2015 Fiscal Year Annual Research Report
分子シミュレーションによる生体活性サイトの構造・機能相関の解明とデザイン
Project Area | 3D Active-Site Science |
Project/Area Number |
26105012
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Research Institution | Hiroshima City University |
Principal Investigator |
鷹野 優 広島市立大学, 情報科学研究科, 教授 (30403017)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石北 央 東京大学, 先端科学技術研究センター, 教授 (00508111)
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Project Period (FY) |
2014-07-10 – 2019-03-31
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Keywords | 活性サイト / 金属タンパク質 / 光化学系II / ヘムタンパク質 / 構造機能相関 / QM/MM計算 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、(1) 生体活性サイトの機能解明に向けた新しい分子シミュレーション技術の開発、(2)3D活性サイトの分子構造・電子状態の理論計算による精緻化、(3)金属タンパク質の機能発現要素の抽出を進めた。 (1)に関しては、分子動力学法によるタンパク質の機能発現に関わる効率的な構造変化探索法の開発、長時間の古典力学分子シミュレーションに耐える分子力場の開発、電子状態計算の計算コスト削減のための分割統治法による初期密度生成法の開発、タンパク質の機能解析のためのQM/MMシミュレーションプログラムの開発をすすめ、その有効性を確認した。(2)、(3)に関しては、光合成光化学系IIに対しては、光合成による水分解の第1段階反応でのプロトン放出サイトは、Mn4CaO5錯体内のO5と呼ばれる酸素原子であるともっぱら提唱されていたが、結晶構造解析の結果では、O5には水素結合する相手が存在いないためH+放出は起こりにくいと考え、PSIIタンパク質環境下でMn4CaO5錯体からのH+放出経路をQM/MM法を利用して解析した。その結果、これまで放出サイトと考えられてきたO5ではなく、O4が、近接している「水分子の鎖」を通じて、H+を容易に放出できることを発見した。また、光合成光化学系II (PSII) の活性中心付近にあるチロシンYZとHis190は特異的に短い水素結合を形成している。そこでYZ-His190間の水素結合に現れるH/D同位体効果を解析したところ、一般の水素結合と異なり、短距離強水素結合を有する系で知られている逆ウベローデ効果が見いだされた。一方、ヘムタンパク質に関しては、好気呼吸で酸素を水に還元する酵素であるシトクロムc酸化酵素(CcO)と同じ祖先から進化した一酸化窒素還元酵素(NOR)の一種であるqNORに関して、その中間体として考えられる状態のFe(heme)-NO部分のOがラマン分光に対して同位体効果を示さない理由を電子状態計算により明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画とおり、シミュレーション技術の開発および生体活性サイトの精緻化、機能発現機構の解明に着手・遂行できたため。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度の研究を通じて、シミュレーション技術の開発および活性サイトの電子状態の理解や金属タンパク質の機能解明を進めることができた。平成28年度以降はこの成果をさらに発展させ、機能発現要素を抽出したいと考えている。
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Research Products
(28 results)