2015 Fiscal Year Annual Research Report
高速フォトクロミズムを基盤とする実働分子マシン開発
Project Area | Application of Cooperative-Excitation into Innovative Molecular Systems with High-Order Photo-functions |
Project/Area Number |
26107010
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
阿部 二朗 青山学院大学, 理工学部, 教授 (70211703)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
坂本 章 青山学院大学, 理工学部, 教授 (90262146)
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Project Period (FY) |
2014-07-10 – 2019-03-31
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Keywords | 分子機械 / 分子モーター / 光スイッチ / 光物性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、分子集合体がリアルワールドで協調性のある動的性質を示す分子マシンの創製であるが、その実現には多数励起分子の協同的光応答の動的制御が不可欠である。さらに、本新学術領域研究の目的の一つとして、「多光子吸収や多重励起を利用した高位・禁制電子状態における選択的・特異的光反応」を可能とする新規複合励起応答分子系の構築があげられる。そこで平成27年度には、分子内に二つの光応答部位をもつ新規高速フォトクロミック分子を合成し、その二光子反応について検討を行った。 [2.2]パラシクロファン架橋型イミダゾール二量体の高速フォトクロミズムとビラジカル-キノイド互変異性の二つの特性に着目し、効率的に段階的二光子反応が進行する新たな分子系の開発を行った。本研究で開発した化合物は、2つのイミダゾール二量体部位が[2.2]パラシクロファンで架橋された構造をしており、一光子反応により一つのC-N結合が解離してビラジカルを生じ、ビラジカルがさらに光を吸収すると他方のC-N結合が解離してキノイドを生成する。ビラジカルとキノイドは色、熱消色特性などの物性が全く異なり、この二光子過程はLEDなどの連続光によっても誘起できるほど高効率であることがわかった。フォトクロミック反応により繰り返し生成する過渡種を長寿命の励起状態と同等として捉え、多光子過程へと応用した本研究の発想の転換は、これまで別々に発展してきた非線形光学過程と有機反応過程とを結び付ける可能性を持っており、今後フォトクロミズムを活用した新しい高効率多光子反応過程の発展が期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
従来の「一光子吸収」を超える「複合励起と応答」の学理構築と応用を行い、光子有効利用を可能とする新規複合励起応答分子系の構築を目指す、という本新学術領域研究の目的に適う新しい光応答システムの創出に成功した、という点で高く評価できる。また、ポルフィリン部位を有する[2.2]パラシクロファン架橋型イミダゾール二量体を合成し、この分子が可視二光子吸収により生成した高位電子励起状態からの電子移動により誘起される二光子フォトクロミズムを示すことも見いだした。さらに、ビナフチル架橋型フェノキシル―イミダゾリルラジカル複合体を開発することで、これまでは困難と考えられてきた高速逆フォトクロミズムの実現に成功した。 これらの新規フォトクロミック分子は、従来の光化学の枠を超えた、新たな光応答分子システムとして、光子の有効利用という観点からも重要な進展といえる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに開発に成功した二光子フォトクロミック系や高速逆フォトクロミック分子系の分子集合体を開発し、リアルワールドで協調性のある動的性質を示す分子マシンの創出を目指す。このような可視二光子反応系や逆フォトクロミズム系は、従来の紫外一光子励起のフォトクロミック系とは異なり、物質内部まで可視光が浸透することで多数分子に効率的な光励起が可能となり、集団分子による協調応答の実現が期待できる。
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Research Products
(50 results)