2015 Fiscal Year Annual Research Report
食細胞による死細胞の貪食機構とそれに伴う免疫制御機構の解明
Project Area | Homeostatic Regulation by Various Types of Cell Death |
Project/Area Number |
26110006
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Research Institution | Tokyo University of Pharmacy and Life Science |
Principal Investigator |
田中 正人 東京薬科大学, 生命科学部, 教授 (00294059)
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Project Period (FY) |
2014-07-10 – 2019-03-31
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Keywords | 細胞死 / マクロファージ / 貪食 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、CD169マクロファージによる死細胞の貪食機構とそれに伴う免疫制御機構の解明を目指す。本年度は以下の研究を進めた。 1.腸炎におけるCD169陽性マクロファージの死細胞認識 我々は、マウスDSS誘導腸炎モデルにおいて、腸の粘膜下層に局在するCD169陽性マクロファージが病態形成に重要な役割を担っていることを明らかにした。このマクロファージは、粘膜下層の中で粘膜筋板の近傍に局在し、腸上皮の傷害や最近の侵入に応答して、炎症を惹起する役割を担っている。我々は、このCD169陽性マクロファージが、ケモカインの一種であるCCL8が特異的に発現していることを見いだした。さらに、germ-freeマウスにおいても、CCL8の産生が見られることから、細菌だけでなく組織傷害を認識して、同ケモカインを産生することが示唆された。この認識機構を明らかにするために、我々はBMDMを用いてin vitroでの死細胞認識-CCL8産生のアッセイ系を確立し、マクロファージ表面抗原に対するモノクローナル抗体のスクリーニングを行っている。現在阻害活性を有するいくつかのモノクローナルが樹立できつつある。また、これとは別に、死細胞由来の粒子がCD169マクロファージに選択的に取り込まれることをつきとめており、さらにこの取り込みにCD169分子が関与していることも明らかにした。この取り込みとがん細胞死に伴うマクロファージの挙動の関連についても検討を進めている。 2.細胞死に伴う炎症誘導機構における領域内共同研究 領域内共同研究として、田中稔班、中野班とマクロファージの肝傷害における役割について、マクロファージ特異的消去マウスを用いて研究を行っている。また、袖岡班が独自に開発した新規細胞死制御化合物が、腎臓虚血再灌流傷害に対して抑制効果を持つことを明らかにし、そのメカニズムを解析している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本領域では、多様な細胞死様式の分子機構と死細胞が周囲の細胞に発信する情報の特定とその受容機構の解明を目指している。本研究はこの領域のコンセプトに沿って、マクロファージによる死細胞の認識とその応答の分子基盤を明らかにすることを第一の目的としている。これまでの2年間で我々は、腸炎モデルにおいて、CD169陽性マクロファージが組織傷害(死細胞および死細胞放出因子)を認識して、特異的にCCL8を産生することを明らかにすることができた。さらに、上述のようにこの認識と産生機構に関与する分子の同定につながる可能性のある、マクロファージに対するモノクローナル抗体を複数樹立できつつある。これらの点から、予定通りに研究が進んでいると考えており、次年度以降に分子の同定と機能解析を行う予定である。また、上述のようにCD169陽性マクロファージは、死細胞由来分子だけでなく、死細胞由来の粒子状物質も選択的に取り組むことが分かってきた。今後、この粒子状物質の取り込みの分子基盤とその生理的、病理的意義についても検討を行っている。 領域内の研究共同研究についても、肝細胞死共同プロジェクトとして、田中稔班、中野班と緊密な連携ができている。また、袖岡班が独自に開発した新規細胞死制御化合物の治療効果も確認するができ、さらに細胞死様式に関する新たな共同プロジェクトを袖岡班、今井班(公募班)を立ち上げている。これらのことから、領域内共同研究も順調であると評価する
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Strategy for Future Research Activity |
1.マクロファージによる死細胞の認識機構 CD169陽性マクロファージが、死細胞由来因子を認識してCCL8を特異的に産生する分子機構を明らかにする。すでに我々は、マクロファージ表面分子に対するモノクローナル抗体を作製し、死細胞レセプター分子を認識する可能性のあるモノクローナル抗体を複数樹立しつつある。これを用いて、レセプター分子を精製し、質量分析により同定を試みる。レセプター分子が同定できた場合は、この分子が認識する死細胞放出分子の同定を試みる。また、CD169陽性マクロファージが、CD169分子を介して細胞由来の微小粒子を認識し、処理することが明らかになっているので、このマクロファージによる微小粒子の、がん免疫およびがん転移における役割を明らかにする。 2.疾患動物モデルにおける死細胞様式の意義 腎虚血再灌流傷害については、すでに袖岡班との連携により、非アポトーシス細胞死阻害剤の効果を検証し一定の効果があることをつきとめている。さらに、その標的細胞の一つが好中球である可能性を示唆する知見を得ているので、その分子メカニズムを明らかにする。さらに、袖岡班、今井班との連携により、好中球のNET形成に影響を与える低分子化合物の探索を通じて、その分子機構の解明を試みる。 3.肝細胞死共同研究プロジェクト 引き続き、食細胞による肝死細胞貪食と炎症制御機構の解明を試みる。田中稔班と中野班と共同で、各種肝細胞死モデルにおけるこれらマクロファージの動態を解析するとともに、各種マクロファージを誘導的に消失できるマウス(CD169-DTR, CD204-DTR)を用いて、各マクロファージの病態への関与を検討する。
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[Journal Article] Identification of Pathogenic Cardiac CD11c+ Macrophages in Nod1-Mediated Acute Coronary Arteritis.2015
Author(s)
Motomura Y, Kanno S, Asano K, Tanaka M, Hasegawa Y, Katagiri H, Saito T, Hara H, Nishio H, Hara T, Yamasaki S.
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Journal Title
Arteriosclerosis, Thrombosis, and Vascular Biology.
Volume: 35(6)
Pages: 1423-1433
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] Vascular-Resident CD169-Positive Monocytes and Macrophages Control Neutrophil Accumulation in the Kidney with Ischemia-Reperfusion Injury.2015
Author(s)
Karasawa K, Asano K, Moriyama S, Ushiki M, Monya M, Iida M, Kuboki E, Yagita H, Uchida K, Nitta K, Tanaka M.
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Journal Title
Journal of the American Society of Nephrology
Volume: 26(4)
Pages: 896-906
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Acknowledgement Compliant
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[Journal Article] gamma-SNAP stimulates disassembly of endosomal SNARE complexes and regulates endocytic trafficking pathways.2015
Author(s)
Inoue H, Matsuzaki Y, Tanaka A, Hosoi K, Ichimura K, Arasaki K, Wakana Y, Asano K, Tanaka M, Okuzaki D, Yamamoto A, Tani K, Tagaya M.
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Journal Title
Jornal of Cell Science
Volume: 128(15)
Pages: 2781-2794
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Acknowledgement Compliant
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[Journal Article] Intestinal CD169(+) macrophages initiate mucosal inflammation by secreting CCL8 that recruits inflammatory monocytes.2015
Author(s)
Asano K, Takahashi N, Ushiki M, Monya M, Aihara F, Kuboki E, Moriyama S, Iida M, Kitamura H, Qiu CH, Watanabe T, Tanaka M.
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Journal Title
Nature Communications
Volume: 6
Pages: 7802
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research / Acknowledgement Compliant
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