2017 Fiscal Year Annual Research Report
Project Area | pi-System Figuration: Control of Electron and Structural Dynamism for Innovative Functions |
Project/Area Number |
26102005
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
鈴木 修一 大阪大学, 基礎工学研究科, 准教授 (80433291)
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Project Period (FY) |
2014-07-10 – 2019-03-31
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Keywords | 開殻分子 / π造形科学 / π電子系 / ラジカルカチオン / 高スピン分子 / 酸化還元特性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、開殻pi電子系分子を自在に創製する「自在開殻pi造形」の確立とその過程で合成される新奇開殻pi電子系の機能開拓を目的としている。 1.閉殻構造をもつ分子群を足場とした開殻piユニット直接連結型金属錯体による開殻pi造形:開殻piユニットであるニトロニルニトロキシド(NN) が直接配位した各種金属錯体に関して、前年度より検討してきた閉殻構造をもつホスフィン配位子に続き、N-ヘテロサイクリックカルベンやフェナントロリンを配位子とした誘導体の迅速合成法を開発した。各錯体の電気化学的挙動を精査することにより、 NN 部の酸化電位が金属イオンにより大幅に変調可能であることを見出した。 2. NN 直接連結型金属錯体を鍵とした芳香環への開殻piユニット直接導入による開殻pi造形:1 で示した錯体のうち、N-ヘテロサイクリックカルベンやジホスフィンの銅(I)錯体が芳香環への NN 直接導入化に用いられることが分かった。これら銅(I)錯体の反応は申請者がこれまで開発してきた金(I)錯体よりも反応速度が速いことが分かった。また、無置換 NN 体を用いて、強塩基の導入後、ヨウ化アリールと亜鉛錯体と触媒存在化で反応させることで対応する NN 導入pi電子系分子が得られることが分かった。 3. マルチラジカルpiシステムの創製:開殻pi電子系を種々組み合わせることで、複数の電子スピンをもつ安定マルチラジカルpiシステムの創製を検討した。トリフェニルアミンラジカルカチオンの連結様式(トポロジー)を考慮することで、大きなスピン間相互作用をもつ基底一重項種、相互作用が弱い基底一重項種、基底三重項種のジラジカルカチオンを単離・結晶化することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度まで用いていた金(I)を利用するカップリング法だけでなく、銅(I)およぶ亜鉛錯体を利用した系に発展できたことは、自在開殻pi造形法の発展に大きく寄与する。また、従来では不安定と考えられてきた開殻分子が、種々の元素を組み合わせることで、空気中単離可能なほど熱的に安定であることを見出しつつあり、予期せぬ現象の開拓が見込まれる。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度までに確立してきた開殻pi造型法のさらなる革新と、本手法を用いた領域内外の協働研究をさらに検討する。 1. 閉殻構造をもつ分子群を足場とした開殻piユニット直接連結型金属錯体による開殻pi造形:酸化還元特性を利用することで磁性と色、集合構造を同時に制御できると考え、現在、平面性の高いpi電子系を配位子とする系の開拓を早急に進めている。 2. NN 直接連結型金属錯体を鍵とした芳香環への開殻piユニット直接導入による開殻pi造形:現在のカップリング方法はすべて活性種である金属錯体化に前処理を必要としているが、最近前処理無しに反応が進行する方法を見出しつつある。本法を含めて、芳香環への直接導入法をさらに推し進めるほか、開殻分子へ二つ、三つ目のスピン源導入を検討する。
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