2017 Fiscal Year Annual Research Report
Project Area | pi-System Figuration: Control of Electron and Structural Dynamism for Innovative Functions |
Project/Area Number |
26102013
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
木口 学 東京工業大学, 理学院, 教授 (70313020)
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Project Period (FY) |
2014-07-10 – 2019-03-31
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Keywords | 単分子接合 / パイ造形分子 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は単一π造形分子の伝導特性と熱電特性の解明および伝導特性制御を行った。特に反芳香族分子を用いて顕著な成果を得る事ができた。反芳香族分子ノルコロール、比較対象として類似の構造をもつ芳香族分子ポルフィリンについて、走査型トンネル顕微鏡(STM)を用いて単分子計測を行った。単分子伝導度の統計的解析から反芳香族分子の伝導度は4.2x10^-4 G0, 芳香族分子の伝導度は1.7x10^-5 G0と求まった。ここで、G0は量子化コンダクタンス(2e^2/h=77.5x10^-6 S)である。以上の計測から、反芳香族分子が芳香族分子と比較して20倍近く伝導性が高いことが分かった。さらに、反芳香族分子の高い電子伝導性の起源を実験的に明らかにするために、電流電圧特性を計測した。単分子の電流―電圧特性の解析から分子軌道と金属電極のフェルミ準位のエネルギー差を求めることが出来る。芳香族分子のポルフィリンでは分子軌道がフェルミ準位から0.8 eVの位置にあるのに対し、反芳香族分子であるノルコロールでは0.5 eVと、フェルミ準位に、より近い位置にあることが分かった。単分子を流れる電子は、分子軌道とフェルミ準位のエネルギー差に相当する障壁を感じて伝導する。このことから、反芳香族分子の方が障壁が低く、効率的に電子を伝導したことになる。並行して、第一原理計算に基づいた電子輸送シミュレーションを行い、実験的にもとめた電子状態、伝導特性を定量的に再現することができた。次に電気化学を利用することで伝導度の変調を試みた。電気化学では、電気化学電位により電極のフェルミ準位を上下させ、分子軌道とフェルミ準位のエネルギー差を制御することが出来る。負電位にすることで、伝導度が1桁近く増大した。以上、反芳香族分子の優れた電子伝導特性を単分子レベルで解明と制御に世界で初めて成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまで、単一π造形分子の構造および電子状態を解明するための計測装置として、単分子接合の表面増強ラマン散乱、電流―電圧計測、熱起電力計測装置など、独自の計測装置を開発してきた。本年度はこれまで開発してきた計測法を反芳香族分子に適用し、反芳香族分子の優れた電子伝導特性の解明に成功した。更に、電気化学gatingを用いた伝導度の制御装置を開発し、反芳香族分子の単分子伝導度の制御を制御することで伝導度を1桁近く増大させることに成功した。以上、計測法開発、物性、機能探索、両面から研究は順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで、種々の単一π造形分子の電気伝導度、熱起電力計測を行い、分子の基礎的な物性を明らかにしてきた。今後は単分子に積極的に応力を与えることで、単分子の物性を変調することに挑戦する。特に、今年度は力と伝導度、熱起電力の同時計測装置の開発を行う。力と伝導度、熱起電力の計測が可能になることで単分子に応力を与えた際の伝導、熱電特性の応答を調べることができる。この計測によりA01,A02班によって合成されるπ造形分子から、巨大熱起電力、熱起電力スイッチなど応力誘起の新機能を引き出すことが期待できる。そして、これまで構築してきた単分子接合の電子状態計測法と組み合わせることで、包括的に単一π造形分子の物性を解明できる。単一π造形分子の力と伝導度、熱起電力の同時計測を行うためには、原子間力顕微鏡(AFM)を電気計測が可能なように改良し、さらに電流アンプをより低電流まで計測できるように改良する。開発した計測装置を、巨大な熱起電力の発現が理論提案されている金属内包フラーレンやヘリセン分子などに適用する。
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Research Products
(28 results)