2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project Area | Homeostatic Regulation by Various Types of Cell Death |
Project/Area Number |
26110002
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
須田 貴司 金沢大学, がん進展制御研究所, 教授 (70250090)
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Project Period (FY) |
2014-07-10 – 2019-03-31
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Keywords | パイロトーシス / アポトーシス / 腫瘍免疫 / パイロトーシス阻害剤 |
Outline of Annual Research Achievements |
パイロトーシスはCaspase-1依存性の炎症誘導性細胞死である。本研究はパイロトーシスの分子機構と役割の解明を目的としている。本年度は下記の成果を得た。1)昨年度同定したパイロトーシスシグナル伝達因子(PYST)候補分子の内、PYST1はCaspase-1結合蛋白であること、PYST1阻害剤が生理的なパイロトーシスも抑制することが判明した。しかし、PYST1は細胞増殖にも必須の蛋白で、PYST1欠損細胞の樹立は困難であった。2)Fv三量体とCaspase-1、8または9の融合蛋白を発現するマウス腫瘍細胞株を樹立し、同系マウスに形成させた腫瘍内にFv架橋剤AP20187を投与したところ、活性化するカスパーゼの違いによって治療効果や腫瘍免疫誘導効果に大きな違いが認められた。興味深いことに、Caspase-8や9の活性化はどちらもアポトーシスを誘導するのにも関わらず、治療効果には大きな差があった。また、Caspase-1の活性化でパイロトーシスを誘導した場合に腫瘍免疫の誘導効率が最も高いことが判明した。3)PK8ヒト膵がん細胞株由来のアポトーシス細胞とパイロトーシス細胞から放出される物質の網羅的な比較解析を行った。その結果、昨年度COLO205細胞のパイロトーシス関連放出物質として同定された核酸系のメタボライトが、PK8細胞のパイロトーシスでも放出されることが判明した。また、ポリアミン類など新たな死細胞放出因子が同定された。4)パイロトーシスの阻害剤・誘導剤を探索し、パイロトーシスを阻害する複数の化合物を同定した。この中にPYST1阻害剤が含まれていた。パイロトーシスの誘導剤に今のところ見いだせていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1) PYST1については、shRNAライブラリースクリーニングでPYST1に対する複数の異なるshRNAが濃縮されたこと、PYST1がCaspase-1に結合すること、PYST1阻害剤が細菌感染等による生理的なパイロトーシスを部分的に抑制することなどから、パイロトーシスの誘導に関わる分子である可能性は高い。しかし、PYST1が細胞増殖にも必須の蛋白であることから、PYST1を安定的にノックダウンした細胞株や、ノックアウトした細胞株の樹立が困難であり、明瞭な検証の障害になっている。その他のPYST候補の中にPYST1と機能的に関連する分子があることから、これらの分子についても生理的なパイロトーシスの実験系で検証が必要である。2) 腫瘍治療のマウスモデルで、腫瘍細胞内で活性化させるカスパーゼや細胞死様式の違いが、その後の生対応答にどのように影響するのかを解析するためのプラットフォームがほぼ確立できた。このシステムを利用して、今後、細胞死様式の違いやそれに伴うダイイングコードの違いが、細胞増殖、組織のリモデリング、炎症・免疫応答などに与える影響を個体レベルで解析することが可能になると期待される。3)アポトーシス細胞、パイロトーシス細胞あるいはその両方で細胞外に放出される数種のメタボライトを同定した。4)パイロトーシスを阻害する複数の化合物を同定した。このうちの一つがPYST1阻害剤であったことはパイロトーシスにおけるPYST1の役割を裏付けるものであり、重要な成果である。一方、パイロトーシスの誘導剤に今のところ見いだせていない。さらに大規模なスクリーニングを行うためには、よりハイスループットなアッセイ系の開発が必要と思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
1)ドメイン相互作用解析とアラニンスキャニング法でPYST1とCaspase-1の結合領域を同定し、Caspase-1との相互作用を失わせることにより、細胞増殖には影響を与えず、パイロトーシス誘導に関する機能のみを失ったPYST1の変異体の作成を試みる。さらに、そのPYST1変異体をノックインした細胞株を作成し、パイロトーシスにおけるPYST1の機能を検証する。また、他のPYST候補分子の内、PYST1と機能的に関連する分子に絞り込んでパイロトーシスにおける役割の解明を目指す。2)In vivoで腫瘍細胞にCaspase-1依存性パイロトーシス、Caspase-8まはた9依存性アポトーシスを誘導した後で、腫瘍内浸潤細胞の組成、抗腫瘍CTL活性、抗原提供細胞の機能、サイトカイン産生、残存腫瘍細胞の増殖、浸潤、転移、血管新生などについて比較し、腫瘍細胞内で活性化させるカスパーゼの違いによって治療効果や腫瘍免疫誘導効率に大きな差が生まれる原因を解明することを目指す。3) 死細胞から選択的に放出されるメタボライトについて、それらの代謝系の酵素がカスパーゼの基質となっている可能性を検討する。また、これらのメタボライトが何らかの生理活性を持ち、ダイイングコードとして働く可能性を検討する。4)パイロトーシス誘導剤のよりハイスループットなスクリーニング法の開発を試みる。
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Research Products
(4 results)