2014 Fiscal Year Annual Research Report
第一原理シミュレーションによる活性サイトの構造・機能の解明とデザイン
Project Area | 3D Active-Site Science |
Project/Area Number |
26105010
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
森川 良忠 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (80358184)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
赤木 和人 東北大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (50313119)
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Project Period (FY) |
2014-06-27 – 2019-03-31
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Keywords | 第一原理シミュレーション / vdW-DF / 有機分子 / 吸着 / グラフェン / Ptクラスター / 触媒 / SrTiO3 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は、プログラム開発に関しては、弱い吸着状態をかなり精度よく記述することができると報告されている濵田によるvan der Waals密度汎関数法をSTATE-Senriに組み込み利用可能にした。グラフェン上の有機分子吸着系に適用したところ、vdW-DFを用いることにより安定な吸着状態が記述可能となった。 第一原理電子状態計算手法による、触媒反応活性サイトの解明については、Pt13クラスターのグラフェン上への吸着構造とその電子状態、反応性に関する研究を進めた。この系については、手法班ナノ構造体イメージンググループとも議論を行いつつ、研究を進めている。担体なしの孤立Pt13クラスターの構造について調べたところ、distorted cuboctahedronが最も安定であることがわかった。そこで、このクラスターをグラフェン上に吸着させて、COが吸着する際の吸着エネルギーを調べたところ、2.17~2.88 eVとなり、かなり大きな吸着エネルギーを持つことがわかった。 チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)は紫外線照射下で水の光分解反応を見せる物質のひとつであり、遷移金属元素の添加によって可視光域を活用できる。Rhを添加したもの(Rh: SrTiO3)は特に高い触媒活性を持つことが知られている。Irを添加したもの(Ir: SrTiO3)に対して同様の測定・解析を本年度実施した。その結果、Ir3+やRh4+のようにギャップの中央付近に添加元素由来のエネルギー準位が現れる系では触媒活性が低く、Ir4+やRh3+のようにSrTiO3の価電子帯のすぐ上にエネルギー準位が現れる系では触媒活性が高くなる傾向が明らかになった。このことは、添加物由来の電子状態とSrTiO3の価電子帯(酸素由来の電子状態)との混成具合を調節することが触媒のデザインを行う際の指針となりうることを示している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究計画では、第一原理シミュレーション手法を用いて、物質の局所構造を求め、さらに、その構造が持つ電子的・化学的性質を明らかにし、その性質を支配する物理的要因を明らかにすることによって、より望ましい材料を設計する指針を与えることを目指している。そのために以下の三つの課題を設定し研究を進めている。 【課題1】第一原理電子状態計算と統計力学的手法による構造・反応経路探索の確立 【課題2】表面・界面・クラスターへの適用と実証実験 【課題3】「3D活性サイト」構造の持つ機能の解明とデザイン 平成26年度は主として課題1と課題2について研究を進めた。【課題1】に関しては、弱い相互作用を精度よく記述するためのファン・デル・ワールス相互作用汎関数を問う研究グループで開発してきている第一原理分子動力学法プログラムSTATE-Senriに組み込み、テスト計算はほぼ終了することができた。【課題2】に関しては、グラフェンに担持したPtクラスター、および、Rh, IrドープSrTiO3に関して試料班、手法班のグループと連携しつつ研究を進めており、興味深い結果が得られつつある。以上より、どちらの課題についても概ね順調に研究が進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究計画で掲げている三つの課題 【課題1】第一原理電子状態計算と統計力学的手法による構造・反応経路探索の確立 【課題2】表面・界面・クラスターへの適用と実証実験 【課題3】「3D活性サイト」構造の持つ機能の解明とデザイン について、今後さらに進めていく。特に平成27年度は【課題1】および、【課題2】を中心に、以下の具体的な問題について取り組む。 1. クラスター展開法やメタ・ダイナミクス法など統計力学的手法と第一原理電子状態計算手法を組み合わせて、物質の局所構造の安定構造や有限温度での構造、さらには、反応経路などを効率的に探索する手法の開発を行い、それを酸化物触媒などに適用していく。 2. 燃料電池などの触媒として有望なグラフェン上に担持されたPtクラスターの構造・電子状態、および、反応性について理論的な解析を進める。特にグラフェンの格子欠陥やエッジ、さらにはドープ原子とPtとの相互作用について詳細に調べる。 3. 「象再生理論」グループと連携して、ホログラムデータに数理統計の手法を適用することで原子構造の情報をできるだけ多く取り出す試みを展開する。 4. 水の光分解反応について触媒脳を示すRh:SrTiO3系について蛍光X線ホログラフィ測定と連携して、三価、四価それぞれのRh原子の周囲の局所構造と電子状態の解明に取り組む。
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Research Products
(26 results)