2016 Fiscal Year Annual Research Report
強誘電性・強弾性機能の発現を目指したソフトπ造形システム
Project Area | pi-System Figuration: Control of Electron and Structural Dynamism for Innovative Functions |
Project/Area Number |
26102007
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
芥川 智行 東北大学, 多元物質科学研究所, 教授 (60271631)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
帯刀 陽子 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 講師 (30435763)
森 寛敏 お茶の水女子大学, 基幹研究院, 准教授 (90501825)
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Project Period (FY) |
2014-07-10 – 2019-03-31
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Keywords | 強誘電体 / 強弾性体 / 水素結合 / 自己集合 / 一次元 / 発光特性 / ヒステリシス / 重水素効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
一次元らせん会合体を形成するキラルアルキルアミド基を導入した水素結合性のピレン誘導体を新規に合成し、有機溶媒中における一次元超分子集合体構造の形成と吸収-発光特性の相関に関する研究を試みた。吸収-発光特性は、顕著な溶媒及び濃度依存性を示し、特に、メチルシクロヘキサン(MCH)中で、一次元超分子集合体の高い会合能が確認された。THFやCHCl3中のnは、MCH中よりも小さくなるが、エキシマー発光を出現させるのに十分な会合数が実現している。一方、励起状態においても水素結合性の励起一次元分子集合体の形成が、CPL測定から確認され、MCH中ではg > 10-2の非常に高いCPL活性が確認された。発光特性の溶媒依存性は、励起状態の構造変化に依存することが示され、一次元らせん会合体は、溶媒の種類や濃度により会合数nやらせんの巻き方向を変化させる事が明らかとなった。また、三種類の異なる強弾性体としてホウ酸、(アルキルアンモニウム)(H2PO4-)および四角酸に着目し、その強弾性挙動に関する検討を実施した。外部応力に対する結晶ドメインの存在比率から、強弾性ヒステリシスの測定に成功した。さらに、これらの分子性結晶の重水素化合物を作製し、強弾性ヒステリシスに及ぼすプロトン移動の効果について検証した。結果、ホウ酸ではプロトン移動が関与せず水酸基の回転運動が重要である事が示され、(アルキルアンモニウム)(H2PO4-)および四角酸ではプロトン移動が関与することが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
キラル構造を有さないアルキルアミド置換ピレン誘導体が形成するディスコチックカラムナー液晶相における強誘電体物性に関する報告を昨年度に行っている。アルキルアミド鎖間の分子間水素結合とπスタックによる高い分子会合能の存在が想定される。本年度は、キラルアルキルアミド基を導入した水素結合性のピレン誘導体を新規に合成する事で、その有機溶媒中における一次元超分子集合体構造の形成と吸収-発光特性の相関を明らかにする事で、会合数の値と発光挙動を明らかにできた点が評価に値する。また、励起状態においても水素結合性の一次元分子集合体が形成している事を確認し、CPL測定からMCH中ではg > 10-2の非常に高いCPL活性が確認された。一次元らせん会合体は、溶媒の種類や濃度により会合数nやらせんの巻き方向を変化させる事を明らかにした。分子性結晶の強弾性ヒステリシス測定を再現性良く成功したのは、非常に高く評価できる研究成果である。世界的に見ても、分子性材料に関する測定の報告例はなく、本研究グループが世界をリードしていると考えられる。三種類の分子性強弾性体を用いたヒステリシスおよび重水素置換効果の検討から、その強弾性ドメインの変化のメカニズムを解明した点は、高く評価できる。水素結合レイヤー間の相互作用に関して、π積層構造の存在が強弾性ヒステリシスの抗応力に大きな影響を与えることが明らかとなった。また、京大関研および東北大宮坂研との共同研究を、研究成果として論文発表した。
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Strategy for Future Research Activity |
キラルアルキルアミド基を導入した水素結合性のピレン誘導体の会合特性が明らかとなったことから、今後は、強誘電性を示すアルキルアミド置換ピレン誘導体との混晶を作製し、そのバルク状態における強誘電物性の制御を試みる。キラル化合物は、アキラル化合物のダイナミックな水素結合反転をピン留めする役割を果たすことから、僅かなドーピングにより強誘電体カラム長を制御する事が可能となる。ドーピング量と強誘電体ヒステリシスにおける抗電場および残留分極の相関を明らかとする事で、強誘電体カラム内のミクロな分子運動に関する情報を得ることが可能となり、一次元強誘電体ドメインの制御によるナノスケールの有機強誘電体の創製を試みる。強弾性ヒステリシス測定に関しては、分子性材料の測定例をさらに増やすと共に、二種類のドメインの存在に起因した新機能の探索を試みる。例えば、X線振動写真で見られる両ドメインに帰属される二つのブラッグ反射は、外部応力の印加によりその強度を制御する事が可能である。これは、X線レンズとして利用可能であり、強弾性体を用いた新たな機能性材料の実現が可能と考える。また、領域内の共同研究として、東工大福島研、京大関研、大阪大鈴木研、阪大櫻井研、名古屋大忍久保研、金沢大生越研、東北大宮坂研などを活発に実施中である。
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Research Products
(51 results)