2017 Fiscal Year Annual Research Report
Project Area | pi-System Figuration: Control of Electron and Structural Dynamism for Innovative Functions |
Project/Area Number |
26102002
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
櫻井 英博 大阪大学, 工学研究科, 教授 (00262147)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
東林 修平 慶應義塾大学, 薬学部(芝共立), 准教授 (30338264)
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Project Period (FY) |
2014-07-10 – 2019-03-31
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Keywords | スマネン / カルボカチオン / キノイド構造 / シングレットフィッション / 窒素ドープ / ESIPT / AIEE |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、フラーレン部分骨格であるおわん型π分子「バッキーボウル」の独特な特徴である、1)おわん構造に由来するカラム状積層構造を形成し、伝導特性等の物性を発現する(intrinsic-π)、おわん反転などの動的挙動により、π系の三次元構造や、双極子モーメントなどの物性のダイナミックな変化を誘起する(Dynamic-π)、3)フラーレンなどの同様なπ曲面との間に構造特異的な相互作用や超低摩擦特性が観測される(Elastic-π)などの現象を活用し、バッキーボウルの自在合成法の開発を通じて、湾曲π造形イノベーションを目指すものである。 29年度の主な成果は2点である。第1は、28年度に初めて合成に成功したスマネニルトリカチオン種およびその関連化合物の研究である。当初予想していたように、スマネニルトリカチオンは高い酸化力を有しているが、特に2電子酸化された化学種が極めてユニークな性質を有しており、固体状態ではカラムナー構造の独特の結晶構造を得るのに対し、溶液状態では全く観測できず、速やかにもう1電子受け取るか、求核剤との反応が著しく早い、極めて活性の高い化学種であることがわかった。さらに、この2電子酸化体由来で得られるキノイド種がシングレットフィッション分子として期待が持てる骨格であることもわかったので、30年度に研究を進める予定である。 第2はスマネンの炭素のうちの3箇所を窒素でドープしたトリアザスマネンの関する研究で、無置換体についてはこれまでキラル体の結晶構造のみが得られており、それはキラリティに基づく螺旋構造を形成していたが、今回ラセミ体の結晶が得られ、それがスマネンと同じ、同一方向へ向いた垂直カラムナー構造となることがわかった。さらに、ヒドロキシフェニル基で置換したトリアザスマネンが、固体状態で励起状態水素移動に基づく発光挙動を示す(ESIPT-AIEE)ことも明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画項目ごとに進捗の良し悪しはあるものの、概ね期待通りに計画は進行している。さらに、当初計画していなかった系で、固体状態の動的挙動に関する非常に興味深い現象が得られつつあるので(平成30年度に報告予定)、トータルでは順調であるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
30年度は最終年度にあたるため、これまで本新学術領域研究で進めてきたスマネンおよびそれに関連した研究の総括を行う。具体的には、(1)スマネンのバルク合成に関する研究、(2)ヘキサ置換スマネンに関する研究、(3)スマネニルカチオンおよびその関連化合物の研究、(4)スマネン内部炭素の官能化に関する研究、(5)トリアザスマネンおよび他のヘテロバッキーボウル合成、他の骨格を有するバッキーボウル合成に関する研究、について、それぞれ成果をまとめることに注力する。さらに最終年度に新たに進める研究として、(6)シングレットフィッション分子の合成、(7)単結晶ー単結晶相転移を示す分子のデザインと可逆的ダイナミクス、の2つの研究を実施する。
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Research Products
(31 results)