度はその中から、[1]スマネンおよびその誘導体の自在合成および大量供給手法の開発、[2]他の骨格を有するバッキーボウルおよびヘテロバッキーボウルの合成研究、[3]バッキーボウルの特殊環境下における挙動の観測と物性評価、の3項目を中心に検討を行った。 今年度の主な成果としては、まずスマネンの大量合成法の開発については、これまで毒性の高い有機スズ化合物を用いて、化学量論量の銅錯体を用いて行っていたノルボルナジエンの3量化反応の改善について検討を行い、スズに代えてより程度9艇で汎用性の高い誘起素ホウ素化合物に変換可能であること、および銅錯体を触媒量に低減できる可能性があることを明らかにした。 スマネン誘導体の研究については、スマネンのベンジル位をすべてオキソ化したスマネントリオンについて今回初めてX線単結晶構造解析に成功し、スマネン誘導体では初めて、お椀構造が完全に重なるエクリプスド型積層構造を示すことを明らかにした。またスマネントリオンの還元反応を行い、2電子還元過程までは可逆であり、電子受容体として用いられるフラーレンに匹敵する安定なプロセスであること、2電子還元体が可視/近赤外領域まで幅広い吸収を有していることなどを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
分子科学研究所から大阪大学への異動、研究室の引越し等あったが、研究がストップすることなく、当初の計画の研究だけでなく、新たな研究もスタートしていることから、概ね順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
スマネンの大量供給手法の開発については、現在行っている銅触媒の検討に加えて、キラルケトンを出発物質とする酸触媒による環化三量化反応の開発にも新たに着手する。また現在企業との協力で市販化についても検討する。 他のバッキーボウル合成については、引き続き含窒素ヘテロバッキーボウルの合成と誘導化を検討するほか、今年度はスマネンの外縁部だけでなく内側の炭素の誘導化にも挑戦し、軸官能基を有する新たな化合物軍の導出を試みる。 スマネンの特殊環境下における反応性、物性評価については、阪大極限センターの清水研究室の協力も得て、高圧条件におけるスマネン分子の挙動の観測をスタートさせる予定である。
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Research Products
(6 results)