2017 Fiscal Year Annual Research Report
分子軌道のトポロジーと分子配列に着目した多機能光応答システム
Project Area | Application of Cooperative-Excitation into Innovative Molecular Systems with High-Order Photo-functions |
Project/Area Number |
26107008
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
松田 建児 京都大学, 工学研究科, 教授 (80262145)
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Project Period (FY) |
2014-07-10 – 2019-03-31
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Keywords | フォトクロミズム / 自己組織化 / STM / 協同性 / 分子電導 |
Outline of Annual Research Achievements |
アミド基を含む、オリゴエチレングリコール鎖とアルキル鎖を持つ両親媒性ジアリールエテンにおいて、下限臨界溶液温度の高温相と低温相を光で変換することにより、光誘起でsphere-bilayer構造相転移を示す化合物の合成に成功した。開環体は相分離構造を内部に含むsphere構造を取るのに対して、閉環体は水和した分子がH会合体を形成し二分子膜構造を取ることが分かった。光照射の前後でのTEM、SAXS、WAXD、吸収スペクトル測定により、bilayerの厚みや周期構造、分子スタッキングを推定した。 [7]ヘリセン分子の6か所のペリ位にベンゼン環を縮環し、ヘリセンのらせん軸に対して垂直方向にπ共役系を拡張した分子、ヘキサ-ペリ-ヘキサベンゾ[7]ヘリセンの合成に成功した。合成は、マクマリーカップリング、光環化脱水素化反応、脱水素芳香族化反応を鍵反応とし、9段階で行った。X線結晶構造解析の結果、この分子はらせん構造を有しており、右巻きらせんの分子と左巻きらせんの分子が交互に積層した結晶構造を取っていることが分かった。紫外可視吸収スペクトルの測定の結果、この化合物は675 nmという非常に長い波長に吸収帯を示すことが明らかになった。また、この分子の円二色性スペクトルの非対称性因子g値は1.6%と求められ、有機化合物としてはかなり大きな値を持つことが明らかとなった。さらに、この化合物の過渡吸収スペクトルの測定の結果、第一励起状態の寿命は、1.2psと非常に短く、π拡張していない[7]ヘリセンの励起状態寿命と比べて4桁も短いことが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
[7]ヘリセン分子をらせん軸に対して垂直方向にπ共役系を拡張した分子であるらせん状ナノグラフェンの合成に成功したことは、研究開始当初にはない展開で、当初の計画以上に進展していると言える。この分子は、分子スケールエレクトロニクスにおいてはインダクションコイルとして、ナノメカニクスにおいてはスプリングとして働くことが期待されるものであり、メディアの反響もあった。
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Strategy for Future Research Activity |
らせん状ナノグラフェンについては、より本格的な分子素子を目指し、今回合成に成功したものから、らせん軸に沿って、またらせん軸に対して垂直方向にさらにπ共役系を拡張した分子について検討する。光誘起の形態変化は、下限臨界溶液温度の高温相と低温相の間の大きい構造変化を光で変換することを念頭に置き、実用レベルの光駆動の形態変化を目指す。
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Research Products
(12 results)