2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project Area | pi-System Figuration: Control of Electron and Structural Dynamism for Innovative Functions |
Project/Area Number |
26102015
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
杉本 学 熊本大学, 自然科学研究科, 准教授 (80284735)
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Project Period (FY) |
2014-07-10 – 2019-03-31
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Keywords | π造形 / 計算化学 / 分子設計 / 構造物性相関 / 電子状態 / 理論化学 / 情報化学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、π共役系化合物による分子造形に関する理論計算シミュレーションを実施し、その構造物性相関の解明・予測とそれに基づく電子状態学の確立を目指した研究を行っている。平成27年度は、昨年度に引き続いて(1)規則的に連結したπ共役オリゴマーの光吸収特性と集合化構造に関する理論研究、(2)開発した分子の弾性的特徴を解析する計算手法の応用、(3)分子造形支援ツールの開発、を継続して行った。以下に各テーマの概要を述べる。 (1)規則的に連結したπ共役オリゴマーの構造物性相関: 分子モチーフ(モノマー)を高度な対称性を有する分子アセンブリ(オリゴマー)へと集積することによって、電子状態と機能にどのような特徴が現れるかを検討した。昨年度の環状チオフェンの検討に続いて、今年度は共同研究者が実験的合成した鎖状分子オリゴマーについて検討した。独自研究としては、メレムをフラクタル図形の形に集積した分子アセンブリを調べた。 (2)分子の弾性的特徴に関する解析: 昨年度開発した「分子の力学的な硬さ・柔らかさ」の評価法を用いると、分子に印加する応力と物性変化の相関を調べることができる。今年度は、V字型構造を有する反芳香族化合物のメカノクロミズムから、分子に印加される応力の値を推定する解析を行った。 (3)分子造形支援ツールの開発: π造形のような分子造形のためには、分子モチーフの選択と分子アセンブリの設計が必要である。天然に存在する有用な分子モチーフを探索するため。今年度は5万件の登録数がある植物2次代謝物のデータベースに注目し、登録されている分子のうち約1万個について電子状態計算を行って我々独自の電子状態データベースを作成した。分子探索ツールの開発については、電子スペクトルのデータを中心とする約20個の電子的記述子に基づいて、分子を探索するツールを開発した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
概要に記述したもの以外にも共同研究として領域内外の有機化学者を支援する多数の研究を行っており、成果の公表が遅れている。また、マンパワーの不足から、全体的にみて各テーマのデータ量が不足しており、得られた知見の確認・検証が不十分である。今後は研究補助者を雇用して研究を推進する。
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Strategy for Future Research Activity |
π造形の電子状態学を確立する上で、様々な分子モチーフと分子アセンブリに関する検討が不可欠である。今後は事例を増やすことに特に注力したい。そのためは、ポテンシャルの高い分子モチーフを選び出すための電子状態データベースの開発とともに、分子設計ツールの開発にも取り組む予定である。計算した様々な事例の中から、構造物性相関を自動的に提案するツールを開発し、解析の効率を高める手法を開発したい。 独自に開発した圧縮応答解析手法については、どのような化学現象の解析に有用かを見極めたい。現在のところ領域内研究者から応用に関する様々な提案をいただいており、それらを共同研究として推進できるよう手法の高効率化にも努めたい。
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Research Products
(15 results)