2016 Fiscal Year Annual Research Report
高速フォトクロミズムを基盤とする実働分子マシン開発
Project Area | Application of Cooperative-Excitation into Innovative Molecular Systems with High-Order Photo-functions |
Project/Area Number |
26107010
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
阿部 二朗 青山学院大学, 理工学部, 教授 (70211703)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
坂本 章 青山学院大学, 理工学部, 教授 (90262146)
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Project Period (FY) |
2014-07-10 – 2019-03-31
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Keywords | 分子機械 / 分子モーター / 光スイッチ / 光物性 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度には、効率的に段階的二光子反応を示すデュアルフォトクロミック分子系の創製に成功し、従来の「一光子吸収と一分子応答」を超える新規複合励起応答分子系の実現に道を開いた。具体的には、ナノ秒パルスレーザーを段階的に照射することで、一方のフォトクロミック部位が反応することで生成した短寿命過渡種が、さらに一光子を吸収することで、もう一方のフォトクロミック部位が反応して長寿命過渡種が生成する段階的二光子反応を示すことを見いだした。架橋型イミダゾール二量体(ImD)やフェノキシル-イミダゾリルラジカル複合体(PIC)はラジカル解離型のフォトクロミズムを示すが、1分子内に二つのImDあるいはPIC部位を導入し、フォトクロミック反応によりベンゼン環のパラ位に二つのラジカル部位が生成する分子を設計することで、入力光強度に閾値を有するデュアルフォトクロミック分子を開発した。このように、1分子内に複数の光応答部位を組み込んだフォトクロミック分子系を活用することで、複合励起手法を用いた高次光機能集合系の構築が期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
1分子内に二つのフォトクロミック部位を有するデュアルフォトクロミック分子を合成開発することで、従来の「一光子吸収と一分子応答」を超える新規複合励起応答分子系の実現に道を開いた。励起光強度が弱い場合には、片方のフォトクロミック部位が反応し短寿命の着色体を生成するが、励起光強度が強い場合には、段階的二光子反応により両方のフォトクロミック部位が反応し、さらに着色部位間の強い電子的相互作用により原子価異性反応が起き、長寿命の着色体を生成することを一般化することに成功した。このようなデュアルフォトクロミック分子系では、入力光強度に閾値を有する特異な光応答を示すことを明らかにし、1光子反応を基盤とする従来の光化学の枠を超えた新たな光応答分子システムの創製という観点から重要な進展といえる。
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Strategy for Future Research Activity |
通常のフォトクロミズムは無色体が安定であり、紫外光照射によって過渡的な着色体を生成する現象であるが、着色体が安定種であり、可視光照射により消色する現象は逆フォトクロミズムとして知られている。これまでに逆フォトクロミズムを示す分子は数例しか報告されていなかったが、われわれはビナフチル架橋型フェノキシル-イミダゾリルラジカル複合体が高速逆フォトクロミズムを示すことを見いだした。そこで今後は、1分子内に通常のフォトクロミズムを示すユニットと、逆フォトクロミズムを示すユニットを組み込むことで、可視光を用いた段階的二光子フォトクロミック反応を検討し、デュアルフォトクロミック分子や高速逆フォトクロミック分子を基盤とする高次光機能集合系の創製とその光応答について研究を推し進める。
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Research Products
(56 results)