2014 Fiscal Year Annual Research Report
強誘電性・強弾性機能の発現を目指したソフトπ造形システム
Project Area | pi-System Figuration: Control of Electron and Structural Dynamism for Innovative Functions |
Project/Area Number |
26102007
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
芥川 智行 東北大学, 多元物質科学研究所, 教授 (60271631)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
帯刀 陽子 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 講師 (30435763)
森 寛敏 お茶の水女子大学, 大学院人間文化創成科学研究科, 准教授 (90501825)
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Project Period (FY) |
2014-06-27 – 2019-03-31
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Keywords | 強誘電性 / ピレン / 発光 / エキシマー / 水素結合 / アルキルアミド / ディスコチック液晶 / 誘電率 |
Outline of Annual Research Achievements |
π電子が拡張したピレンは、エキシマー発光として知られる濃度に依存した蛍光変化を示す。本研究では、ピレンにテトラデシルアミド基を導入した新規化合物1の合成を行い、液晶性・誘電物性・溶液中での会合挙動・光物性・ゲル化能に関する検討を行った。結果、分子1の高い分子会合能と多重機能性が明らかとなった。示差走査熱量測定(DSC)の結果から、300 K付近でピークが出現し、またPOM観測およびXRD測定から、これが固相-Colh相転移である事が確認された。アルキルアミド基間の分子間水素結合によるカラムナー構造の形成が示された。誘電率の温度―周波数依存の誘電率では、固相-Colh相転移付近に大きな変化は見られなかったが、P-E曲線では393 K以上の温度域でヒステリシスが出現し、強誘電性が確認された。光物性は、ピレン同様にな低濃度下におけるモノマー発光と高濃度下におけるエキシマー発光が観測され、エキシマー発光は無置換ピレンよりも1000倍薄い濃度で生じ、アルキルアミド基間の分子間水素結合による会合体の存在が示された。分子1は、ヘキサン・シクロヘキサン・ベンゼン・トルエンで、いずれも透明で黄緑色のオルガノゲルを形成した。また、シクロヘキサンゲルのPOM観測では、リオトロピック液晶の形成が確認できた。さらに、分子1のスピンコート膜は、ナノファイバーの形成を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
分子集合体中の分子運動と強誘電物性の発現とその多重機能化に関して、新規な拡張π電子系化合物の開発を目的とした物質開発を中心に研究を実施した。4本のアルキルアミド基を導入してピレン誘導体に関しては種々の測定から、オルガノゲル形成、ディスコチック液晶相発現、ナノファイバー形成、モノマー・πオリゴマー発光、強誘電性および電流スイッチング現象を示す多彩な分子集合体の形成が可能で、且つ強誘電性~発光特性~電子輸送特性が共存する今日意味深い多重機能性材料を創製した。これは、当初目的としている新規な動的物性システムの概念に基づく系を実現できたと言え、研究スタート時における研究実績として高く評価できる。また、共同研究者である東京農工大の帯刀からも水素結合性の導電性材料に関する研究成果が出され、お茶の水大学の森からも金属イオンを有する分子系の計算理論に関する先駆的な研究成果が出されている。物質開発の観点からは、イオン性液晶性材料やチャネル型液晶性材料などに着目した検討を実施した。これらの分子集合体の相転移挙動、構造評価と誘電物性から、いくつかの物質設計の重要なポイントが明らかとなった。結果、2014年度半期で14報の論文発表を行い、46件の学会発表を実現した。研究成果のアピールに関しても着実な活動を実施しできた点は高く評価できる。また、誘電率をプローブとした分子集合体における動的性質の評価も、多くの研究者に幅広く認知され共同研究の数も年々増加している(北大、東京農工大、千葉大、東京理科大、広島大、分子研、東工大、山口大、熊本大など)。今後も、分子性材料の動的物性研究の進展のために、積極的に領域内外における共同研究を実施する。
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Strategy for Future Research Activity |
2015年度は、本研究スタートから半年となり、研究設備も徐々に整備され本格的な活動が開始される。単純なイオン性化合物が示す高度な分子組織構造であるらせんナノファイバーの形成に関する報告を元に、多様な電子機能を有する拡張π電子系化合物との複合化を試みる。特に領域内A01班で開発される多様なπ電子系化合物に着目し、領域内共同研究から新たな動的π電子システムの構築に向けた検討を実施する。Langmuir-Blodgett法やスピンコート法などのウエットプロセスにより、基板上にらせんナノファイバー構造やネットワークπシステムを固定化させる分子集積化技術を開発する。単純なアルキルアミドベンゼン誘導体を用いた予備実験では、スピンコート法を用いた単純な制御により、ナノファイバーが形成する二次元ネットワークπシステムの接合様式を制御できる事を見出している。ネットワークが比較的ルーズな状態からクモの巣状に張り詰めた状態までを自在に制御可能であり、個々のナノファイバーは、高さ2 nmで幅20 nmの一定サイズである。単純なベンゼン誘導体から、ピレンやTTF誘導体などへのπ電子骨格の拡張について検討を試みる。既存の電気伝導度および誘電率測定システムを用い、温度変化や外部電場の印加に対するバルク薄膜の物性応答を検討する。薄膜状態におけるネットワークπシステムの構造-物性相関を評価するために、薄膜X線結晶構造解析システムを導入する。また、バルク状態における分子間水素結合の変化による蛍光特性の経時変化をモニターするために、ルミネッセンス分光光度計を導入する。単純なアニリンやアルキルアミドベンゼン誘導体で得られた知見をもとに、伝導性や磁性機能の発現を可能とするより複雑なπ電子化合物の合成を試みる。
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Research Products
(53 results)
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[Journal Article] Mesophases and Ionic Conductivities of Simple Organic Salts of M(m-Iodobenzoate) (M = Li+, Na+, K+, Rb+, and Cs+)2015
Author(s)
Manami Endo, Yuta Nakane, Kiyonori Takahashi, Norihisa Hoshino, Takashi Takeda, Shin-ichiro Noro, Takayoshi Nakamura, and Tomoyuki Akutagawa
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Journal Title
J. Phys. Chem. B.
Volume: 119
Pages: 1768-1777
DOI
Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
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[Journal Article] Crystal Structures, CO2 Adsorption, and Dielectric Properties of [Cu(II)2(R-Benzoate)4(pyrazine)]∞ Polymers (R = m-F, 2,3-F2, m-Cl, and m-CH3), submitted for publication2014
Author(s)
iyonori Takahashi, Norihisa Hoshino, Takashi Takeda, Shin-ichiro Noro, Takayoshi Nakamura, Sadamu Takeda, Tomoyuki Akutagawa
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Journal Title
Dalton Transactions
Volume: 43
Pages: 9081-9089
DOI
Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
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