2017 Fiscal Year Annual Research Report
Functional design of spin conversions
Project Area | nano spin conversion science |
Project/Area Number |
26103006
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
村上 修一 東京工業大学, 理学院, 教授 (30282685)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
多々良 源 国立研究開発法人理化学研究所, 創発物性科学研究センター, チームリーダー (10271529)
Bauer Gerrit 東北大学, 金属材料研究所, 教授 (10620213)
前川 禎通 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 先端基礎研究センター, センター長 (60005973)
永長 直人 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (60164406)
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Project Period (FY) |
2014-07-10 – 2019-03-31
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Keywords | スピンエレクトロニクス / 物性理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
村上は強磁性薄膜でのスピン波において波数が増大して双極子相互作用が支配的な領域から交換相互作用が支配的な領域にクロスオーバーする際に、ベリー曲率の符号が変わることを見出した。また軌道磁化が電流で誘起される現象を理論的に見出し、それがらせん形の結晶では、形状から古典的に予想される値に比べて大きく増大しうることを示した。 バウアーはYIGなどの物質での磁性と輸送現象について調べた。YIG球のマグノンとキャビティ内の電磁波の共鳴モードとの混成の理論を構築した。またスピンネルンスト効果の現象論的理論の構築、マグノン-ポーラロン形成の理論、マイクロ波キャビティでのフォトンを介したマグノン同士の束縛、電場によるスイッチングを指向した希土類スピントロニクスの理論の構築などを行った。 永長はスピン軌道相互作用のある電子系で、電場の2次に比例したスピン流が発生することと、電場とスピン流の方向によりその大きさとスピン分極方向が変化すること、を理論的に見出した。これは新しいスピン流生成機構と高効率スピン流整流器の基礎学理を与える。また、電子波動関数の幾何学的位相が拡散過程の時間依存性に大きな影響を与えることや、不純物散乱に伴うホール効果をもたらすことを示した。 前川は様々な力学の角運動量が電子スピンと相互作用することを理論的に示し、実験グループと共同研究により検証を試みた。今年度は特に、表面弾性波の持つ角運動量によるスピン流生成を実験グループと協力して検証した。 多々良は、スピン移行効果、スピンポンピング効果や、界面等でのDM相互作用、光学効果や電磁メタマテリアルとしての特性等、多様なスピン電荷変換現象を、有効ゲージ結合という視点で整理し、電磁気現象との類推で統一的に理解する枠組みを与えた。特に、ゲージ場がスピン流を駆動する際のドップラーシフトがこれら多くの現象の解釈の鍵となっていることを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
a当初の計画はほぼ達成されて、さらに盛り込んでいなかったような新しい発見があり、当初計画以上に進展しているといえる。 例えばYIG等の磁性絶縁体でのスピン変換現象の研究は、日本と海外の実験グループとの連携により大きな進展を見せ、光学的性質、輸送特性の理解が大きく進展した。またスピンに由来する量子力学的位相がもたらす現象・効果を理論的に開拓する研究が大きな進展を見せている。外部電場なしに流れる光電流であるシフトカレント、非可換量子力学に基づくホール効果、スピンの立体角による電子のスキュー散乱、スキルミオンのガラス状態のダイナミクスなど、予期しなかった現象にまで広がり、相互の関係が明らかになりつつある。さらにらせん形の結晶での電流誘起軌道磁化については、らせんの形状から古典的に予想される値よりも大きく増大するという特異な現象を見出すことができ、今後この特異な現象の解明を進めようと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
村上は、フォノンの回転成分であるフォノン角運動量に関して、電子スピンとの類似性に着目して、熱流でフォノン角運動量を生成する現象の予言に取り組む。これは電子系でのエーデルシュタイン効果の類似物に相当する。 バウアーは、YIGでの光学的、マイクロ波、弾性波などのキャビティでの実験において、YIGの性質からくるコヒーレントな性質や量子的な性質に切り込む現象についての実験に関連した理論的アプローチを展開する。. 永長はスピンやスピン軌道相互作用に関連した非線形応答の理論的開拓を進める。特に空間反転対称性を持たない系の非相反輸送現象に着目する。具体的には、スキルミオンのストリングの運動に伴う非相反抵抗、超伝導体における磁気カイラル異方性、などの理論を構築する。また、運動量空間のワイルフェルミオンに由来する異常ホール効果につき、特にバンド構造が良く理解されているEuTiO3を対象に理論的に考察する。 前川は、自然界に存在する様々な角運動量からスピン流の生成を目指す。なお、2016年に明らかにした、スピン-力学回転相互作用による液体金属での発電が、ブルックヘブン研究所のThe STAR Collaborationで取り上げられ、Quark-Gluon plasmaからのスピン流生成の実験が行われた。今後は、この例の様に、他分野へもスピン-力学回転相互作用の概念を拡張していく。
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Research Products
(106 results)