2017 Fiscal Year Annual Research Report
Project Area | 3D Active-Site Science |
Project/Area Number |
26105005
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐々木 裕次 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 教授 (30344401)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
関口 博史 公益財団法人高輝度光科学研究センター, 利用研究促進部門, 主幹研究員 (00401563)
柴山 修哉 自治医科大学, 医学部, 教授 (20196439)
宮澤 淳夫 兵庫県立大学, 生命理学研究科, 教授 (60247252)
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Project Period (FY) |
2014-07-10 – 2019-03-31
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Keywords | 蛍光X線ホログラフィー / タンパク質分子 |
Outline of Annual Research Achievements |
蛍光X線ホログラフィーは、原子分解能を持つX線を利用した構造決定法の中で、その散乱波の強度情報だけでなく位相情報をも同時に計測できるユニークな撮像技術である。我々は、蛍光X線ホログラフィー測定をタンパク質分子にも適用するため、装置の改良を行い、世界で初めて血液中の酸素運搬タンパク質であるヘモグロビンの蛍光X線ホログラムの観測に成功した1。この測定系を用いて、酸素貯蔵タンパク質であるミオグロビンの蛍光X線ホログラフィー測定を SPring-8 BL39XU 及び Photon Factory BL6C にて複数回行い、信頼できるデータを今年度は蓄積することにした。一般にタンパク質結晶では単位胞内に異なる配向の複数の分子が存在し、それぞれの活性サイトからの信号が重なって観測されるため、解析には困難を伴うことが多い。この問題を解決する一つの方法として、ヘモグロビンやミオグロビンなどが活性サイトに持つヘム(鉄-ポルフィリン錯体)の分子対称性を利用する解析法を試みた。ヘモグロビン(16サイト)と比べて、結晶中に含まれる異なる配向の分子が少ないミオグロビン(2サイト)においては、原子像再生時にヘムのD4h対称性を利用することが有効であることが示された。 また、我々は活性サイト中心に2核鉄を持つタンパク質であるヘムエリスリン結晶の蛍光X線ホログラフィー測定も試みており、D4h 対称を用いずに、軽元素系でのクリアな再生像の実現を目指している。さらに、領域内の計画班、公募班と協力してエネルギー分解能を持つ2次元検出器を新たに用い、光合成に関わる光化学系II複合体タンパク質(Photosystem II, PSII)活性サイトの蛍光ホログラムパターンの観測も行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績概要で説明したように、本新学術の最終目的であったタンパク質蛍光X線ホログラフィーの実践的計測開始が完了した。また、バイオ系の実践的量子計測のブレイクスルー的な計測(放射光施設でも使えて実験室X線光源でも利用可能な)技術を以下のように提案することに成功した。 量子プローブ唯一の1分子動態情報を取得できるX線1分子追跡法 (Diffracted X-ray Tracking; DXT) は、佐々木らによって1998年に考案され、今日まで困難と言われてきた巨大分子に対しても分子動態を明確化してきた。DXTは目的のタンパク質をナノ結晶で標識し、ナノ結晶からのX線回折スポット (ラウエ法)の角度変化を観測し、マイクロ秒の高時間分解能でかつナノメートルの高空間分解能でマイクロ秒、タンパク質1分子の内部運動計測を実現した。分子動態計測は色々な系で実現しており、DNAや膜タンパク質分子(bR, KcsA, nAChR,α7AChR, AChBP, GLIC)の分子内部運動の1分子計測に成功してきた。しかし、現在までDXT法はそれほど普及していない。普及しない1つの理由に、白色X線を用いた計測であることが挙げられる。通常の放射光施設は9割以上のユーザーが単色X線を利用するので、近年では、ビームライン設計段階で白色X線の利用は検討されることは少なくなってきた。そこで我々は、DXTを改良して多くのユーザーに使われることを目的に、単色X線を用いた回折強度の自己相関を測定することで回折スポットの運動特性評価の可能性を提案し、実験的に確認することに成功した。この単色X線を使用した回折1分子計測法では、得られる回折スポットのすべての動きを追跡することはできないが、回折X線強度の明確な点滅(Blinking X-ray: X線ブリンキング)を検出することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
以上のように4年度目は、巨大生体分子の単結晶から蛍光X線ホログラフィーを世界で初めて成功し、それが実践的なモードとなってきた。PSIIの巨大結晶化も成功しており、蛍光X線ホログラフィーの実測も成功している。また、この計測技術が本当に生物学的に未知な課題(例えば金属の価数評価や分子の揺らぎ等)を解決することのできる唯一の方法論に成り得る可能性も出てきた。最終年度に完成する期待がある。 もう1つのバイオ計測技術として、量子ビーム1分子計測法を進めているが、技術的にDXTを白色光利用から単色利用に変更できた。また、その解析過程において自己相関関数を用いることを提案したが、この手法がDXTやDXBに限ることなく、「運動」をモニターするための広域な画像解析技術として提案できる可能性も検討され始めたのは大きな進展であった。従来のDXTも計測対象を動物へと本格的に移行する段階へと入った。これも今年度に実現した。
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Research Products
(9 results)